長崎県内水道施設の耐震率は全国平均以下 地形的制約や財政影響 基幹管路32.3%、浄水施設19.7%

 能登半島地震の発生から50日余りが経過した。被災地ではいまだ断水が続く集落もあり、水道施設の耐震性に改めて関心が高まっている。長崎県に目を向けると、基幹管路(導水管・送水管・配水本管)、配水池、浄水施設の耐震率はいずれも全国平均以下。背景には地形的な制約だけでなく、財政面の影響も大きく、識者は「(長崎県内の)水道料金の適正化を急ぐ必要がある」と話す。
 震源に近い石川県珠洲市など能登北部では基幹管路の破損が多く、復旧に時間を要しているとみられる。厚生労働省によると、基幹管路のうち、その場所で想定される最大規模の地震に耐えられる割合を示す「耐震適合率」は、2021年度末時点で、石川県は36.8%と全国平均41.2%を下回っていた。
 21年度末時点で、長崎県の基幹管路の耐震適合率は、石川県より低い32.3%にとどまる。配水池の耐震化率は40.1%(全国平均62.3%)、浄水施設の耐震化率は19.7%(同39.2%)と低い数値が並ぶ。
 長崎県水環境対策課は数値が低い理由として、▽離島や半島を抱え、小さな集落が多く、分母となる管路の総延長が長い▽平地が少ないため、設備の集約が難しく数が多い-などを挙げた。
 簡易水道のみの長崎県北松小値賀町を除く県内の自治体を比較すると、基幹管路の耐震適合率は長崎市が61.5%と全国平均を上回る数値を示す一方、12市町が20%台以下。配水池は97.4%~0%、浄水施設は45.9%~0%と自治体間で大きな開きがあった。
 インフラの老朽化問題に詳しい東洋大の根本祐二教授(公共政策)は「適正な数字はあくまで100%だ」と指摘。水道はネットワークインフラのため、たとえ損壊箇所が1カ所だけでも、それが主要管路だった場合、水道サービスは停止せざるを得なくなる。根本教授は「市町間で相対的にどうか比較するより、望ましいのは完全に(耐震性に)適合している状態。そう考えると(県内の)どの自治体もまだ低いといえるだろう」とした。
 水道施設を巡っては、耐震化だけでなく、老朽化対策も急務の課題。法定耐用年数が40年とされる管路は本来、年間2.5%ずつ更新する必要があるが、現状の全国平均は0.65%(20年厚労省調査)で、老朽化に更新ペースが追いつかない状況にあるという。
 長崎県に限らず、人口減などで水道事業の経営が厳しさを増す中、根本教授は対策の鍵に「料金の適正化」を挙げた。値上げが難しい場合、地方税など一般会計から穴埋めすることになるが、それら税金は福祉や子育て、教育関係にも使われているため、「(各自治体で)優先順位の議論が必要」と強調する。
 一方、水道事業の持続可能な経営を図るため、国は行政区域を超えた広域連携を推進している。長崎県は23年3月に「県水道広域化推進プラン」(計画期間は38年度まで)を策定。まずは、薬品や資材の共同調達やシステムの共同化などソフト面の連携でコスト削減を図りたい考えだ。
 ハード面では、長崎市と西彼長与町の計5カ所の浄水場を廃止し、30年度の共有開始を目指して新浄水場を共同整備する。他の市町でも今後具体的な計画が示されればプランに盛り込む方針。

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