本紙記者、南極へ・第65次越冬隊の行松隊長に聞く 「地道な観測積み重ねる」

インタビューに答える行松彰第65次越冬隊長=昭和基地

 【南極海=報道部・小田信博】南極観測船「しらせ」が昭和基地沖を離れ、現地に残った第65次越冬隊の任務が本格的に始まった。隊員約30人は、1年にわたり冬の極地で観測活動や基地の管理・運営に取り組む。行松彰隊長に隊の役割や意気込みを聞いた。

 ―越冬隊の役割は。

 「1年を通じた観測が大きな目的で、項目は気象や地磁気、潮汐(ちょうせき)など多岐にわたる。すぐに成果が出るものではないが、地道に基礎データを積み重ねることが重要だ。長年にわたる観測が途切れると大きな損失を被ることになってしまう。観測のために基地を維持、管理することも越冬隊の大切な役割だ」

 ―極地で長く過ごすには楽しみが欠かせない。

 「美しい自然やオーロラは魅力の一つだが、個人的には越冬隊員同士の交流を楽しみにしている。それぞれ、立場や環境を越えて集まったメンバーであり、異業種間交流とも言える。越冬隊は1年間、家族のように過ごし、越冬終了後も一生涯の付き合いになることが多い。めったにない機会なので楽しみたい」

 ―初めて越冬隊長として参加する。

 「全隊員がうまく活動できるように調整するのが自分の役割だ。1人で何でもできるわけではない。問題が生じても互いを尊重して、意見を出し合って言葉を重ね、一致団結して乗り越えていきたい。第65次越冬隊は人に恵まれており、うまくいくと考えている」

 ―どんな越冬隊にしたいか。

 「限られた空間で1年を過ごしていると、互いの良い点や悪い点をさらけ出すことになる。うまくいくこと、いかないことがあると思うが、みんなで悩み、笑ったり、泣いたりして一日一日を積み重ねたい。日本に戻った後、またみんなで集まりたいと思えるような隊になれば最高だ」

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