富樫勇樹と西田有志の異色クロストーク「西田選手は『先輩にも関係なくグイグイくる』という話どおりの人だった」(富樫)

バスケットボール日本代表の富樫勇樹と、バレーボール日本代表の西田有志は、共にスポーツサポータ-&ケアブランド「ZAMST(ザムスト)」の契約選手という共通点がある。かねてより親交があり、お互いの競技を観戦することもあるという2人が、「月刊バスケットボール」とその姉妹誌「月刊バレーボール」、そしてザムストのトリプルコラボによって異色のクロストークを展開してくれた!

「大きい選手には負けたくない」という共通点

──まずはお二人の現在の関係性や知り合ったきっかけを教えてください。

西田 富樫選手が柳田(将洋)さんと一緒の事務所で、以前、柳田さんとインスタライブをやっていたことがあったんですよ。それを僕が見ていて、富樫選手のインスタをフォローさせてもらったことが始まりだったと思います。

富樫 いつだったかな?東京オリンピックの前ではあって、コロナ禍よりも前だったので2018、19年あたりだったと思います。でも、ちゃんと会って話をしたのは最近なんですよ。僕も西田選手も東京オリンピックには出場したので、会場などですれ違ったことがあったくらい(笑)

西田 トレーニング施設も別々だったので、トレセン(味の素ナショナルトレーニングセンター)で僕が一度挨拶に行ったくらいで、今はイベントがあるときなんかにたまに連絡を取る感じですね。

──お互いの第一印象は?

富樫 第一印象というか、西田選手に会う前に『先輩にも関係なくグイグイくる人』という話を聞いていたので、そのイメージどおりでしたね(笑)

西田 間違いないです(笑)。僕はもともとバスケをよく見ていたので、富樫選手のことも知っていましたし、話せるのならうれしいなと思っていたんです。でも、交わりもない初対面だったので、さすがにいきなり距離は詰められなかったですね(笑)

富樫 もともとがそんなに接点があったわけでも、トレセンでも会ってすごく話す関係でもなかったので、お互い試合があるときはテレビなどで見るくらいだったと思います。

──西田選手は富樫選手の第一印象はどんなものでしたか?

西田 Bリーグになってからバスケがよりメディアに取り上げられるようになって、僕が最初に見たのが富樫選手でした。それがあったので、すごいなというのが第一印象でありましたし、バレーもバスケもやっぱり身長の競技じゃないですか。世界的には身長が2mを超えているのが普通で、その中で結果を残すのは長身の選手よりも難しいこと。だから、それをずっと維持してトップでやり続けていることに対して、すごいなという感情はありますね。

富樫 でも、まだまだお互いに素を隠している部分が多いです(笑)

西田 まずは一回ご飯に行かないとですね(笑)

──では、この対談でぜひ素を出してもらえればと思います(笑)。バスケとバレーをやっている上でお互いのプレーや競技の共通点は何か感じますか?

西田 やっぱり平均身長が同じぐらいの競技なので、“大きい選手には負けたくない”という気持ちは共通していると思います。僕、富樫選手がそれに近い旨の発言をしている記事を前に見たことがあったんですよね。僕自身、高卒でVリーグに入ったときに(小さいから)ナメられている感覚がすごくあって。絶対この人たちには負けたくないという闘争心はあったんです。

富樫 それはありますね。競技的な面で言えば、逆に同じアリーナスポーツで球技ではありますが、フィジカルコンタクトの有無でバスケとバレーは大きく異なるのかなと感じていますね。それによってトレーニング仕方なども変わってくるかもしれませんし、バレーは相手とぶつかり合うことは基本的にはないと思うので、そこは2つの競技の大きな違いになってくると思います。

──お互いの競技の魅力は何だと思いますか?

富樫 バレーの魅力は、やっぱり生で見る迫力ですね。昨年、東京で行われた「FIVBパリ五輪予選/ワールドカップバレー2023」を会場で見させていただきました。もちろん、テレビで見ていてもボールの速さは…特に男子は基本的に目では見えないくらいの速さのイメージだったのですが、生で見るとまさにそのまま。気付いたらコートにバウンドして高くボールが上がっていることがあるので、そのスピード感はすごいなと思いますね。サーブとか、絶対受けられないと思います。受けてみたいですけど、絶対ムリだな〜(笑)

西田 僕はそれこそBリーグだけでなく、NBAも見ているんですよ。というのも、両親がバスケの元実業団の選手だったので、ずっと前から見ていましたね。NBAを見るときなどは特に思うのですが、もちろんダンクもすごいと思うんですよ。でも、そこよりもドリブルの切り返しのスピードなどを見てしまいますね。今はネット社会なので、ドリブルの技術などの動画も上がっているじゃないですか。そういうのも見たりするのですが、僕らはそういう細かい部分の速さは見えないので、『今何が起きたん!?』って。そこからのステップバックスリーを決めたりするのは本当にすごいです。僕らも練習の合間にバレーボールでシュートを打ったりするのですが、全然入らない(笑)。あれを入れるのは本当にすごいと思います。バレーもそうかもしれませんが、どうボールの動きを読んでいるんだろうかとかを、観客というよりもスポーツをやっている人の目線で見てしまいますね。

富樫 それ、すごいな〜。僕はスポーツを観戦するときは基本的にファン目線が多いですね。それこそ、バスケの試合を見ていてもそうなので。何かを自分のプレーに取り入れようというよりも、シンプルにすごいな、面白いなという感覚で見ているので、そこまで深く考えずに見ることが多いです。ほかのスポーツを見ているときも、一人のスポーツファンとして楽しんでいることが多いですね。

西田 僕はバレー選手の中では身長がないので、とにかく跳ばないといけないと考えていて、走り高跳びや短距離走の選手の一歩目の出し方などを高校時代からずっと研究していたんです。だから、逆に普通にスポーツ観戦ができないんですよ。自分でもその観戦の仕方は『疲れるな〜』と思いますけどね(笑)。でも、さすがに昨年の「FIBAバスケットボールワールドカップ2023」は燃えました。あのときくらいですね、本当にファン目線で応援したのは。

──お互いに一人のアスリートとして尊敬している部分はどこでしょうか?

富樫 西田選手はかなり若くして日本代表でも活躍していますし、正直、こんなに若いとは思っていなくて(笑)。年齢よりも大人っぽいイメージはずっとあります。え、今何歳?

西田 24歳になりました。

富樫 6歳も違うんですよ(笑)。そうは見えないですし、若くして大活躍しているのはすごいなと思いますね。

西田 富樫選手はずっと第一線で活躍していますよね。プロである以上、自分が今の富樫選手と同じに年齢になったときにここまで活躍できる保証はないので、ずっと結果を残し続けているのはやっぱりすばらしいですよね。もちろん、僕らには分からない努力もあると思うので、そこに対してはとやかく話せません。でも、一番やっているだろうし、見えていない部分ではありますが、やっているんだろうからこそ、こちらも頑張ろうと感化される部分はありますね。

富樫がバレー、西田がバスケをしたら…?

──もし富樫選手がキャプテンのチームに西田選手が加入するとしたら、富樫選手は西田選手にどんな役割を任せたいですか?

富樫 うーん、どうですかね?(笑)。西田選手は練習ですごく声を出してくれそうですよね。練習ってもちろん内容は重要なのですが、チームとしての雰囲気作りもすごく大事だと思うんです。バスケ選手って結構シャイな選手が多いイメージがあるんです。ほかの競技にはキャラが強い選手が多い印象なのですが、バスケにはそういう選手があまりいないような気がしているので、西田選手のような選手がいてくれたらめちゃくちゃ助かるのかなと思います。

西田 僕が絶対に怒られるタイプということだけは自信を持って言えます(笑)

富樫 (笑)

──逆に西田選手は富樫選手がキャプテンのチームに所属したとしたらどうしますか?

西田 パフォーマンスに関しては富樫選手は一流ですし、僕が富樫選手に対して何か手助けするという必要はないと思います。チームというのは、監督の意志をキャプテンが仲間に還元して作っていくものだと思っています。僕の中では監督とキャプテンは同じグループ。だから、チームをよりまとめやすくするための味方というか、富樫選手の横にいる存在になるかなと思いますね。

──もし、富樫選手がバレーの、西田選手がバスケの選手になれるとしたら、どんなプレーをしてみたいですか?
富樫 僕はバレーの細かいポジションまではそこまで分かっていないのですが、身長的に自分がスパイクを打っているイメージができないんですよね。なので、拾う側のリベロを極めようかなと思います(笑)

西田 僕は100%ポイントガードはムリなので、ベンチでいいですよ(笑)。呼ばれたら出るくらいの感じで。センターもムリだしなぁ…どこが合うと思いますか?

富樫 それこそ、バーっと動いてシュートを打ちまくるシューター系じゃないですかね?

西田 走りまくって?

富樫 そうそう。

西田 あとはフィジカルで負けなければいけますかね? いや、でもあんまり合わないだろうな(笑)

(一同爆笑)

富樫 身長を無視したらやってみたいプレーはやっぱりスパイクですよ。あんなに真下にたたきつけてボールが跳ね返るなんてもう…。でも、最近バレーの話をしていたのですが、バレーのネットって思ったよりも低いんですね。

西田 低いと思いますよ。243cmです。
富樫 ミニバスのリング(260cm)よりも低いんですね! 僕でもバスケのリングの高さ(305cm)には届くは届くんですよ。だから、意外といけるのかなとも思っていて。
西田 いけます、いけます!
富樫 チームメイトにめちゃくちゃ飛ぶ選手(ディー・ジェイ・ステフェンズ)がいるんですけど、リングから頭が出るくらい(笑)

西田 それってダンクコンテストで優勝した外国人の選手ですか?

富樫 そうそう! めちゃくちゃヤバいので、バレーをやっているのを見てみたいですよ(笑)。多分(最高到達点は)370〜380cmはあると思います。しかも、両足跳びなのでバレーでも活躍できそうな跳び方です。

西田 昨日(取材は2月5日)、僕らが試合をした相手に218cmで最高到達点365cmのドミトリー・ムセルスキーという選手がいたのですが、その選手は飛ばなくても腕が20cmくらいネットから出ているんですよ。

富樫 手を挙げただけで、すでに?(笑)

西田 ムセルスキーが跳ぶと、僕らレシーブ側からは彼の胴が見えるくらいなので、富樫選手のチームメイトはそれと一緒かそれ以上に跳ぶかもしれないですね(笑)

──VリーグにもBリーグにもとんでもない選手がいますね…。富樫選手に一つ質問です。Bリーグ優勝(2021年)前後の時期から、よりチームプレーヤーとしてプレーしている印象が強いのですが、中堅・ベテランの年齢となったことによる意識変化などがあったのでしょうか?
富樫 そこまでの意識はないのですが、それまでは良くも悪くも数字を残しにいく意識がほかの選手よりも強かったです。それが優勝する時期くらいから少しずつ変わってきたんだと思います。気持ち的にはあまり変わらないのですが、ちょうど優勝した前のシーズンから千葉Jのキャプテンをしていたので、少なからず意識は変わったのかなと。チームメイトをはじめ、チームのいろいろな面を大事にするようになったと思いますし、自分だけじゃなくてより周りを見られるようになったのかなと思いますね。

──西田選手はVリーグ優勝(2020年)という結果を得た上で、自身の変化を感じましたか?
西田 僕としては“たかが1回”の優勝なので、あまりそれで変化があったとは思いません。国内の優勝はすごいですけど、次のシーズンの優勝はどこか分かりません。もちろん、優勝したときはひたすらうれしいですが、プレーヤーとして何かがいきなり変わるかどうかと言われたら、僕は変わらなかったです。
富樫 僕も近い感覚はありました。優勝するまでにファイナルでは相当負けていましたし、ようやく優勝できたということにはかなりうれしい気持ちもあったんです。でも、それで満足かというと、そういう気持ちはなかったので、西田選手と同じだと思いますね。

──では、最後に2024年の目標をお願いします。

富樫 やっぱりオリンピックがあるので、一番はそこですね。トム(ホーバス)さんはすごく目標設定を大事にする方なので、代表チームの活動が始まればしっかりと目標を設定して、それに向けて頑張っていくと思います。オリンピックにはワールドカップでベスト8に残ったチームと同等レベルの国しか出場してこないです。僕らはワールドカップでドイツとオーストラリアに負けましたが、オリンピックではそういうチームに勝たなければいけません。世界ランキングのトップ10のチームに勝ちたいという思いがすごく強いです。

西田 オリンピックの切符を取ってからはみんな「メダルが目標」と言っています。やっと僕らもそれを目指せる位置まで来られましたし、僕自身も代表に入って6、7年目でやっとそこまで積み重ねてこられました。東京オリンピックではメダルが目標とは言っていましたが、ベスト8で終わってしまいました。ベスト8からベスト4の壁は分厚いですが、そこを越えられたらメダル獲得まで行けるのではないかと思っているので、まずはベスト8。そして、現実的に考えたときにそこクリアしていかないといけないです。色まではまだ宣言できませんが、オリンピックでメダルは絶対に取りたいと思っています。

富樫 勇樹 Yuki TOGASHI
167cm・65kg/ポイントガード/1993年7月30日生(30歳)/新潟県出身/所属歴:本丸中→モントロス・クリスチャン高→秋田ノーザンハピネッツ→テキサス・レジェンズ→千葉ジェッツ

西田 有志 Yuji NISHIDA
186cm・89kg/オポジット/2000年1月30日生(24歳)/三重県出身/所属歴:大安中→海星高→ジェイテクトSTINGS→ビーボ・ヴァレンティア(イタリア)→ジェイテクトSTINGS→パナソニックパンサーズ

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