続く捜索活動…帰りを待ち続ける兄 「一生抱えていく」目の前で娘を亡くした父の思い 能登半島地震の被災地で見たもの

能登半島地震から1か月あまりー。
いまなお凄まじい爪跡の残る石川県に入ったBSS取材班は、自然の猛威、そして、ここで暮らす人々のありのままの姿を目の当たりにしました。
避難生活が長引く苦しい状況の中でも、少しずつ、でも着実に歩みを進める被災者の方々の思いに迫ります。

取材班が現地に入ったのは2月1日。
能登半島地震からちょうど1か月のタイミングでした。

市内屈指の観光スポットだった、輪島市の輪島朝市。
地震が発生した午後4時10分防災無線のアナウンスにあわせて、黙禱が捧げられました。

輪島朝市 冨水長毅 組合長
「やっぱりこの現場に来るとですねまったく変わってない状況に、今後どうなるのかなっていう心配だけが募ります」

地震後に発生した火災で辺り一帯はすべて火の海となり、200棟以上を焼き払いました。
1か月たったこの日もまだ焦げた臭いが漂っていました。

そして、未だ行方不明者の捜索が行われている場所も…

清水栞太記者
「ここ輪島市市ノ瀬町ではいまも懸命な安否不明者の捜索活動が続いています。」

片時も手を止めない、消防や警察。
この場所では、複数の家屋が土砂に飲み込まれ、56歳の男性1人の安否が分からないままです。

緊急消防援助隊 山中隆行 大隊長
「大きな石や倒木が大量に混じっておりますので、なかなか掘り進むことが難しい。また川から水がどんどん出てくるというような、困難な状況になっています」

水を含んだ大量の土砂で難航する捜索。
その様子を、連日見守る男性がいました。
捜索されている男性の、実の兄です。

捜索されている男性の兄 垣地弘明さん
「ほんとに早く見つかってほしい、それだけですね。こんなにたくさんの人の力をいただいてる。連日寒いし泥だらけで足元も悪い、かなり捜索はきついと思うんですけど」

被災地ではいまもまだ、大切な人の帰りを待ち続けている人達がいます。

この日、取材班は七尾市に宿泊しました。

清水栞太記者
「こちらがJNNの拠点、民宿のようなところを借りて、毎日ここに系列の人がいるような感じですね。」

JNN取材班の拠点となる場所。
しかし、七尾市内では未だ断水が続いていました。

清水栞太記者
「断水しててお風呂に入れませんので、ドライシャンプーなどを使って入浴の代わりという感じですね。
トイレも普通にしていたら使えないので、こうしてポリタンクに水がたくさん用意してあります。それをポンプで移して使うというような形になってます」

被災地では、水のない避難生活がもう1ヵ月以上続いています。

こうした状況下で撮影を続けてきた取材班。

津波に襲われた珠洲市の現場では、揺れと津波によって悲惨な状態となった町を目の当たりにしました。
この場所で出会った、一人の男性に話を聞くことができました。

故郷を見に来た男性
「ショックですね故郷が…知ってる家ばっかりだったのに景色が全然変わってるので、ショックが大きいですね」

この町で生まれ育ったという男性。
震災から1か月が経ち、この日はじめて実家の様子を確認しに訪れたといいます。

昔は穏やかな海が広がる町だったといいますが、津波は家をも飲み込み、探しにきた思い出の品もほとんど見つかりませんでした。

故郷を見に来た男性
「もう見つけられないというか…1回みんなで家族で探しに来た方がいいのかな。何から手をつけたらいいのかわからない状態かな」

そして、輪島市内のビルの倒壊現場でも、一人の男性に出会いました。

7階建てのビルが横倒しになっているすぐそばで、手を合わせていたのは、楠健二さん。
倒壊したビルに自宅を押しつぶされ、妻と長女の2人を亡くしました。

楠健二さん
「葬式終わるまでは手を合わせなかったの。葬式終わって火葬も終わっちゃったから手を合わせないといけないかという感じかな…」

涙をこらえる楠さん。
亡くなった妻と娘に、毎日謝り続けているといいます。

楠健二さん
「まだ生きていた娘を助けられなかったのがどうしても許せない、俺の中でも。多分妻もそうやって許してくれないと思うな。
出そうと思ったけど出せなかったっていうのはやっぱり一番つらいよね、目の前にいるんだよ、だって。一生抱えていくんだと思う。」

大きな被害と深い悲しみを残した能登半島地震。
その一方で…

ボランティア
「やっぱお手伝いしなきゃって感じ、早く復旧復興ができるんじゃないかと」

これまで態勢が整わなかった地域でもボランティアの受け入れが始まるなど、復興に向けて少しずつ歩み始めている様子も見られました。

被災地を盛り上げようという動きも…

清水栞太記者
「断水が続く七尾市ですが、復興の一環としたイベントが始まりました」

七尾市内の商業施設で始まったのは「屋台村」です。
カレーや寿司、おでんなど、出店しているのは、店が全壊するなど営業ができなくなった飲食店、市外から大量に水を運び込み、イベントを実現させました。

企画したナナイべ合同会社 梅棹公継 社長
「飲食店で店が半壊・全壊で営業出来てない飲食店に限って、こういうイベントをさせてもらいました。それを通じて七尾の町が盛り上がっていければと思っています」

能登半島地震から1か月あまり。
今、私たち一人ひとりができることは何なのか、改めて考えていく必要があると感じます。

© 株式会社山陰放送