イスラエルへの武器輸出「直ちに停止を」。国連の専門家ら、「国際犯罪に加担してはならない」と警告

ガザ地区中部デイル・アル・バラで、イスラエル軍の攻撃を受け負傷し、治療を受けるパレスチナの子どもたち

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パレスチナ自治区ガザ地区への攻撃を続けるイスラエルへの武器輸出は、国際人道法に違反する可能性が高く即時に停止するべきだとして、国連の専門家が2月23日に警告を出した

2023年10月7日以降、ガザ地区では2万9000人以上のパレスチナ人がイスラエル軍の攻撃により殺害され、負傷者数は約7万人に上ると報告されている

複数の専門家たちは声明で、「全ての国は、武器移転を通じて国際犯罪に加担してはならない。ガザでの容赦ない人道的大惨事を早急に終わらせるために、それぞれの役割を果たさなければならない」と警鐘を鳴らした。

「虐殺幇助の責任を問われる可能性」

警告を出したのは、国連人権理事会の特別手続きに基づき任命されている特別報告者たちや、各作業部会の議長ら。テロ対策と人権、人種差別、子どもと女性の権利、ビジネスと人権など様々な分野の専門家が含まれている。

声明では、イスラエルに対する武器輸出について、「国際法を侵すために使用されることが予想される場合に、各国はいかなる武器や弾薬、部品の提供も控えなければならない」と指摘。

「輸出国が法律に違反して武器を使われることを意図してなくても、またそのような方法で使用されるか明確ではない場合においても、明らかなリスクがある限り、武器の提供は禁止される」と強調している。

オランダの高等裁判所は12日、オランダ政府に対し、国内の倉庫からイスラエルに提供されている戦闘機F35の部品の輸出停止を命じる判決を言い渡した

こうしたオランダ高裁の判断や、子会社を通じてイスラエルの軍事大手「エルビット・システムズ」と協力覚書を締結していた伊藤忠商事が契約を終了すると決定したことなどに触れ、国連の専門家たちは「歓迎する」としている。

一方で、イスラエルへの最大の武器輸出国としてアメリカとドイツは「群を抜いて」おり、出荷量は2023年10月7日以降増加していると指摘し、武器供与を直ちに止めるよう求めた。この他の主な軍事輸出国としてフランス、イギリス、カナダ、オーストラリアを挙げている。

専門家たちは、「武器輸出に関与した国家公務員らは、戦争犯罪や人道に対する罪、大量虐殺行為を幇助・教唆したとして個別に刑事責任を問われる可能性がある」と警告している。

人道支援「限界点に達している」

ガザでは、イスラエル軍の攻撃による市民や医療従事者、ジャーナリストらの犠牲が後を絶たない。

ガザで人道支援に取り組む国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)事務局長のフィリップ・ラザリー二氏は23日、国連のデニス・フランシス総会議長宛てに書簡を送付。ガザでかつてないほど人道的支援のニーズが高まっている中、UNRWAに対する資金拠出の凍結が続いていることで支援活動が「限界点に達している」と訴えている

UNRWAを巡っては、2023年10月のイスラム組織ハマスによるイスラエルの攻撃に複数の職員が関与した疑いが2024年1月に浮上したことを受け、日本を含む10カ国以上が同機関への資金拠出の停止を決定した

ただ、UNRWAの清田明宏・保健局長は2月16日、職員関与の疑惑について、関与を裏付ける証拠はイスラエルから国連側に提示されていないと発言し、拠出再開を求めている。

2月21日には、「ガザの民間人が極度の危険に晒されている」として、ユニセフのキャサリン・ラッセル事務局長など人道支援に当たる19の団体のトップが連名で声明を発表

10月7日以降、ガザでは保健医療施設への攻撃が370回以上行われており、「ガザには安全な場所はない」と訴え、即時停戦やガザ住民に必要なインフラの保護などを求めた。

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