社説:暴挙2年と世界 「わが事」と結束して停戦探れ

 ロシアによるウクライナ侵攻が始まってから、きょうで2年となる。戦況は膠着(こうちゃく)状態で、終わりへの道筋は見えない。

 いまも前線では激しい攻防や都市への無差別攻撃で、犠牲者が増え続けている。

 ウクライナの民間人死者は1万2千人を超え、国外避難者は600万人以上に上る。公式発表はないが、米国紙は昨夏、ウクライナとロシアの死傷兵は計50万人にのぼると伝えた。

 これ以上の犠牲者を出すことを許してはならない。ロシアは非道な侵略をただちに止めるべきだ。国際社会は改めて結束を強めねばならない。

 ウクライナは昨年6月に大規模な反転攻勢に乗り出したが、思うような成果を得られていない。兵員や武器が不足し、守勢を強いられている。

 ゼレンスキー大統領は、意見対立があったとされる軍総司令官を解任した。求心力の低下は否めないとみられる。

 ロシアはウクライナ領土の東南部約2割を占領したままだ。昨秋から東部最前線のドネツク州アブデーフカへで攻勢をかけ制圧したと発表した。西部への攻勢も強めるようだ。

 ウクライナ苦戦の要因に、米欧の「支援疲れ」がある。

 米議会ではウクライナへの軍事支援約600億ドル(約9兆円)を盛り込んだ緊急予算案が、共和党の反対で成立が見通せない。11月に大統領選を控え、同党のトランプ前大統領が多額を費やすウクライナ支援に批判を強めている影響は大きい。

 ウクライナは英国など3国とそれぞれ10年間の支援を盛り込んだ安全保障協力を締結したが、どこまで安定した支援を継続できるかが問われよう。

 ロシアは3月の大統領選でプーチン氏の5選が確実視されており、「恐怖統治」を強めている。大統領選では反戦候補の出馬を受け付けず、反体制派指導者ナワリヌイ氏は「急死」した。プーチン氏の関与が強く疑われ、国際的な批判が高まる。

 人材流出も続いており、長期的にみれば、ロシアの国力低下は避けられないだろう。

 国際社会は、ロシアが目指す占領地の既成事実化を認めてはなるまい。主権国家の領土を奪う暴力が通じるとなれば、自国の安全を脅かすことに直結する。「わが事」として向き合う姿勢を各国で共有したい。

 ロシアと米欧の対立で、機能不全に陥っている国連でも同様だ。総会などを通して粘り強く、停戦と和平に向けて対話と圧力を重ねる必要がある。

 日本はウクライナ政府・企業関係者らと東京で開いた会議で、復旧・復興に向けて農業や医療、地雷除去など7分野で長期支援に取り組むと決めた。各国との「橋渡し役」にも一層踏み込んでほしい。

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