西武新戦力が躍動!「さすがドラ1」新人・武内夏暉が2回パーフェクト! 守護神狙う甲斐野央は「誤作動」と謙遜も最速156キロを記録

西武は23日、このキャンプ2回目の紅白戦を実施。期待の新戦力が今季初実戦で上々のデビュー戦を飾った。

最終クールに入り悪天候が続いている宮崎・南郷スタジアム。この日も小雨が降り続く中、グラウンドメンテナンス担当の方々の尽力のおかげで行われることとなった紅白戦。新戦力の先陣を切って、紅組先発のドラフト1位ルーキー・武内夏暉(22)がマウンドに登った。

「(雨は)あまり気にしませんでしたが、初めての実戦だったので、本当にちょっと緊張しました。でも、楽しみな部分が大きかったですね」

そんな緊張を微塵も感じさせない投球を初回から見せた。白組1番・長谷川を中飛、2番・外崎はフルカウントまで粘られるも一塁ゴロ、いずれの右打者も反応が遅れているようなスイングで2アウトを奪うと、左打者の3番山村は、外への変化球で一塁ゴロ。落ち着いた立ち上がりで、初回を三者凡退に抑えた。

続く2回は、前回18日の紅白戦でホームランを放っている4番・アギラーとの対戦。緩急と内外を使い分け追い込むと、最後は低めに落ちるボールを引っ掛けさせて三塁ゴロ。強打者を打ち取った後も5番・佐藤龍を遊撃ゴロ、6番・児玉はバットを折った後、自らベースカバーに走っての一塁ゴロ。予定の2イニングを打者6人に24球を投げ、無安打、内野ゴロ5つに抑える完璧な投球で上々の実戦デビューを飾った。

「どの球種も(ストライク)ゾーンで勝負して、という感じで投げました。やはり落ちる系のツーシームだったり、チェンジアップがよかったですね。(内野ゴロ5つは)やはり低めに投げられたからこそ、ゴロで打ち取っていると思うので、そこはよかったかなと思います」

自身が評価した落ちる系のボール以外にも輝きを感じたボールがあった。それは左打者3番・山村への初球。打者の体付近からベース板のストライクゾーンへと変化するスライダーだ。

「いい投手でしょ?あのボールは邪魔になると思いますよ」と、この日試合を見るために1日だけ南郷スタジアムに戻ってきた十亀剣スカウトが満面の笑みで太鼓判を押したこのスライダーも今後、大きな武器になっていきそうだ。

試合後に首脳陣からもゾーン勝負ができていたことを評価されたという武内。今年の正捕手候補で、この日マスクをかぶった古賀悠斗(24)は、ミット越しにどんな感触を得ていたのか。

「ブルペンでも受けてはいたんですけど、その時は調整という感じでしたが、今日はピュっと投げていてコントロールも良かったので『さすがドラ1だな』と。完成度の高いピッチャーだなと感じましたね」
実戦デビューで高評価を受けたルーキーの次回登板は体の状態、回復具合を見ながらとなるが、今後は球数やイニング数なども増やしていくこととなる。本人は次回登板へ向け、どんなイメージを抱いているのか。

「もう1回、コンディションの部分からしっかりと万全な状態に持っていきたい。(そのために)まずは準備から大事にしていきたいと思っています」
次は味方ではなく、敵チームとの対戦。違った緊張感があるマウンドとなるだろう。ランナーが出ることも想定される。好スタートを切ったルーキーが次戦でどんな姿を見せるのか。

武内降板後の3回、紅組2番手・増田達至(35)が打者3人を5球で片付けると、4回裏にはその増田と守護神の座を争う新加入の甲斐野央(27)が移籍後初実戦のマウンドに立った。

「シーズンが始まっていくので、実戦感覚を徐々に取り戻していきたいなと思いながら、いろんなことを感じながら投げていました」

この日は変化球、特にスライダーの割合が多かった。

「(スライダーが)ちょっと増えましたが、全球種を試したかったので、古賀ともそういう打ち合わせをして。結果も大事ですが内容にもこだわりながら、自分の感覚をいち早く取り戻せるように、マウンドさばきとかいろいろありますけど、そういうものを思い出しながら投げました」

外崎に四球を許したものの、打者4人に対し無安打2三振。1番・長谷川と4番アギラーから奪った三振はいずれもフォークボールを振らせたものだった。

「アギラーのはちょっとゾーンから外れていたんですが。うまくいいところに落ちてくれたって感じですね」

変化球では、新たに習得中の新球種「スラーブ」を外崎の初球に試投。実戦での感覚を確かめた。

「元々カーブを投げてはいたんですけど、腕もカーブほど緩んでいませんでした。カウントボールとしてはまずますかなという段階ですね。古賀にも(投げたいと)言っていましたが、初球に(サインを)パンッって出してくれて、向こうの意図も感じながら投げました」

そして自慢の速球は最速156キロを計測。そのほかのボールも151キロが出るなど、初実戦でしっかり球速を出していたのは、さすがの仕上がりだが本人はこう謙遜する。

「(156キロは)誤作動だと思います。(151キロは)ツーシームでしたが、それでも真っ直ぐと変わらない球速が出ているので、そこもひとつの武器かなと思います」
新天地で順調な調整ぶりを見せている甲斐野だが、まだまだやるべきことはあると本人は感じている。

「もうちょっと(全体的な)制球をまとめたいと思っています。変化球もそうですし、ツーシームもそうなんですが、もっと出力が上がっていく中で、それをコントロールしていかないといけない状態で、そういう体の使い方であったりとか実戦感覚、そこを大事にしていきたいと思います」
そのほかの新戦力では、前回の紅白戦では2つのフォアボールを出すなど制球を乱していた新外国人左腕のジェフリー・ヤン(27)が白組の2人目で登板。持ち前の速球と大きく曲がるスライダーを駆使して、1イニング2三振を奪い、前回は見られなかったマウンド上での派手ガッツポーズも披露。打者でも新外国人のフランチー・コルデロ(29)が紅白戦2試合連続ヒット、そして、ヤクルトからトレードで加入した元山飛優(25)が2安打2打点とそれぞれアピールに成功した。

「やる獅かない」をスローガンに、Bクラスからの巻き返しを狙う西武。春季キャンプは25日に終了し、いよいよ開幕一軍へ向けた本格的なサバイバルがスタートする。

新戦力たちがその直前の紅白戦で見せた好アピールは、ほかの選手たちのハートに火をつけ「やる獅かない」気持ちにさせたのではないだろうか。27日から始まる対外試合で、それぞれの選手たちがどんなアピールを見せて、開幕一軍を勝ち取るのか。楽しみはまだまだ続きそうだ。

取材・文●岩国誠

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