1000年の歴史がある韓国の作り置きおかず「チャンアチ」がお弁当に超便利!

韓国料理屋さんで、小皿にのせて出されるいろいろなおかずが好き!という方は多いのでは?「パンチャン」と呼ばれ韓国の食卓になくてはならないものですが、中でも「えごまの葉のチャンアチ(しょうゆ漬け)」でおなじみの「チャンアチ」はとても歴史が古いもののようです。韓国料理研究家の本田朋美さんに詳しく教えていただきました♪

こんにちは!韓国料理研究家の本田朋美です。

1月からTBSテレビが放送している日韓ドラマ『Eye Love You』が話題になっていますね!

韓国のNetflixでも、トップ10に入るほど人気なんだとか。

このドラマでは韓国料理が度々登場し、とてもおいしそうなので食欲が刺激されますね♪韓国料理が食べたくなって、お店を訪れる方もいらっしゃるのではないでしょうか?

韓国料理店で食事をしたことがある方はご存じだと思いますが、食事を注文するとまず小皿にのったおかずが出てきます。これらのおかずを総称して「パンチャン」と言い、日本語だと「惣菜」に当たります。

本場韓国の飲食店では、メイン料理を注文すればパンチャンは無料!さらにおかわりも自由なんです♪

以前、ソウルの韓定食屋さんでパンチャンとして水キムチが出たとき、あまりのおいしさに3回おかわりしましたが、もちろんお店からは何も言われませんでした。素晴らしいシステムですよね!

また家庭でもパンチャンを数品をまとめて作っておいて(またはお店で買って)冷蔵庫で保管し、食事の度にテーブルに並べます。パンチャンがあれば、ご飯とスープを用意すればいいので、食事作りの手間が少し省けるんです。要は「作り置きおかず」です。

私は韓国料理の魅力の一つは、このパンチャンだと思っています!

そこで今回は、そのパンチャンの中でも長い伝統を持つ「チャンアチ(醤漬け)」をご紹介したいと思います!

「チャンアチ」の歴史

階級ごとに変わるチャンアチの食材

チャンアチを日本語にすると「チャン=醤」「アチ=漬け物」。ここでいう「醤」には、カンジャン(しょうゆ)、テンジャン(みそ)、コチュジャンの3つが含まれ、「チャンアチ」はさまざまな食材をこれらの「醤」に漬けたもののことです。

歴史を遡ってみると、チャンアチの原型となるものは1000年ほど前の高麗時代には既に存在していたようです。

当時の詩文集『東国李相国集』によれば、冬はかぶを塩漬けにし、夏はしょうゆ漬けにして食べていたとのこと。そこから時代とともにみそ漬けのチャンアチ、コチュジャン漬けのチャンアチ…というように種類が広がってきたのですね。

朝鮮時代に入ると、お膳のパンサン(飯床)には、必ずチャンアチが含まれるようになりました。階級が低い高いに関わらず食膳にのぼっていたので、キムチと同じくらい基本の漬け物と言えます。

とはいえ、チャンアチの食材は階級によって大きく変わり、庶民は干し大根やきゅうりといった野菜で、王様になるとアワビ、ムール貝、干しなまこなどを使ったチャンアチが用意されたそうですよ。実に豪華ですね!

また、料理名は一般的には「チャンアチ」ですが、宮廷では料理名も変わり、醤果(チャングァ)と呼んでいました。

階級ごとのパンサンの話は以前『おせち料理にも♪韓国ドラマでもおなじみの「ジョン」の作り方』の記事にも書きましたので、ぜひあわせて読んでみてください♪

チャンアチは朝鮮時代にも「お弁当のおかず」だった!

朝鮮時代には、旅行の際に持参する「ヘンチャン(携行食)」がありました。現代で言う「お弁当」です。

遠方の際は穀物を洗って乾かしたものや、蒸して炒った後に粉にしたものを持参しました。これらの粉は水に溶かして飲むと、手軽に空腹を満たすことができたようです。

近場の場合、お弁当の主食は小麦粉餅やごま塩のチュモッパで、位が高い貴族の場合は副食としてユッポ(ビーフジャーキー)やオポ(シーフードジャーキー)も携帯したそうです。

一方庶民になると、みそ餅を副食にしていました。みそ餅は、みそ、ねぎ、にんにくを合わせて丸め、ごま油を塗って乾かした食べ物。この他に大根の塩漬け、煮豆、とうがらしみそ、そしてしょうゆ漬けのチャンアチを持ち歩いたようですよ。

保存性に優れたチャンアチは、その頃からお弁当のおかずだったのですね!

もちろん現代のお弁当にもおすすめ!ちょっとしたすき間を埋めたいときにとっても便利なんですよ♪

韓国で愛されているチャンアチはこれ!

いろいろな食材で作ることができるチャンアチですが、中でも韓国で愛されているものをピックアップしてご紹介しますね。

「えごまの葉のチャンアチ」

「ご飯泥棒」という異名もある「えごまの葉のチャンアチ(しょうゆ漬け)」は、味付け海苔のようにご飯に巻いて食べます。

私も時々自宅で作りますが、これがあるとほかにおかずが要らないほどハマります。数年前から、日本のスーパーでもえごまの葉を買えるようになったので、本場の味が再現できますね♪

「行者にんにくのチャンアチ」

「行者にんにくのチャンアチ(しょうゆ漬け)」といえば、必ず一緒に食べたい食べ物があります。

何だと思いますか?

ピンと来た方は、かなりの韓国料理通!

それは、サムギョプサルです!

サムギョプサルは鉄板で焼いて、サンチュなどの葉にのせ、サムジャン(辛みそ)と一緒に食べるのが一般的なおいしい食べ方ですが、このおいしさを遥かに上回るのが、行者にんにくのチャンアチで巻いて食べるサムギョプサルです!

サムギョプサルの油っこさを、行者にんにくが消してくれるので、無限に食べられるのです♪

日本にも行者にんにくのチャンアチを用意している専門店があるので、頼んでみてください!

「梅のチャンアチ」

韓国では、青梅が出る季節になると料理好きの方は「梅エキス」を作ります。種とヘタを取り除いた青梅1に対して、砂糖1で漬けておくと青梅の水分が出てきてエキスになる、というのが基本的な作り方。そして、梅エキスを濾しとって残った青梅にコチュジャンとごま油を和えたものが「青梅のチャンアチ(コチュジャン漬け)」です。

酸味と甘味、辛味のバランスがたまらなく良く、一度味を知ったらやみつきになります!

「青とうがらしのチャンアチ」

韓国の方は生の青とうがらしにみそをつけて食べることが多いのですが、ちょっと目先の変わった調理方法として「青とうがらしのチャンアチ(みそ漬け)」があります。

粉とうがらし、しょうゆ、オリゴ糖なども入れて甘辛味に仕上げたみそと、辛味のある青とうがらしとの相性がバッチリなんです。

韓国の方から聞いた話によると、青とうがらしのチャンアチは冷蔵庫で1年ぐらいは保存できるとか。

これは韓国家庭に必ずあるキムチ冷蔵庫のお陰ですね!保存食大国の韓国ならではです。

それでは最後に「野菜のチャンアチ」の作り方をご紹介します!今回使うのは赤と黄のパプリカ、きゅうり、カリフラワー。それぞれの色を活かすために、薄口しょうゆ、白砂糖、塩を使用しました。

「野菜のチャンアチ」レシピ

調理時間

15分(漬け込む時間は除く)

分量

2~4人分

材料

・パプリカ(赤)…1個

・パプリカ(黄)…1個

・きゅうり…1本

・カリフラワー…150g

・にんにく…3片

・酢…1カップ

(A)

・水…1カップ

・白砂糖…1カップ

・塩…大さじ2

・薄口しょうゆ…大さじ1

・鷹の爪…1本

作り方

1. パプリカはヘタと種を取り2cm角に切る。きゅうりは両端を切り落とし、幅1cmの輪切りにする。カリフラワーは小房に切り分ける。にんにくは半分に切り芽を取り除く。

2. 鍋にAの材料を入れてよく混ぜたら強火にかけ、沸騰直前に火を止めて酢を加える。保存容器にパプリカ、きゅうり、カリフラワー、にんにくを入れて、温かい状態の漬け汁を流し入れる。

3. 漬け汁の水面にラップを敷き、そのまま2~3時間ほど浸けておいて自然に漬け汁が冷めたら冷蔵庫に保存する。浸けてから半日ほどで食べられる。

カリフラワーは下ゆでしなくても、温かい漬け汁で程よく火が通ります。

今回色味を考えて白砂糖を使いましたが、三温糖、きび砂糖でも。お好みのものを利用してください。

チャンアチは冷蔵庫で1か月ほど保存が可能です。

それでは今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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