世界最高賞金を懸けたサウジカップに臨む日本馬は4頭! 豊富な海外経験持つデルマソトガケを本命視も、強力すぎる米2騎が主役候補

2020年に創設されたサウジカップ(G1、キングアブドゥルアジーズ・ダート1800m)。第4回の昨年は日本馬として初めてパンサラッサ(2017生、牡、父ロードカナロア)が逃げ切り勝ちを収め、大きな盛り上がりを見せた。

賞金総額は2000万ドル(約21億6000万円)、優勝賞金1000万ドル(約10億6000万円)という世界最高賞金を提供するこのレースは、創られてわずか3~4年と歴史が浅いなか米国に限らず、欧州のターフを主戦場にしてきた強者を含めて、世界中のトップホースたちのビッグターゲットになった。

今年、日本からは5頭がエントリー。残念ながらJpnⅠを3勝しているメイショウハリオ(牡7歳/栗東・岡田稲男厩舎)は主催者の厳しい検査で出走に適さない状態と判断されてスクラッチ(出走取消)となり、4頭がレースに臨むことになった。

まずは出走を予定しているJRA所属馬4頭をプロフィールをもとに評価してみる。レイティングの順番に挙げると、ウシュバテソーロ(牡7歳/美浦・高木登厩舎)が122ポンドでトップ。レモンポップ(牡6歳/美浦・田中博康厩舎)と、デルマソトガケ(牡4歳/栗東・音無秀孝厩舎)が120ポンドで2番手。続いてクラウンプライド(牡5歳/栗東・新谷功一厩舎)が117ポンドで4位となっている。

ちなみに2月24日の午後4時過ぎ時点(日本時間)での単勝オッズでは、レモンポップが3.6倍で日本馬の中で最上位。続いてウシュバテソーロが4.2倍、デルマソトガケが7.5倍、クラウンプライドが38.8倍という評価を受けている。
ここで一番に取り上げたいのは、今年4歳になったばかりで伸び盛りのデルマソトガケである。

2歳の12月に臨んだ全日本2歳優駿(JpnⅠ、川崎・ダート1600m)で重賞初勝利を挙げると、翌年に早くも海外挑戦。サウジダービー(G3、キングアブドゥルアズール・ダート1600m)を3着としたあと、転戦先のドバイでUAEダービー(G2、メイダン・ダート1900m)に快勝。徐々に地力を付けてきた。

だがデルマソトガケの海外挑戦は、これだけで終わらなかかった。5月には米国へ遠征し、米競馬の3歳クラシックのひとつである伝統レース「ケンタッキーダービー(G1、チャーチルダウンズ・ダート2000m)」に挑み、6着と善戦した。

さらに11月にはダート競馬の最高峰である米ブリーダーズ・クラシック(G1、チャーチルダウンズ・ダート10ハロン)にもチャレンジ。9番人気という低評価を覆し、しぶとい差し脚で僅差の2着に食い込み、地元ファンを驚かせた。

帰国後は年末の東京大賞典(JpnⅠ、大井・2000m)を回避。今回のサウジアラビア遠征はそれ以来のレースとなるが、ここを目標に順調に調整を積んできた。

デルマソトガケは輸送中、顔に外傷を負うアクシデントがあったものの大事には至らず、音無調教師と騎乗予定のクリストフ・ルメール騎手ともトラブルの影響はない。去年GⅠを7勝する大活躍を見せたルメール騎手は「当日は(別のレースで)他の馬に乗るけど、ベストチャンスはソトガケ」と断言するほど能力は高く、チャンスは決して低くない。

昨年1年間を海外遠征に絞って好成績を積み重ねたうえ、そのすべてが休み明けというのも心強いデータを残す。まだまだ成長途上にある4歳という年齢も魅力的だし、本項では日本馬の中では筆頭候補に推したい。 続いては、昨年のドバイワールドカップ(G1、メイダン・ダート2000m)の勝ち鞍が光るウシュバテソーロ。ブリーダーズカップ・クラシックは5着に敗れたものの、帰国後の東京大賞典を快勝して、あらためてポテンシャルの高さをアピールした。

ただ課題となるのはその脚質で、前半を中団から後方待機に徹し、直線で一気に追い込むのがデフォルト化しており、どうしても先行有利の海外ダートだとそこが不利になる可能性は少なくない。実力はデルマソトガケと互角と考えるが、追い込み届かずの取りこぼしも考慮して、次位の評価とする。

もう1頭のクラウンプライドは、帝王賞でメイショウハリオとハナ差の2着に入った経験はあるものの、海外ではレベルが落ちる韓国のコリアカップ(G3、ソウル・ダート1800m)を勝利したのみで、評価を落とさざるを得ない。ただし、海外遠征が今回で6度目と経験豊かで国外への長距離輸送に慣れているところに不安はない。鞍上には”マジックマン”の呼び名でお馴染みのジョアン・モレイラ騎手が確保できたのは朗報で、彼の秘策に期待したところだ。

対する外国馬は、やはり昨年のブリーダーズカップ・クラシックを制した米国のホワイトバリオ(牡5歳/M・アムルロワ厩舎)が有力。同レースでじりじりと伸びるデルマソトガケを力強く交わしてビッグタイトルを収めた能力は最上位とするべきだろう。充実期の5歳であることも強調材料と考えられる。

2番手に挙げたいのは、これも米国のナショナルトレジャー(牡4歳/B・バファート厩舎)。昨年のブリーダーズカップ・マイル(G1、チャーチルダウンズ・ダート1600m)で2着に逃げ粘ると、今年初戦のペガサスワールドカップ(G1、ガルフストリーム・ダート1800m)は早めに先頭に立ち、力強く粘り切って勝利を挙げた。こちらはホワイトバリオよりさらに若い4歳。伸びしろが大きい本馬を外国馬の次位として取り上げたい。
穴として注目したいのは、やはり米国のセニョールバスカドール(牡6歳/T・フィンチャー厩舎)と、米国からUAEに移籍したアイソレート(牡6歳/D・ワトソン厩舎)の2騎だ。

セニョールバスカドールはシガーマイルハンデキャップ(G2、アケダクト・ダート1600m)、ペガサスワールドカップで連続2着。特に後者はわずかクビ差の惜敗で、勝ったナショナルトレジャーに際どく迫ったのは大きな収穫だった。

アイソレートは米国の生産馬で、昨年UAEに移籍。昨年はゴドルフィンマイル(G2、メイダン・ダート1600m)、アルマクトゥームマイル(G2、メイダン・ダート1600m)を力強く押し切って2連勝。逃げ・先行馬が多い今回のメンバーのなかで、どこまで力を出し切れるかに注目だ。

サウジカップ・デーはアンダーカードとしてサラブレッドのG2、G3が5レース開催され、日本馬が17頭も出走するが、馬券発売は行なわれない。ただし、グリーンチャンネルでのノンスクランブル放送(2月24日の22時30分から27時)で見ることができる。紹介した日本馬4頭が出走する大注目のサウジカップ発走予定時刻は、25日の午前2時40分である。

しかも、今回のサウジカップは日本国内の馬券発売が解禁となる。投票は発走予定時刻の2分前までで、インターネット投票のみ受け付けている。独立プール方式(日本国内の独自発売)で実施されるので、海外馬も含めて国内からでも馬券投票は可能だ。

はたして、今年はどんなドラマが生まれるのか。世界中の競馬ファンや関係者をあっと言わせるような日本馬の激走を楽しみに待ちたい。

文●三好達彦

© 日本スポーツ企画出版社