【対談】CRYAMY・カワノ×時速36km・仲川慎之介「今回のツアーで呼んでいるのは特にリスペクトするバンド。その中でも慎ちゃんは特別です」

すべての写真(23)を見る

1月から始まり、早くも折り返し地点が近くなったCRYAMYのツアー『人、々、々、々』。その終盤、3月20日の福島・club SONIC iwakiと日比谷野音ワンマン前の対バンツアーファイナルである4月14日、北海道・札幌SPiCEで彼らと対バンするのが、時速36kmである。初期から対バンを繰り返してきた盟友同士のツーマンが熱いものになるのは間違いないが、そのライブを前に、CRYAMY・カワノと時速・仲川慎之介のふたりにお互いのことを改めて語り合ってもらった。なぜ彼らは惹かれ合い、リスペクトを向け合うのか。それぞれの道で前進を続ける2組の交点を、この対談から感じ取ってもらえたらうれしい。

── CRYAMYのツアー、ファイナルで対バンするのが時速36kmということで。もう盟友といっていい2組だと思いますが。そもそもはどういうところから関係が始まっていったんですか?

仲川 最初は2018年の「TOKYO CALLING」だったかな。当時「地下室タイムズ」ってメディアがあって、そこで紹介してもらっていたバンドが出るステージがありまして。そこに時速36kmもCRYAMYも出ていたんです。CRYAMYのことはこっちも知ってはいたんですけど、初めて対バンすることになって。それで楽屋で最初ばったり会ったんですよね。カワノがひとりでいる楽屋に俺が入っていったら、カワノが「お、見てくださいよ」って局部をみせてきて……。

時速36km・仲川慎之介

── ははははは!

仲川 「よろしくお願いします」とかもなく、初手からそれだった(笑)。「どうすか?」みたいなノリで。それで「あ、ああ……」みたいな返しをしたら、カワノは「なんだこいつ」みたいな感じで。

カワノ あんまりウケなくて怒っちゃったんですよね。

── それはどういうことだったんですか? かますつもりだった?

カワノ いや、僕ももちろん時速のことは知ってたので、仲良くなろうと思って。でも「よろしくお願いします」じゃちょっと印象に弱いなじゃないですか。だからコミュニケーションの一環として露出した、と。でもそれが通用しなくて「なんだこいつは」みたいな。おかしな話なんですけど。

CRYAMY・カワノ

仲川 こっちも音源聴いたりMV見たりして、やっぱり怖いやつだっていうイメージがあったんですけど、その矢先にそれだったから、「こいつ、わかんねえな」みたいな。

カワノ それがでも、ファーストコンタクトだったね。

仲川 でも、音楽を先に知っていて、いいよなと思っていたから。いつからちゃんと打ち解けたのかはちょっとよくわからないけど、だんだん仲良くなりました。

カワノ 僕も曲が好きだったので、もともと。その日のイベントでもライブを観たっていうのもあって、仲良くなりたいなっていう気持ちがあったんですよね。

── インパクトのある出会いでしたけど、知り合っていく中でカワノさんという人の印象も変わってきました?

仲川 後々思ったのは、結構何層にもなっている人だなっていう。初めて会ったときから「なんだこいつ」と思いつつ意外に怖くないというか、気さくにコミュニケーション取ろうとする人なんだなって思ったんですけど、そこから何回か会っていくうちに、この気さくさっていうのはナイーブさの裏返しだっていうことにも気づくようになり。「本当はこいつ、誰のことも好きじゃねえな」っていうのを思ったのが第2層で、そこからまたコミュニケーションを続けていくと、「こいつは誰のことも好きじゃないんじゃなくて、一部の人をめちゃめちゃ大事にするために、誰のことも好きじゃないような精神性を保っているんだろうな」って思ったり。一見ピエロっぽく見えるんですけど、ピエロであるがゆえの性質というか、奥底は本当に深くてわかりづらくなってて、でも最後まで覗いたら意外とピュアなところを持ってて、みたいな。ピュアすぎるがゆえに、自分を守るために何層も重ねているみたいな感じですかね、こいつは。本当は誰よりもピュアだけど、ピュアであるがゆえにヨゴレを演じ続ける。そういうイメージですね。

カワノ ピエロとして振る舞うっていうのはまさしくその通りで、わりとそういうふうに振る舞った方が僕は楽というか。それは未だにある。

── 逆にカワノさんから見て仲川さんというのはどういう人ですか?

カワノ いつも言っていることなんですけど、短い言葉で慎ちゃんを表す、個人的には「これぞ」っていうのがあるんですけど、一生懸命な姿が似合う人だなっていう。僕なんかそうですけど、一生懸命やっちゃうとみっともないとか、惨めったらしくなっちゃうやつなんです。僕の友達もそうで、そういう部分で痛い目を見てきてしまってるから見せないようにしちゃうやつもいるし、そもそも諦めちゃう人もいるんですけど、慎ちゃんは出会った時から常に一生懸命で。そういう一生懸命な姿を見た時に、この一生懸命さがなんて似合う男なんだろうな、と思う。だから……僕、これはミュージシャンとしてどうなのかわからないんですけど、あんまり人のライブを観て涙出ることってあんまりないんですよ。もちろん感動することはあるんですけど。僕がなりたかった姿から、今の僕はすごく離れたところに立ってしまったなっていう、ちょっと黄昏ちゃう思いもあるんですけど、慎ちゃんはそこにちゃんと立ててる人だから、そういう憧れの気持ちもある。

仲川 でも逆に俺もカワノに憧れる部分があって、彼には。俺は普通にバカなんですよ。考えてやってもすぐに他人から「それはダサいよ」って言われたりして「これはダメなんだな」って思うから、あんまり考えないで素のままでやろうっていうふうにしたタイプなので。そのままでかっこいい人ってそんなにいないわけじゃないですか。俺なんて結構普通の人というか、倫理観とかも常識的だし、好みも常識的だし、振る舞いとかもそんなに奇抜なものはなかったりするんですけど、カワノは、もともともっているものはどうかっていうのはまた別の話として、表に表れている部分はかなりロックスター然としている男で。それも何層にも重ねた先なのかもしれないけど、そういうところはかなり羨ましいなと思っています。

カワノ でも演奏とかは彼らの方が数段うまいんで。歌に関してもすごく魅力的だと思いますし、慎ちゃんはそう言うけど、慎ちゃんも慎ちゃんでスターというか、それは古典的なロックスターではないのかもしれないけど、人に寄り添ったところで輝ける人だなという。一緒にライブをやった時も、時速のライブの時はフロアがワーって湧くんですけど、僕らが出てくると全員シーンとしていて(笑)。それに対してもクソって思うとかじゃなくて、おもしろいなと思ってます。それはそれで、僕らにしかできないことがあるはずだし、逆も時速にしかできないこともあるし。それを補い合って素晴らしいライブになったなって。

── 時速とCRYAMYはスプリットツアーもやっていますね。

カワノ そうですね。一昨年かな、2バンドで回ろうっていう。あれは、コロナ禍ではあったんですけど、なんかおもしろいことやれないかなみたいな話の中で実現したんですけど、実際に一緒に過ごす時間が長かったし、打ち上げとかも──まあ、時速もあんまり打ち上げに長く残っているバンドではないんですよ。俺らも、特に僕はすぐ帰っちゃうんですけど、そのツアー中はわりと深い時間までお酒飲んで喋ったりとかしたので。そうやって過ごす時間が増えたからギュッとなったってのもあるし。あと、友達として仲が良いというのと音楽はまた別だったりするんですけど、時速36kmというバンドは音楽としてすごくかっこいいというか、好きな音楽をやってくれててうれしいバンドなんですよね。

── ある意味、音楽と人間の部分がすごい近いのかもしれないですね、時速もCRYAMYも。

カワノ 時速は本当に剥き出しというか、そのまま裸でぶつかってくるようなバンドなので。

仲川 俺もCRYAMYに対してはまったく同じことを思ってる。彼らは振る舞いとしては、さっき言ったように何層も重なって、かっこいいことを見せたりと、いかれたようにやったりとかっていうのがあるんですけど、曲でだけは嘘をつけないタイプだなっていうのはあって。だから裸加減は一緒というか、なんだったら彼らの方がもっと裸になろうとしてるというか。彼の場合はもう裸じゃなきゃ死ぬ、みたいな脅迫観念すらあるような感じだと思うんです。自分が血を吐いててもどこまでこれを見せられるかっていうのにずっと徹していて。人からの見え方とかもある程度気にしないでやりたいし、そうあるべきだけど、なかなか100%そうできるバンドばかりかっていうとそうじゃないとは思うんです。でも彼らは本当に100%それをやるというか。だから今回、音楽性がガラッと変わったアルバムもある意味めちゃめちゃ彼ららしい。彼らが彼らをまっとうしているっていうのがCRYAMYの形だと思うから、そういう意味ではめちゃめちゃCRYAMYらしい音源だなって思います。

── そういうカワノさんが危なっかしいなって思うことあります?

仲川 ありますね。しょっちゅうというか、ずっと危なっかしい(笑)。こいつらが自分で課した「裸でいる」という縛りによって、どんどん命を削る方向に進んでるから、そういう意味では、自分らで危なっかしいっていうのを自覚しながら、あえて崖際を歩いている感じ。

カワノ それはめちゃめちゃ自覚してるよ。自分らが一番「死にそうだ」っていうのを自覚していながら、ずっと死にそうなところを歩いている。

仲川 だから危なっかしいなと思いつつも、アドバイスは何の意味もないっていうのも分かっているので、何もしないんですけど。

── なるほど。逆に近くで見ていて、カワノさんが一番健全な状態というのはどういう状態なんですか?

仲川 これもだから言ってしまえば今なんですよね。この死に際というか、ずっと背水の陣を組んでいる状態っていうのが、こいつにとってというか、CRYAMYをやっている音楽家である今のカワノにとっては一番健全なんだなっていうのを、皮肉にも思ってしまう。だからこれでいいと思います。

── そんなカワノさんから見たときに時速36km、仲川さんの進み方はどういうふうに見えますか?

カワノ 時速は、僕はストレートに行けないんですよ。真っ当にぶつかって突破するっていうことが不可能だったから、そうやって進んでいくしかなかった。壁が目の前に出てきた時に、最初はたぶん登ろうと頑張ってたと思うんですよ。でもある時から「やっぱり登らなくてもいいな」って思って。「壊すか」とか「横幅が狭いから回り込むか」とか、そういうことをやって結果どんどん自分の首を絞めていったんですよね。でもここまで来てしまったから引き返すこともできないしっていう。今にして思えば悲しいなと思うこともあるんですけど、時速は逆にちゃんと1個1個、目の前の壁を乗り越えていくパワーがあるバンドだと思うんです。僕らが崖っぷちなら、時速は王道をずっと進んでいるような感じがする。大きな力を使わずに、実力だけで突破してきている数少ないバンドだと思うんですよ。何かきっかけがあって跳ねたとかそういうのではなくて、ただいい曲作っていいライブをしてっていうのだけでちょっとずつ味方を作って、壁を壊してきたバンドなので、まったく我々と正反対だなと思うし、だからこそかっこいいなと思うんですよね。

── 時速は大学のサークルで結成したバンドだし、そういう成り立ちからしてCRYAMYとは違いますよね。

カワノ そうですね。我々はもう不良が集まっただけ(笑)。だから空気も全然違う。時速は友達からスタートしているところがあるから和気あいあいというか、仲良い感じがあるけど、僕らはどっちかって言ったら集まった段階で全員ろくでなしだったんで。全員我が強いから、最初の頃はぶつかったりとかしてたんですよ。今もそんな仲良いわけではないですけど、バンドを5年ぐらい続けていくうちに、僕がその我の強い人間をひとりずつ叩き潰してきてしまったというか。時速には慎ちゃんについて行くぞっていう空気があるとしたら、我々はもう逆で、僕がひとりずつ叩きのめしていった末に、僕以外の3名はほぼ諦めの境地で近い感じだと思うんですよね。だから僕だけじゃなくて、4人とも黄昏てるんですよね。そこはすごい対照的ですよね。

仲川 そうだね。それは見ていてもわかる。

カワノ 狭い楽屋で僕がメンバーとかに怒鳴りながらものを投げつけたりしてるのとかを見てるわけですよ。オギノ(テツ/時速36kmのベース)なんか「ツアーファイナルなんだからやめてよ!」って泣いてたしね(笑)。僕らは逆に時速がお互い支え合って頑張ってる、美しい光景を見てるし。

── それでCRYAMYが前に進めているというのもすごいことだと思いますし、やっぱり自分たちにないものがあるからお互いに憧れるんでしょうし。

カワノ そうですね。結局、自分に持ってないものを見るときが一番感動するじゃないですか。それがやっぱり慎ちゃんには強くあるんですよ。

仲川 うん、それはでも俺からも見てもまったく一緒ですね。

カワノ 僕が今回のツアーを呼んでいる人たちは特に、僕がリスペクトするバンドだけを呼んでいる感じなので、そういう感情はやっぱりそれぞれに対してあるし、その中でも慎ちゃんは特別ですね。

仲川 でもメンツを見て、本当の意味でこれはCRYAMYにしか作れないツアーだなって思いますね。世代もいろいろなバンドが集まっていて、これの共通点って何かと言ったら、めちゃめちゃかっこよくて、CRYAMYが尊敬しているっていうバンドっていう。それが一発で見て取れるというか。打算なく、そういうのを集めているのはかなり友達としては誇りですね。かなりロマンチックで、かっこいいなと思います。

── そういうツアーの最後の4本っていうのを時速36kmとw.o.d.という、同世代のバンドとやるっていうのも意味がありますね。

カワノ それこそコロナ禍に入る前、最後にやったフルキャパシティのライブが、仙台で時速とw.o.d.とスリーマンだったんですよ。だからそれも回収したような感じが今振り返ったらするなって。

── この先、お互いに期待することはありますか。

仲川 CRYAMYはこれまでいろんな血を吐き出してきたバンドで、今度の(6月の)野音もそうだと思うんですよ。で、毎回、「これで終わりだろ、CRYAMY」みたいなことを思うんですよ。「これ以上どうするの?」みたいな。だからこの後期待することってめちゃめちゃ難しいです。新しい音楽聴きたいな、ぐらいですかね。毎回それだけなんですよ。

カワノ 逆に時速にはとっとと売れてほしいなと思ってます(笑)。彼らが売れてくれないとっていうのは出会った時から思ってるんで。変な意味でじゃないですよ。時速みたいなバンドがちゃんとたくさんの人に観てもらえるっていうことが一番健全であると俺は思うので。時速はポップスの領域にも届き得るパワーのあるバンドだと思うので、いってもらわないと困るぞと。本当に時速にはいい未来しか待っていないと思うので。

Text:小川智宏 Photo:小境勝巳

ぴあアプリ限定!

アプリで応募プレゼント

CRYAMY・カワノ×時速36km・仲川慎之介サイン入りポスターを3名様にプレゼント!

【応募方法】

1. 「ぴあアプリ」をダウンロードする。

こちらからもダウンロードできます

2. 「ぴあアプリ」をインストールしたら早速応募!

<公演情報>
CRYAMY WORLD TOUR 2024 『人、々、々、々』 ※終了公演は割愛
2月25日(日) 岡山・CRAZYMAMA 2nd Room w/天国注射
3月2日(土) 福岡・LIVEHOUSE CB w/LOSTAGE
3月3日(日) 熊本・Django w/LOSTAGE
3月15日(金) 兵庫・神戸太陽と虎 w/Analogfish、KING BROTHERS
3月16日(土) 香川・高松TOONICE w/Analogfish
3月20日(水・祝 )福島・club SONIC iwaki w/時速36km
4月6日(土) 新潟・GOLDEN PIGS RED STAGE w/w.o.d.
4月7日(日) 石川・金沢van van V4 w/w.o.d.
4月14日(日) 北海道・札幌SPiCE w/時速36km
料金:前売4,000円/当日4,500円
※オールスタンディング、入場時ドリンク代が必要
チケット情報:https://w.pia.jp/t/cryamy-tour/

CRYAMY特別単独公演『CRYAMYとわたし』
6月16日(日) 東京・日比谷野外大音楽堂
料金:全席指定2,500円
チケット情報:https://w.pia.jp/t/cryamy-yaon/

<リリース情報>
CRYAMY 2nd フルアルバム『世界/WORLD』
発売中
価格:CD 3,000円、カセット 3,500円(税別)

■収録曲
1.THE WORLD
2.光倶楽部
3.注射じゃ治せない
4.豚
5.葬唱
6.待月
7.街月
8.ウソでも「ウン」て言いなよね
9.天国
10.人々よ
11.世界
CRYAMY 2nd ALBUM Digest Movie

すべての写真(23)を見る

© ぴあ株式会社