日本女子、中国と歴史的な死闘も53年ぶりの頂点ならず…5大会連続の銀メダル【世界卓球】

手に汗握る壮絶な死闘を演じたが、あと一歩足りなかった。

現地2月24日、韓国・釜山で開催されている卓球の世界選手権団体戦は女子の決勝が行なわれ、世界ランク2位の日本は同1位の中国と激突。最強女王とのゲームは日本がマッチカウント2-3で競り負け、1971年以来の金メダルを逃した。

シングルスの世界ランクトップ3を揃えた中国に対し、日本は準決勝の香港戦と同じオーダーを組んだ。トップバッターを15歳の張本美和に託し、大黒柱の早田ひなを2番手、好調な平野美宇を3番手に配置するパリ五輪内定メンバーで大一番に臨んだ。

先陣を切った張本は世界ランク1位の孫穎莎(ソン・エイサ)と対峙。第1ゲームは最強エースの圧力に屈し、5-11で落とす。第2ゲームは張本が一時リードするも、孫穎莎がすぐに逆転。中学3年生は得意のバックストレート、サーブで中国の女王に食らい付いていくが、連続ポイントで突き放され8-11で黒星。準決勝と同じ展開で、あとがなくなった。

コートチェンジの時には、過去に孫穎莎から勝利を挙げている伊藤美誠から「(相手は)緩急が使えている。ゆっくり1本入れていくのがいいと思う」と助言を受けた張本。先輩からのアドバイスを胸に、15歳はなんとか攻略の糸口を見つけようと奮闘するが、世界トップの壁はあまりに高くて厚く、最後は強烈なフォアハンドに反応できず。張本が無念のストレート負けを喫し、中国がまず先制した。

第2試合は早田が登場。過去7戦全敗、東京五輪金メダリストで世界ランク3位の陳夢(チン・ム)と対戦した日本のエースは第1ゲームを6-11で先取されるが、第2ゲームは男子選手顔負けの激しいラリーを両者が応酬。ここは1本決める度に吠えた早田の気迫が勝り、11-8で取り返す。

第3ゲームも目にも止まらぬラリーが展開。早田が先にゲームポイントを握るが、金メダリストの陳夢も負けじと反攻。連続ポイントを奪い、10-9と1点差になったところで日本はタイムアウトを要求。同世代であり盟友の伊藤から「思い切って!」と背中を押された全日本女王は、打ち合いを制し逆転に成功した。

第4ゲームも一進一退の攻防に。中盤から早田が驚異の6連続ポイントで逆転し、先にマッチポイント。だが陳夢も底力を発揮してデュースにまで持ち込むが、最後は早田が14-12で接戦をモノにし、大舞台で陳夢から歴史的初勝利。頼れるエースの活躍で日本が星を五分に戻した。
早田の勝利を見届けて、3番手に登場したのは平野。一戦ごとに調子がうなぎのぼりの23歳は、世界ランク2位の王芸迪(オウ・ゲイテキ)から第1ゲームを11-8で先取すると、第2ゲームは激しいバックラリーを展開。デュースにまでもつれる大接戦を最後は平野が13-11で押し切った。

平野はベンチに座る伊藤から「もうちょっと揺さぶっていいかも。フォアだったりバックだったり。レシーブもね」と的確なアドバイスに耳を傾け、第3ゲームに臨む。

序盤はリードを許した平野だったが、伊藤のアドバイス通り緩急ある攻撃で相手を翻弄しながら4連続ポイントを積み重ねる。王芸迪も驚異の粘りでデュースに持ち込むが、最後は平野が高い集中力を発揮し、12-10で撃破。”ハリケーン”が強敵をストレートでねじ伏せ、日本が世界一に王手をかけた。 運命の第4試合は、早田と孫穎莎という両国が誇るエースが相まみえる。

第1ゲームから中国の女王が猛攻を仕掛け11-2、11-7と早田を圧倒。世界トップの実力を存分に見せつけ、あっという間に2ゲームを連取する。第3ゲームも孫穎莎が主導権を譲らず、圧巻のストレート勝利。勝負の行方は第5試合の結果次第となった。

メダルの色が決まる第5試合を託されたのは、中学3年生の張本。対する中国は東京五輪金メダリストの陳夢という強敵。第1ゲームは張本が積極的な卓球で序盤から得点を重ね、なんと11-4で先取。コートチェンジの際には黄金世代から「自分から緩急つけてもいい。ドライブもいい感じだったよ。頑張って!」と心強い後押しを受けて第2ゲームへ。 だが陳夢もそう簡単に勝利を譲らず、11-7で取り返す。

第3ゲームも手に汗握る白熱した展開に。張本は変幻自在なサーブで格上を焦らせる場面も、最後は金メダリストが底力を発揮。8-9で1点ビハインドのところで日本はタイムアウト。「いい感じだよ!すごいじゃん!大丈夫、大丈夫」と伊藤、平野、早田か勇気をかけてもらい張本は奮闘したが、惜しくも8-11で取りこぼし、中国が優勝にリーチをかけた。

崖っぷちに立たされた張本。第4ゲームは得意のサーブで一時リードするも、最後は押し切られて敗北。絶対女王から勝利目前も日本はあと一歩で力尽き、5大会連続の銀メダルとなった。

構成●THE DIGEST編集部

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