なりわい再建の支援充実 視察の首相「先頭に立つ」

  ●輪島塗事業者と車座対話

 能登半島地震の被災地を24日に再訪した岸田文雄首相に対し、輪島市、穴水町の住民からは1次産業や伝統工芸など基幹産業の再建を求める声が相次いだ。意見交換を終えた岸田首相は「皆さんが被災前の笑顔を再び取り戻す日まで、先頭に立って生活やなりわい再建、地域再生に全力で取り組みたい」と述べ、観光についても状況を見ながらより手厚い需要喚起策を行うと明言した。

 輪島市の輪島塗会館で開かれた輪島塗事業者との車座対話では、蒔絵師の大森晴香さんが自宅兼工房が損壊し、市外に避難する職人が多いとして、「職人がいなくなるのを一番心配している」と説明。呂色師(ろいろし)の丸井聡さんも「もう一度戻ってもらえるよう仮設工房が必要だ」と続けた。

 岸田首相は市内の石川県輪島漆芸美術館に開設する仮設工房について、「能登の象徴、日本人にとっての宝をみんなで守っていかなければならない」と強調した。

 火災で大半の建物が焼失した輪島朝市では焼け焦げた臭いが漂う中、通りを見て回り、輪島市朝市組合の冨水長毅組合長らにあいさつした。

 穴水町の避難所、輪島市の応急仮設住宅では、住民から「日がたてばたつほど生活が苦しくなる」「商売をしている人になるべく早く支援を届けてほしい」など切実な声が飛んだ。大きなひび割れが生じた国名勝「白米(しろよね)千枚田」や海底が隆起して漁船が出港できなくなった輪島港も巡った。

 終了後、報道陣の取材に応じた首相は、県が予算案に盛り込む最大300万円の自宅再建利子助成事業について、輪島、珠洲、七尾、能登、穴水、志賀の6市町以外の子育て世帯も対象となる方向だと明かした。「手厚い地方財政措置を検討するよう総務相に指示した」と話した。

 奥能登以外でも被害が大きかった液状化対策については「道路など隣接住宅地も含め一体的に対策を講ずる。支援措置を速やかに具体化する」と述べた。

 同行した馳浩知事は3月16日に富山、福井、新潟県がスタートさせる観光支援の北陸応援割に関し、「私も同時にスタートはさせたいと思っているが、隣県と状況が違う」と実施時期を検討中であることに理解を求めた。

 視察には西田昭二総務政務官が同行し、自民党の岡田直樹参院幹事長代行、宮本周司参院議員、小森卓郎衆院議員が輪島朝市の視察や車座対話に同席した。

© 株式会社北國新聞社