うる星やつら、めぞん一刻【80年代アニメソング総選挙】高橋留美子アニメを彩った名曲たち  高橋留美子アニメを彩った名曲たちを深掘り

面倒くさいことがあったらこれを聴け!もはや人生哲学「宇宙は大ヘンだ!」

「なんかすごいものを見た」「すごいものを聴いた」と、脳みその蓋がパッカーンとあくような衝撃を受けるエンタメがある。その中でもスペシャルな輝きを放っているのが、1981年から4年半続いた、高橋留美子さん原作の名作アニメ『うる星やつら』!

異星人の超キュートなラムちゃんが、女性にだらしない地球人の諸星あたるに恋をするという設定の主人公2人もインパクト大だが、それ以上にサブキャラが強烈。「暗いよ狭いよ怖いよ」の面堂終太郎、豹変したら広島弁になるランちゃんをはじめ、地球人も異星人も、もれなく全員ヘン。そんな彼らがパズルのピースのように合わさり、1つの大きな世界を作っている。そんな “うる星” の世界をズバリ歌い上げたのが、初期のエンディング曲「宇宙は大ヘンだ!」だ。

 ヘンとヘンを集めて
 もっとヘンにしましょう

と、登場人物のヘンさ、そして宇宙のヘンさ、さらには、そのヘンさがいかに素晴らしいかをド直球かつユーモラスに歌った名曲である。毎回聴いて毎回感動する。クレイジーとかワンダーとか、カッコいい言葉に変換せず “ヘン” で勝負する、この発想と勇気、なかなか出ない! それをやってのけたのが作詞家・伊藤アキラさん。ヘンと連呼するこの清々しい歌詞に、小林泉美さんの開放的なメロディーが、どんどん宇宙空間を広げていく。グッジョブどころか、グッグッグッジョブくらいの最高の仕事である!

詞先だったのだろうか、曲先だったのだろうか。どちらにしても、自由過ぎるバラバラなサビの合唱、転調の浮かれ具合、ざわめきだらけの終わり方が、“ヘン” が集まっていく感じを想像させ、悩みが吹っ飛ぶ、視界が広がる。ヘンが集まることで起こる事件の解決法も、歌の中でしっかり提案されている。

 おちついて
 話しあいましょう

これが多様性という言葉が一般に普及する前、80年代に流れていたのだ。伊藤アキラさんの代表作のひとつ「この木なんの木」には、 “♪ 見たこともない木ですから 見たこともない花が咲くでしょう” という歌詞もあったが、それと通ずるものを感じる。自然で飾り気のない、個性の表現。匠の技である。

超絶イケボが彩る「めぞん一刻」

『うる星やつら』が1986年に終了し、同じ枠を受け継ぎ始まったのが、『めぞん一刻』である。古いアパート・一刻館を舞台に、管理人の響子さんと五代君の恋のすれ違いやもどかしさが、ヘンなサブキャラが絡んでいくことで倍加していくストーリー。そうなのだ。宇宙人は出てこないが、こちらもやはり登場人物全員ヘン。しかも一見、一番常識人に見える管理人の音無響子さんが、実は最もヘンで面倒くさい!

ラブコメディーでありながら少し湿った情念やエロスも描かれ、そのせいか、実力派男性アーティストが歌うラブソングとの相性が、滅法よかった。オープニングとエンディングは、安全地帯「好きさ」、来生たかお「あした晴れるか」、村下孝蔵「陽だまり」など、音楽性の高い楽曲がズラリ並んでいる。叙情的なムードたっぷりの大人のエモ。報われない系超絶イケボが、『めぞん一刻』に漂う愛しい面倒臭さを押し上げ、叙情的かつビューティフルな余韻を残してくれたのである。

そして『めぞん一刻』といえば、忘れてはならないのが、ピカソ(PICASSO)。エンディングに起用されたサードシングル「シ・ネ・マ」が見事なほどハマった。 “♪ ピー ヒャララピーヨピー…” というエキゾチックなイントロ。心地よい風のようなボーカル。ピカソが『めぞん一刻』のストーリーを美しく彩り、同時に『めぞん一刻』のストーリーがピカソの楽曲のエモさを増すという、アニソンの理想形!「さよならの素描(デッサン)」「ビギン・ザ・ナイト」など、ピカソによるエンディング曲はもれなく素晴らしいが、私は、思いの粒が落ちてくるような「ファンタジー」が一番好きである。

アイドル冬の時代の名曲ズラリの「らんま1/2」

いい意味で大人になりきれない、めんどうくささに溢れた “高橋留美子の世界=るーみっくわーるど” 。その、“わーるど” とひらがな表記したくなるくらいの萌えたる世界観にアイドル楽曲がハマるのは当然のこと。『めぞん一刻』のオープニング、斉藤由貴「悲しみよこんにちは」も良かったが、そういった意味で特筆すべきは、1989年からスタートしたアニメ『らんま1/2』のオープニングとエンディングだろう。

当時はアイドル冬の時代ど真ん中。そのスポットライトが当たりにくい状況の中、健気に勝負を賭けてきたアイドルたちの名曲が使用され、ストーリーの萌え度をさらに上げているのだ。坂上香織「プラトニックつらぬいて」、CoCo「EQUALロマンス」、早坂好恵「絶対!Part2」、そして中嶋美智代「ひなげし」! 中嶋美智代さんはもっと売れてよかった。凄まじく可憐な声である。

ちなみに、2000年スタートのアニメ『犬夜叉』も、エイベックス歌姫の楽曲がズラリ。オープニングは少しタイアップが露骨な感じもしたが、エンディングのチョイスは見事だ。浜崎あゆみ「Dearest」、BoA「Every Heart -ミンナノキモチ-」、Do As Infinity「深い森」「真実の詩」など、心を揺さぶるバラードが、ストーリーの影なる部分とリンクし、非常にドラマチックであった。

枠からはみ出した、愛しきヘンな人の物語を彩ってきたこれらの楽曲たちは、不思議と時代のど真ん中や王道さも強烈に感じる、アンビバレンツな聴き心地。プレイリストを作って一気に聴き直してみるのもいいかもしれない。胸騒ぎ強めの状態で、キュンの世界に飛んでいけそうである。

カタリベ: 田中稲

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