『離婚しない男』藤原紀香の登場でよりカオスな展開に 篠田麻里子の振り切れぶりも健在

司馬マサト(小池徹平)が岡谷渉(伊藤淳史)の元へ送り込んだ刺客・竹場ナオミ(藤原紀香)の登場によって、よりカオスを極める『離婚しない男―サレ夫と悪嫁の騙し愛―』(テレビ朝日系)第6話。

それにしても岡谷夫婦は2人して警戒心がなさすぎる。マサトが引っ越した後、間を空けずすぐにやって来た新住人があんなにキャラの強い“距離感バグった”人物ならば、何かしらマサトの関与を疑うものだろう。それが渉も綾香(篠田麻里子)も2人して全く気づいていないのだから、さすがにマサトのことを何もわかっていなさすぎる。この人を疑うことを知らない無頓着さや無防備さが、またマサトをより苛立たせるのだろう。

浮気夫の暴力に苦しんでおり、離婚届を一方的に送り付けられ傷心中という、どこか自分とも重なる状況にあるナオミのことを、お人好しの渉が放っておけるわけがない。しかし、アイドルを引退に追いやられた後、母親の手伝いをしていたスナックで、客に下世話な絡みをされる綾香のピンチを救った渉との馴れ初めは、最初は素敵にも思えたが、彼もまた精神がグラグラした女を引き寄せやすい何かがあるのだろう。今回のナオミの設定はマサトが描いたシナリオ通りなのだろうが、渉もまたチョロすぎる。スーパーで女子高生の梅比良梓(浅川梨奈)と真剣に特売品の取り合いをするような、大人気ない渉らしい、とも言える。

今話はナオミ役の藤原紀香が全てをかっさらっていったような回だったが、初めてナオミと対面した際の綾香役の篠田麻里子も全く存在感が霞まず、改めて篠田の振り切れぶりが頼もしく映った。ナオミと渉にちんすこうとパイのあの掛け合いをさせたいがために投入されたのであろう渉の父(利重剛)が、沖縄旅行に行ったという報告の電話シーンが後でじわじわと笑える。

そしてナオミのベッドの下に潜り込み渉との不倫現場の証拠を押さえようと動画撮影に躍起になる綾香の姿に、本当にこの夫婦は一体全体2人して何をやっているのだろうと、何とも言えない気持ちにもなってくる。そこで綾香は渉が離婚しようとしていること、娘の心寧(磯村アメリ)の親権を取ろうとしていることを初めて知る。

さて、このことを綾香からいずれ聞くことになるだろうマサトは、計画が狂ったと大慌てするだろう。マサトの中では、最愛の妻も娘も渉から一気に奪い去ってしまうことこそが“渉デストロイ計画”だったにもかかわらず、渉の方から綾香と離婚しようとしているなんて、それではマサトは意味がなく許せないだろう。渉が欲していない存在=マサトにとってももはや何の意味も価値もないものであり、綾香の相手をするのも億劫になるのではないだろうか。そうなるとマサトは一体次はどんな手に出るのだろうか。また綾香もそろそろマサトの心の中にいるのは自分でもその部下の千里(玉田志織)でもなく、渉だということに気づけないだろうか。

しかし、改めて2人の娘の心寧が不憫すぎる。娘を通わせる芸能事務所のマネージャーと浮気をしながら、自身が成し遂げられなかった夢やリベンジを娘に一心に託し、押し付けてくるステージママ・綾香は毒親でしかない。食事制限はされるし、自分の意見は通らず、両親の関係は常にギスギスしているとなれば、心寧にとって家庭内は安息の地には程遠いだろう。

さて、探偵の裕(佐藤大樹)がマサトの父親に接触しようとするも、一足早くマサトに察知され不発に終わるどころか、裕の母親を危険な目に遭わせると脅されてしまう。「父親だって僕には逆らえないからね」とマサト本人が言うくらいに実際に父親も彼に怯えているようで、この親子関係もまた非常にいびつそうだ。

渉の親権取得計画を知ると同時に、おそらく自分がマサトとの子を妊娠していることに気づいた綾香。どう転んでも関係者全員でデストロイまっしぐらな道しか見えない彼らの闘いは、どうなれば決着になるのか、もはや見失いつつありそうだ。

(文=佳香(かこ))

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