財源は「1人500円弱」の支援金!? 所得によっては負担が増える人も…閣議決定された「少子化対策関連法案」の内容は? 専門家が解説

モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。2月22日(木)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「財源は1人500円弱の支援金 閣議決定された少子化対策関連法案」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。

※写真はイメージです

◆少子化対策として「子ども・子育て支援新制度」を創設

政府は2月16日(金)、「子ども・子育て支援法」などの改正案を閣議決定しました。少子化対策の柱となる児童手当の所得制限撤廃や支給期間延長などの財源として、公的医療保険に上乗せして徴収する「子ども・子育て支援新制度」を創設します。政府は近く法案を提出し、今国会中の成立を目指します。

ユージ:政府はこれまで「異次元の少子化対策」を掲げてきましたが、改めて今回どのような対策が盛り込まれたのでしょうか?

塚越:いくつかありますが、まずは「児童手当の拡充」です。所得制限を撤廃し、支給期間は従来の「中学校修了」から「高校生世代まで」に延長します。支給額は0歳~2歳が月15,000円、3歳~高校生世代は月1万円です。ただ、第3子以降は年齢を問わず月3万円に引き上げます。こうした拡充は今年の10月分からとなります。

また、家計が苦しいひとり親世帯などに支給する「児童扶養手当」を今年の11月分から拡充します。

次に、共働き世代を支援するもの。子どもが生まれてから一定期間、両親が共に14日以上の育児休業を取った場合、育休給付を最大28日間、手取り収入が育休前の「実質10割」にする。つまり、手取りが減らなくなるような「出生後休業支援給付」の2025年度の開始を目指すということです。

男性の育休取得を促す制度ということですが、育休制度はすでにあるので、14日分の賃金補償以外のもっと根本的なところの改革が重要だと私は思います。

もう1つ、以前も特集しましたが、親が働いているかどうかを問わずに保育園などを利用できる「こども誰でも通園制度」を2026年度から全国で展開します。

また、家族の介護などをおこなう、いわゆる「ヤングケアラー」も国や自治体の支援対象であると明記し、対応を強化することになります。

◆1人当たりの負担は月平均500円弱…「賃上げによって実質的な負担は生じない」は本当?

吉田:その財源の確保をするために「子ども・子育て支援新制度」を創設するわけですが、財源や徴収方法はどうするのでしょうか?

塚越:重要なのは、やはり「財源」です。「支援金制度」は、医療保険料に上乗せして徴収する仕組みです。政府は2026年度に6,000億円、27年度に8,000億円、そして28年度には1兆円と段階的に引上げる方針です。

私たちの徴収額は、加入している医療保険や所得によって変わりますが、2028年度には大枠で月平均500円弱になります。野党は「事実上の子育て増税」と批判する一方、岸田文雄首相は「歳出改革と賃上げによって実質的な負担は生じない」と述べています。

ユージ:岸田首相は、「実質的な負担は生じない」と言っていますが、塚越さんはどう思いますか?

塚越:いや、負担になるでしょう。まず月500円と言っても、年間でいえば6,000円。さらに、加入する医療保険によっても金額は異なります。人によっては年間1万円、共働きなら2万円の負担になることもあります。さらに、あくまで現状の試算なので、増える可能性もあります。

次に、岸田首相は社会保障の歳出改革で1.1兆円削減すると言っていますが、要するにコスト削減なので、どうしたって社会保障関連の給付が減る一方で、さらに今回の負担が増えるとなれば、やはり負担増でしょう。

最後に「賃上げによって実質的な負担が生じない」と言っているのですが、企業の賃上げは本来政府が決定することではません。「賃上げするから負担は増えない」と言うなら、すべての増税でも同じことが言えてしまいます。「賃上げ」と言っていますが、実質的な所得がずっと下がっています。そのなかで負担が増えるわけですし、これは説明になっていないなと思います。

ユージ:賃上げで政府ができることといったら、呼びかけですよね。それに企業がどう対応するか、ということですよね。

塚越:そうですね。これがOKだったら、全ての増税も「賃上げされるから負担が生じない」と言えてしまいますよね。説明になっていないこと平気で言えてしまうあたり、政府は本気ではないのだろうと思います。

◆少子化を食い止めるのに必要なことは?

ユージ:塚越さんは、これらの対策で少子化に歯止めをかけられると思いますか?

塚越:お金の問題は重要ですし、今回の支援も(負担云々は別にすれば)ないよりあったほうがいいと思いますが、大事なのは人々の気持ちです。さまざまな調査で、若い世代には「子どもを産もう」と思う気持ちが「あまりない」という人が増えてしまっています。

私の大学の講義でも、「今の状況で子どもを生むと、『親が自分にしてくれたことを、自分の子どもにしてあげられない……』と思うと産みたくない」という人がいます。

逆に言えば、親世代がしてくれたことを、自分たちも子どもに対してしなければならないというプレッシャーを感じている方もいるので、そこは解放してあげなきゃいけないと思います。

しかし、そのためには周りに人がいて助け合える環境が必要です。新しい価値観を作るために、我々が考えていかないといけないなと思います。

吉田明世、塚越健司さん、ユージ

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2月22日(木)放送分より(radiko.jpのタイムフリー)聴取期限 2024年3月1日(金) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜~金曜6:00~9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/one/

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