このままでは飼殺しにされる…50代に思い切って「フリーランス転向」した元大企業・技術職男性、70歳を超えても活躍できるワケ【キャリアコンサルタントが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

役職定年や定年での収入減少により、意欲は高いものの、それを活かせない現状に思い悩む高学歴中高年男性。職場には機会がなく、十分に意欲が活かせない中高年男性が活躍するための1つの選択肢となるのが、「フリーランス」という働き方です。本記事では、70歳を超えても活躍しているフリーランスの事例を踏まえて、中高年男性の活躍に向けたヒントを探っていきます。※本記事は、「中高年男性の働き方の未来」(金融財政事情研究会・小島明子著)の内容を一部改編・追加の上、掲載しております。

フリーランスという働き方の選択肢

改正高年齢者雇用安定法のなかで、企業には「7つの選択肢」が提示されています。そのうちの1つとして、定年後や65歳までの雇用終了後にフリーランス契約を希望する人には、70歳まで継続的に業務委託契約を締結することが含まれています。

一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会によれば、「フリーランス」の意味を広義で捉え、「特定の企業や団体、組織に専従しない独立した形態で、自身の専門知識やスキルを提供して対価を得る人」と定義されています。

仮に定年後にフリーランス契約を希望した場合、いままで行ってきた業務を委託という形で継続することに加えて、複数の企業から業務を受託することも可能となります。専門知識やスキルが高い人であれば、勤務時間の縛りもなく、定年前の報酬を維持することができます。

同協会の調査では、会社員とフリーランスとの働き方に関する比較を行っています。全般的な満足度においては、フリーランス(69.2%)、会社員(64.6%)と大きな差異はありません。

しかし、就業環境、仕事上の人間関係、達成感/充実感、スキル/知識/経験の向上、自分のスキルアップや能力開発のための時間、自分の休息・リフレッシュ、趣味のための時間といった項目では、5%以上フリーランスのほうが高くなっています。

また、総務省が実施した調査によれば、フリーランスを年齢階級別にみると、「45~49歳」が24万人(有業者に占める割合3.0%)で最も多く、「50~54歳」が24万人(同3.0%)、「55~59歳」が22万人(同3.4%)となっています。

フリーランスというと、若手のイメージがありますが、実際、中高年で活躍をしている人は多いことがわかります。

いままでの連載では、ハードワークが難しく、外的報酬欲求は高くないものの、内的報酬欲求は高いという中高年男性が最も多い層であることを述べました。その実態を踏まえれば、企業に勤めている中高年男性が、フリーランスへ転換するという働き方も選択肢の1つになると考えます。

40代から社外の人と積極的に仕事をすることの重要性

では実際、もともと企業出身者だった人のなかで、高齢になってもフリーランスとして活躍している人はどのような経緯でそのようなキャリアに至ったのでしょうか。

ここでは、筆者が過去、70歳を超えても、フリーランスとして活躍をしているAさん(大手企業出身の技術職で役職定年を機に退職)にインタビューをさせていただいた話をご紹介します。

Aさんが、そもそも社外に目を向けたのは、40代初めのころに、嫌な上司と出会ってしまったことがきっかけだったと聞きます。そのときに、このまま会社にいるのではなく、外に出ることを考えるようになったそうです。

しかし、急に外に出るといっても、自分の名前が知られていなければ、転職先も見つからず、出ていくことはできません。まずは、その当時の勤め先の仕事を続けながらも、より外の人間関係にも目を向けた仕事の仕方に切り替え、声を掛けられた社外の活動に積極的に参加をし始めたといいます。

そのように仕事の仕方が変わったことで、社外とのネットワークが広がり、会社を辞めたあとにも仕事のチャンスをもらえるようになったそうです。そしてついに、50代に差し掛かったころ、長く勤めた会社を退職し、新たなキャリアへと踏み出しました。

そのため、ご自身の経験を踏まえて、40代からはどう生きるべきかを考え、その準備をすることの大切さを指摘していました。

Aさんからは、「自分自身は、役職定年のある会社だったので、役職定年になったあとは、組織のなかで飼殺しにされて、65歳まで残っていてもやることがないということが見えていた。迎合して生きるのが好きな人はそのまま会社に残り、飼殺しにされていればよい。しかし、過去勤めていた会社で優秀な人たちの多くが、40代ぐらいから社内ではなく、社外の人たちと仕事をしているのを見てきた。結果として、そのような仕事の仕方をしていた人たちのほうが、長く活躍をしていると感じる」という話もお伺いしました。

厚生労働省によれば、男性の平均寿命は81.05歳、女性の平均寿命は87.09年です。仮に60歳ぐらいで勤め先を退職しても、健康であれば、約10~20年くらいは、働くことができる可能性があります。

現役で企業に勤めているうちは、勤め先内容の人事評価に一喜一憂したり、キャリアへの諦めを感じている人もいるかもしれません。しかし、より人生を長い視点でとらえ直してみると、現在の仕事に対する取り組み方は変わってくるのではないでしょうか。

小島 明子

日本総合研究所創発戦略センター

スペシャリスト

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