23年の梅雨の大雨災害、避難は半数以下 大分大が被災3地域の住民調査【大分県】

大分大の学生たちの聞き取り調査に答える住民たち=由布市湯布院町川西の上津々良地区集会所

 大分大減災・復興デザイン教育研究センター(CERD(サード))は、昨年の梅雨の大雨災害で住民が取った行動を調べ、被害の大きかった県内3地域で避難した人は半数以下だった―との結果をまとめた。既に周囲で土砂崩れや増水が起きたため自宅から出られなかった住民もいた。CERDは「予測困難な大雨の際に避難するタイミングの難しさが改めて浮き彫りになった」と分析している。

 調査は県と共同で実施した。▽由布市湯布院町の川西畑倉地区▽日田市の小野・大鶴両地区▽中津市耶馬渓町の宮園地区―で昨年12月と今年1月、住民計49人に聞き取りをした。

 指定避難所や集会所、知人宅などへ身を寄せたのは23人。半数超の26人は避難しておらず、そのうち少なくとも10人は「逃げようとした時には土砂崩れが起きていた」「周囲の水があふれていた」などと答えた。

 日田市の小野・大鶴両地区は7月10日の大雨で、未明から降水量が急に増えた。CERDによると、市が避難指示を出した午前6時には小野地区で1時間雨量が57ミリに達し、既に災害が発生していたとみられる。

 中津市耶馬渓町では前日の9日から避難指示が出ていたものの、住民が実際に行動を始めたのは、山国川が氾濫危険水位を超えた10日午前5時前後に集中した。

 避難しなかった理由として「自宅に被害がない」「ペットがいる」「手助けが必要な家族がいる」「避難所の設備が劣悪で行きたくない」との声も上がった。

 避難生活に関しては、約4割が健康不良や課題があったと回答した。強いストレスに加え、筋力の低下を感じた人が多かった。

 CERDの鶴成悦久(つるなり・よしひさ)センター長(47)は「避難指示が出た時にはもう逃げられないというケースもあり得る。普段から身を守る場所や方法を考えておく必要がある。避難生活の健康管理も含めて行政は検証に生かしてほしい」と話した。

<メモ>

 昨年6月30日夜、梅雨前線の影響により、由布市湯布院町で観測史上最大となる1時間68ミリの雨量を記録。7月10日には県北部と西部に線状降水帯が発生し、日田、中津の両市に大雨特別警報が出た。その後も雨による被害が相次いだ。由布市と中津市で計4人が亡くなった。

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