ウミウ(2月25日)

 いわき市泉町の海岸の250メートル沖合に浮かぶ。無人島の「照島」だ。島を模したモニュメントがJR泉駅前にある。重さ120トンの寸胴[ずんどう]形の自然石の上に、ウミウのブロンズ像が載る。生息地として国の天然記念物に指定された島を広く発信しようと設置された▼13年前、東日本大震災の揺れと津波が島を襲った。植物が茂っていた頂上部は姿を消し、円すい形の岩場だけが残された。越冬するウミウも一時数羽程度しか見られなくなった。鵜[う]飼いに代表される身近な鳥が姿を隠し、住民は心を痛めた▼石川県能登の気多大社に、500年以上伝わる「鵜祭」がある。主役のウミウは神とされ、その動きで新年の吉凶を占う。本殿の台上に飛び乗ると良い年になるとされるが、昨年12月の神事では9分間じっと動かなかったという。元日の地震で、能登半島の海岸線は一変した。生息地だった名勝「見附島」は半分が崩れた▼照島には飛来が戻り、昨年12月に25羽が確認された。周辺は2年前に復旧した、いわきサンマリーナを中心ににぎわいを見せる。能登半島地震の復興は緒に就いたばかり。「神の鳥」が見晴らす風景も、きっとかつての活気を取り戻すだろう。<2024.2・25>

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