【鉄路と生きる】只見線駅伝でつなげ郷土愛 3月30日に初、福島県内の28駅27区間

沿線住民のマイレール意識の醸成に向けて只見線駅伝を企画した目黒英樹さん(左から2人目)ら有志

 JR只見線を盛り上げようと、福島県只見町と同金山町の住民有志は3月30日、只見駅(只見町)から会津若松駅(会津若松市)までの只見線28駅27区間(102.5キロ)をたすきでつなぐ「只見線駅伝」を初めて催す。景色を楽しみながら沿線を走って駅を巡り、各地の魅力を再発見する企画。地域の大切な財産である只見線を見つめ直す機会として来年以降も継続し、住民のマイレール意識を一層高めていく。地域を挙げて集客力のある催しに育て、沿線の活性化にもつなげたい考えだ。

 市町村対抗県縦断駅伝競走大会(ふくしま駅伝)の只見町チーム監督を務める目黒英樹さん(53)が発案した。駅伝は走る人も見る人も一つになれる。ふくしま駅伝を通し、郷土愛が深まるのも実感した。「駅伝の力を只見線の利活用と沿線の一体感の創出に生かせないか」と考えた。只見線の全駅を自転車で巡った只見中1年の角田杏さん(13)から助言を受けるなどし、実施計画をまとめた。

 経路は【図】の通り。所要時間は10時間18分程度を想定している。走者は只見町民でつくる只見ランナーズと金山町民で構成する金山ランニングクラブのメンバーが中心となる。三島町など他の沿線市町村のランナーにも声をかけており、中学生以上の約40人が参加する予定だ。

 各区間は複数で走る。参加者は車で移動しながら、それぞれが担当する区間を駆け、たすきをつなぐ。只見線の車両と並走したり擦れ違ったりする時は乗客に手を振る。今回は参加者を公募しないが、次回以降は幅広く募り、将来的には地域と連携した行事にする。

 福島県内全28駅のうち只見、会津川口、会津坂下、西若松、会津若松の5駅を除く23駅は無人駅だ。近年は鉄道ファンの間で「秘境駅」巡りの人気が高まっており、駅伝開催により無人駅を新たな観光資源にする。

 駅前で関連イベントが同時開催されたり、ランナーを応援する人が只見線を利用したりすればにぎわいが生まれると期待される。有志メンバーの目黒賢治さん(42)は金山町の会津川口駅近くに住んでいる。「沿線が一層、活気づくのを期待している」と語る。只見駅近くに自宅がある只見中2年の三瓶叶翔さん(14)は「只見線沿線で長い距離を走るのは初めてなので楽しみ」と心を躍らせている。

 只見線は2011(平成23)年7月の新潟・福島豪雨で鉄橋が流失するなど大きな被害を受け、一部区間が不通となった。住民や県、沿線自治体の強い要望を背景に2022(令和4)年10月、只見―会津川口駅間が復旧し全線再開通にこぎ着けた。豊かな自然の中を走る鉄道として交流サイト(SNS)などで注目を集め、国内外から観光客が訪れている一方、地元住民の利用が少ない。利用者を増やし鉄路を維持するにはマイレール意識のますますの高まりが必要になっている。目黒英樹さんは「只見線を再生させた住民の情熱を未来に継承していく」と意気込んでいる。

 駅伝に関する問い合わせは、目黒英樹さんのメール(bozemeg@yahoo.co.jp)へ。

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