公正証書遺言に出てくる公証役場や公証人。どのようなところ? どんな人?

公証役場とは? 公証人とは?

公証役場とは、法務省(法務局)所管の公的機関です。公証人が、遺言等の公正証書の作成、任意後見契約や遺産分割協議書等の各種契約、会社の定款や私署証書等の認証、確定日付の付与などの公証事務を行う事務所で、全国に約300ヶ所あります。

各都道府県にありますが、すべての市町村にあるわけではありません。また、一般的に予約制となっている場合が多いです。

公証人は、裁判官や検察官あるいは弁護士として法律実務に携わった人のなかから、法務大臣によって任命され、全国に500名ほどいます。また、公証人は公証「役場」で職務を行いますが、国家公務員法上の公務員ではありません(実質的には公務員と変わらないのですが)。

また、公証人の職務は、その所属している法務局または地方法務局の管轄区域で職務を執行することになります。

どこの公証役場を利用するの?

<株式会社設立の場合>
株式会社設立の際に必要な定款認証は、会社の本店の所在地を管轄する法務局か地方法務局に所属している公証人しか取り扱いができません。

<公正証書遺言の場合>
基本的には、どこの公証役場を利用するかは自由です。ただし、公正証書遺言の作成時に公証人に出張してもらう場合は、出張地を管轄する公証役場の利用のみです。

注意点は、公証役場はそれぞれ独立して職務を行っていますので、途中から公証役場を変更することはできません(一度取り消しをして再度別の公証役場で手続きを行うことになります)。

よって公証役場を決める際は、自宅の近所なのか、病院や施設に入院・入所しているのであればその近所なのかを含めて決める必要があります。

公証役場で公正証書遺言を作成するための進め方は?

ご自身で公正証書遺言の作成の依頼をスムーズに進めるには、一般的に下記のようなプロセスがよいでしょう。

1. 公証人への遺言の相談・遺言書作成の依頼、必要書類を用意

まずは、公証人への依頼・相談です。これは専門家でなく本人や家族でも可能です。打ち合わせの日程が決まったら、それまでに必要書類を収集しておくとよいでしょう。必要書類はケース・バイ・ケースで、以下の書類以外にも必要になる可能性がありますので、詳細は利用する公証役場におたずねください。

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(1)遺言者本人の3ヶ月以内に発行された印鑑登録証明書
(2)遺言者と相続人との続柄が分かる戸籍謄本や除籍謄本
(3)財産を相続人以外の人に遺贈する場合には、その人の住民票。法人の場合には、その法人の登記事項証明書
(4)不動産がある場合は、その登記事項証明書と、固定資産評価証明書または固定資産税・都市計画税納税通知書中の課税明細書
(5)預貯金等の相続の場合には、その預貯金通帳等またはそのコピー
(6)証人予定者の氏名、住所、生年月日および職業のメモ書き
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2. 相続内容に関する必要資料やメモの提出

上記の必要書類以外に、それを誰にどのような割合で相続(遺贈)するのかという希望、その他遺言書に書きたい内容をあらかじめ公証人に伝えることによってスムーズなやり取りができます。

3. 公正証書遺言の案の作成と修正

公証人は、2で提出された必要書類やメモを基に、遺言の案を作成し、それを遺言者等に提示します。そして遺言者がそれを見て、修正したい箇所を伝えることによって公証人が再度修正し、最終的に遺言を確定します。

4. 遺言公正証書遺言の作成日時の確定

遺言の内容が確定したら、遺言者等と公証人とで打ち合わせを行い、遺言者が公証役場に行く、あるいは公証人が遺言者の自宅等に出張し、作成日時を確定します。

5. 遺言の当日の手続き

遺言当日は、遺言者本人から公証人へ、証人2名の前で遺言の内容を改めて口頭で告げます。

そして公証人は、判断能力を有する遺言者の真意ということを確認したうえで、4で確定した遺言公正証書に基づき、事前に準備しておいて遺言公正証書の原本を、遺言者および証人2名に読み聞かせて(閲覧させて)、遺言の内容に誤りがないことを確認してもらうことになります。

その際に、遺言者が自らの真意を任意に述べることができるように、利害関係人は席を外すことになっています。

遺言の内容に誤りがない場合は、遺言者および証人2名、公証人が、遺言公正証書の原本に署名をして、押印(公証人は職印)することによって、遺言公正証書が完成します。完成後、公証人手数料の支払いと引き換えに公正証書を受け取ります。

公正証書遺言を作成は準備が大切

上記で示したとおり、さまざまな必要書類を収集することになります。できるだけ速やかに公正証書遺言を作成するには、これらの書類を早く集めることが大切です。

執筆者:田久保誠
田久保誠行政書士事務所代表

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