有機雑穀で肉そっくりな味や食感 那覇のお店が冷凍食品を発売 手軽にビーガン料理味わえる

ハーベストミートの調理例。冷凍の商品を焼いたり揚げたりするだけで店と同様の味を楽しめる

 沖縄県那覇市松尾のオーガニックレストラン「浮島ガーデン」は、県産の有機雑穀を使用し、肉そっくりの食感や味を再現した「ハーベストミート」の冷凍食品を発売した。雑穀と野菜、スパイスを主原料とし、肉や乳製品を一切使わないため、ビーガン(完全菜食主義者)やベジタリアンの人でも食べられる。ビーガン向けの市場が伸びている東南アジアなど海外への展開を目指す。(政経部・大川藍)

 店主の中曽根直子さんが雑穀に着目したのは20年ほど前。仕事続きで体調を崩した際、穀物中心の菜食に切り替え、心身の健康を取り戻したのがきっかけだった。

 調べるうちに、県内でもタカキビなど在来種の穀物を栽培している農家があると知った。中曽根さんは「祭祀(さいし)の供え物にも使われる沖縄の貴重な雑穀を絶やしてはいけない」との思いから、自身でも種を保存し、農家に配布する普及活動を開始。2017年には県雑穀生産者組合を立ち上げ、雑穀の栽培支援を続けている。

 県内では現在、タカキビやアワ、モチキビ、アマランサス、キヌアなどの雑穀が栽培されているものの、生産者が少ないため、安定的な入手は難しい。

 県産雑穀の認知度を高め、生産の継続につなげようと、中曽根さんは雑穀を使用し、肉や乳製品を使わないハンバーグやギョーザを開発し、レストランで長年提供してきた。雑穀のプチプチとした食感が肉のように感じられ、指摘されるまで気づかないほどに再現性が高いのが特徴だ。店には海外のビーガンをはじめ、健康意識の高い観光客や地元客が数多く訪れる。

 中曽根さんは「長年培った技術を生かし、自宅でも簡単に調理できる商品を」と思い、新たに冷凍食品の開発に着手。昨年4月に本店を休業して生産体制を整え、オンラインショップなどでの販売を始めた。まだ販売量は少ないが、「コロナ禍が明け、今後増える海外のビーガン客への対応として、ホテルなどに活用してほしい」と呼びかける。

 シンガポールやマレーシアなど、ビーガン市場の大きい海外への輸出も見据える。海外展開や量産で協業できるパートナーを募集中だ。

 波照間島産のタカキビや久高島産のハダカムギを使ったハンバーグは4個入り2980円(税込み)。ほかにもギョーザやフィッシュフライ、島豆腐のタコライスなど、店の看板メニューを冷凍食品として販売している。焼いたり、揚げたりする一手間はあるものの、自宅で手軽においしいビーガン料理を味わえる。

 浮島ガーデンのウェブサイトのほか、ロージャースフードマーケット(沖縄市)、暮らしの発酵ストア沖縄(北中城村)で販売する。4月にレストラン兼ショップとして再開する本店でも購入できるようにする予定だ。

雑穀や野菜を使用し、肉そっくりの食感や味を再現した「ハーベストミート」を手にする店主の中曽根直子さん=14日、那覇市の浮島ガーデン(レストランは休業中)
「ハーベストミート」の冷凍食品

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