いま自分が住んでいるマンション、高値で売れる?資産価値を左右するポイント【マンショントレンド評論家が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

いま住んでいるマンションの売却を見据えた場合、高く売りたいと考えるのは当然のことです。今回は、『60歳からのマンション学』(講談社)より、資産価値を維持・向上させるためのポイントについて、著者の“マンショントレンド評論家”日下部理絵氏が事例をもとに解説します。

【物件概要と登場人物の紹介】

物件概要……3LDK86.42m/12階建て7階/築22年45戸/最寄り駅徒歩10分
資金概要……住宅ローン返済中
家族構成……夫58歳、妻56歳の2人暮らし、別居の子供2人(長男28歳、長女26歳)

【あらすじ】

2人の子どもたちも独立し、「夫婦2人で住むには広すぎるから」とマンションの買い替えを検討していた加藤圭司(仮名・58歳)・陽子(仮名・56歳)夫妻。圭司さんは、管理会社からの依頼で渋々マンション管理組合の「副理事長」に。理事会では「管理費等長期滞納者」や「2度目の大規模修繕工事」などの問題を乗り越え、無事にマンションを買い替えることができた。

最寄り駅からは徒歩7分以内が必須

加藤さんの旧宅は、最寄り駅から徒歩10分。購入者も駅からは少し遠いと言っていた。歩けない距離ではないものの、たしかに駅近とはいいがたい。では最寄り駅から徒歩何分ぐらいが平均なのだろうか。じつは最寄り駅からの距離は、立地の良し悪しを表すバロメーターのひとつとされ、「駅からの距離=徒歩分数」は、周辺環境にかかわらず客観的指標として判断される。

具体的な分数については、最寄り駅から徒歩7分以内が望ましいとされる。東京カンテイ(不動産データサービス)が公表する「首都圏新築マンションの徒歩時間別供給シェア推移」(2020年)によると、最寄り駅から徒歩3分以内は20.4%、4〜7分は31.9%、つまり、新築マンションの半数以上が徒歩7分以内なのだ。全体平均でも7.4分である。

ただし、たとえば東京の吉祥寺や北千住など、駅周辺に商店街があり住宅地まで距離があるようなエリアは、徒歩分数以上の価値があると判断される。このようなエリアを除いては、駅から徒歩7分を超えると、今後の需給バランスを考えると厳しくなりそうである。

また一般的に、駅近物件は価格が高く、駅から遠くなるにつれて価格が下がっていくが、駅から遠い物件ほど、下落率も大きくなるといわれる。安価だからと駅から遠い物件を安易に購入すると、買い替えや住み替え、相続などで売却したいと思った時に、思うような価格で売れず大変な思いをする可能性がある。

徒歩5分以内に買い替えできた加藤さんご夫婦はとても運がいいし賢明な選択である。7分以内は必須。将来も見据えるなら徒歩5分以内と覚えておきたい。

マンションの価値は「管理」が左右する!?

面倒だし、本当は引き受けたくないが…管理組合の役員、辞退はできるのか

加藤さんが「面倒だな……」と思いながらも渋々引き受けた管理組合の役員。

役員とは、理事(理事長や副理事長及び会計担当理事などの役職)と監事の総称をいう。もしどうしても引き受けたくない場合は、辞退できるのでしょうか。

原則はNGです。誰もが納得するような個別事情を説明したり、マンションによっては協力金などを支払うことで、回避できる場合もあるが、自身のマンションを知る良い機会だと捉えて、前向きに取り組むのをおすすめしたい。もし「私は高齢だから……」というのであれば、その旨をはっきり伝えて負担のない役職を選ぶのもひとつの手だ。

そもそも必要?…管理組合の役員を決めなければいけないワケ

そもそもなぜ管理組合の役員が必要なのか。管理組合に関する重要なことは、総会で決議をする。しかし予測できない突発的なトラブル対応や日常の管理状況の確認などすべてにその都度、区分所有者全員が集まって決めるのは現実的ではない。

そのため管理組合の代表として総会で役員を選任する。役員の決め方は、「その都度、立候補制」もしくは、加藤さんのマンションのようにあらかじめ決められた「輪番制」が多い。

なお、協力金とは、ざっくりいうと不公平感をなくすため決められた金額を支払うことで役員を辞退できたり、外部に住む方は居住者より書類送付などの手間と費用がかかるので、通常の管理費等とは別に上乗せして支払うお金をいう。

訴訟が起こる事例も…協力金の導入はまだまだ少数派

いままで役員の資格要件は、「現に居住している区分所有者」である管理組合が多かった。そうすると賃貸に出している人などは役員をせずに、居住している人だけに役員の負担がくる。

役員のなり手不足を解消するためにも、役員に支払う役員報酬とともに導入している管理組合もある。ただし、協力金導入に関しては訴訟が起こる事例も出ておりまだまだ少数派である。

マンションの大規模修繕…「資産価値維持」のためにも必須

加藤さん宅は、2回目の大規模修繕を無事に終えた直後に売却した。

この大規模修繕とは何か。じつはマンションの大規模修繕工事について、明確な用語の定義はなく、一般的に建物の経年に対応した建築関係の改修工事のうち、10〜15年に一度の周期で(計画的に)広範囲をいっときに施工するものといわれる。なお、2021年9月に改訂された長期修繕計画作成ガイドライン(国土交通省)によると、12〜15年とされている。実施される工事は、外壁の補修、屋上等の防水、鉄部の塗装、給排水管など主に共用部分の工事を行う。

大規模修繕は管理組合にとって、「十数年に一度の大イベント」と位置付けられている。それはスケールが大きい工事で、工事費が数千万〜数億円と巨額の費用を投じて行うことに起因している。そのため「難しい」「大変」「面倒」といったイメージを持ちやすく、言い換えれば、管理組合として、本来行わなければならないことを見失ってしまいやすいとも言われている。

「壊れたらその都度、修理や修繕をすればいい」と思う人もいるかもしれない。ならばなぜ予防的な大規模修繕をするのか。

新築当初、美しかったマンションも長年、太陽光や風雨等にさらされていると、屋上防水や外壁などが傷んでくる。給排水や電気などの設備についても経年劣化していく。これらを放置していると快適であったマンションの暮らしに影響を及ぼすことになる。的確に劣化を発見し修繕することが、耐久性を高め、結果として、安全・安心・快適な暮らしはもとより資産価値にもつながる。

つまりマンションの経年劣化を改善するために、おおむね10〜15年周期で計画的な大規模修繕を実施することが重要なのである。計画的な修繕なので「計画修繕」ともいわれる。

大規模修繕の大きな特徴として、人が住んでいるマンションで行う点があげられる。人が住みながら工事をするので、施工業者が防犯、騒音、粉塵、洗濯などにいかに配慮できるかが重要だ。

日下部 理絵
マンショントレンド評論家
オフィス・日下部 代表

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