【チューリップ賞】1番人気6勝も混戦模様 GⅠ組タガノエルピーダ、エルフィンS2着スウィープフィートが頼り

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阪神JF上位馬不在のトライアル

2歳GⅠと桜花賞が同舞台で行われる牝馬クラシック路線は、牡馬と比べるとトライアルで試すというニュアンスがない。もう本番の舞台を経験済みの阪神JF上位馬にとって、チューリップ賞はむしろ出走することによるダメージのデメリットが大きい。まして牝馬はまだまだ体力がつききっておらず、走らせるごとに精神的に追い詰められる心配もしなくてはいけない。

こうした背景もあり、チューリップ賞は翌日の弥生賞ディープインパクト記念と比べると、かなり寂しいメンバー構成になる。だが、それならそれで馬券的には面白い。以前は堅調だったチューリップ賞は本番直行が主流になったことにより、より出走権獲得争いが熾烈になった。だからこそ妙味もある。データは過去10年分を使用する。

1番人気は【6-1-1-2】勝率60.0%、複勝率80.0%と抜けている。ただ、阪神JF4着以内【6-0-1-0】と、好走は明らかな実績上位馬に偏っている。今年はこの1番人気鉄板データに符合する馬はいない。2番人気【1-1-5-3】勝率10.0%、複勝率70.0%以下は確率的に大きな開きはなく、7番人気【1-2-1-6】勝率10.0%、複勝率40.0%までは混戦状態にある。1番人気が好走ゾーンに入らないとなると、難易度がグンと上昇する。

次にキャリアの傾向をみる。1戦【0-2-1-6】複勝率33.3%もいいが、好走ゾーンは3戦【5-3-2-21】勝率16.1%、複勝率32.3%を中心に、2戦【2-3-1-18】勝率8.3%、複勝率25.0%、4戦【4-1-5-31】勝率9.8%、複勝率24.4%あたりまで。基本は計画的にここに駒を進めてきた馬がいい。

朝日杯FS経由のタガノエルピーダ

今年は2勝馬ミラビリスマジック、ワイドラトゥール、1勝馬では朝日杯FS3着タガノエルピーダ、エルフィンS2着スウィープフィートなどが中心になりそうだ。前走成績を基に好走馬の傾向を探ろう。

目立つのは前走GⅠ【8-1-5-11】勝率32.0%、複勝率56.0%だが、当然これはすべて阪神JFで、4着以内【8-1-5-5】、6着以下【0-0-0-6】と前走好走が条件になる。少々強引だが、朝日杯FSに置き換えればタガノエルピーダは有力候補になる。

前走GⅢ【0-3-1-13】複勝率23.5%は、同5着以内【0-3-1-9】で掲示板以内が条件。ラーンザロープスのシンザン記念は2016年ジュエラーがシンザン記念2着からチューリップ賞2着と好走した。4着だったラーンザロープスに当てはまるかどうか。スティールブルーのフェアリーSは【0-0-1-7】。3着は14年リラヴァティ。フェアリーS3着から権利を獲得した。ショウナンマヌエラのアルテミスSは【0-0-0-1】。アルテミスS経由で阪神JFを通らないローテはそうはない。

前走OP・L【2-1-1-26】勝率6.7%、複勝率13.3%の内訳は、エルフィンS【1-1-1-16】勝率5.3%、複勝率15.8%、紅梅S【1-0-0-8】勝率、複勝率11.1%が中心だ。1600mのエルフィンSが1400mの紅梅Sよりアテになる。

エルフィンS2着【0-1-0-1】、4、5着【0-0-0-5】、6~9着【1-0-0-3】だが、連対はいずれも中京で行われたエルフィンSで、京都なら【0-0-1-15】。もっとも近3年が中京代替であり、コースの問題というより、近年の直行ローテによってチューリップ賞のメンバーレベルが低下したことと関係がありそうだ。であれば、今年も2着スウィープフィートの出番はある。2走前阪神JFで7着馬だった。

紅梅S経由で勝ったのは16年シンハライトで、紅梅Sと連勝だった。その後は桜花賞2着、オークス1着なので、ちょっと例外感もある。ワイドラトゥール、2着セキトバイーストはここを突破できるか。

最後に前走1勝クラス【1-1-2-36】勝率2.5%、複勝率10.0%は、前走マイル以外【0-0-0-23】で、マイル戦出走が条件だ。ベゴニア賞2着ガルサブランカ、菜の花賞1着ミラビリスマジックなどが当てはまる。好走例をみると、16年ラベンダーヴァレイが赤松賞5着から3着へ、21年ストゥーティは菜の花賞3着から3着と好走した。2着に敗れたガルサブランカも権利どりの可能性はある。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬中心の文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。



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