独企業、中国への「デリスキング」疑問視 対中投資を拡大

独企業、中国への「デリスキング」疑問視 対中投資を拡大

第6回中国国際輸入博覧会の自動車展示エリアで中国初公開となった、メルセデス・ベンツの新型ロングホイールベースEクラスセダンの「E300L」。(2023年11月5日撮影、上海=新華社記者/辛夢晨)

 【新華社北京2月25日】ドイツ自動車大手メルセデス・ベンツグループのオラ・ケレニウス会長はこのほど、同社の四半期業績発表に際し、欧州連合(EU)が中国に対する保護主義的措置を強化すれば欧州のような経済体は壊滅的な影響を受けるとの見解を示した。

 ケレニウス氏の発言はドイツと欧州のビジネス界に共通する本音を表している。ドイツ政府とシンクタンク、商工会議所が最近発表した一連の報告書やデータによると、中独間の投資協力は外部からの雑音の影響を受けていない。米国や西側諸国の政治家が中国への「デリスキング(リスク低減)」を騒ぎ立てる中、ドイツ企業は対中投資を拡大し、中国市場への進出を続けている。

独企業、中国への「デリスキング」疑問視 対中投資を拡大

江蘇省南京市で開かれた2023江蘇国際高齢者介護サービス博覧会のドイツブース。(2023年9月21日撮影、南京=新華社記者/何磊静)

 ドイツ経済研究所はドイツ連邦銀行(中央銀行)のデータに基づく報告書の中で、2023年の対中直接投資額が前年比4.3%増の119億ユーロ(1ユーロ=約163円)に上り、過去最高を記録したと指摘している。ドイツ企業による過去3年間の対中投資額は15~20年の総額と同等だった。また23年のドイツの対中投資額は海外投資全体の10.3%を占め、14年以来で最高水準となった。

 ドイツ連邦統計局が今月中旬に発表したデータでも、23年の対中貿易額は2531億ユーロで、中国が8年連続でドイツ最大の貿易相手国になったことが示されている。

 在中国ドイツ商工会議所が1月に発表した「ビジネス信頼感調査2023/24」では、会員企業566社の9割超が中国事業の継続を予定し、半数以上が向こう2年以内に中国で増資する計画があると回答。中国が「ドイツ経済にとって依然として唯一無二の価値を持っている」と指摘した。中国は消費市場の規模が大きく、サプライチェーン(供給網)とインフラが先進的で、イノベーション力が日増しに高まっているとした上で、中国がドイツ企業の最も重要な市場の一つであり続けるとの見方を示している。

独企業、中国への「デリスキング」疑問視 対中投資を拡大

中国自動車大手の上海汽車集団がドイツのフォルクスワーゲン(VW)と合弁運営する上汽大衆汽車(上汽VW)の生産ライン。(資料写真、上海=新華社配信)

 アナリストは、市場経済の下でビジネスを行う以上、経済活動において不確実性というリスクがあるのは当然で、デリスキングの概念は本質的に市場経済に反すると指摘。また多くのデータや実例から、ドイツ企業が中国市場を積極的に開拓していることは明らかで、デリスキングや「デカップリング(切り離し)とチェーン分断」が支持されていないことを証明していると述べた。

 ドイツ商工会議所連合会(DIHK)が発表した在外ドイツ商工会議所(AHK)世界ビジネス展望報告では、海外展開する企業にデリスキングが大きな負担をもたらし、半数近くが適切なサプライヤーやビジネスパートナーを見つけるのに苦慮していることが言及されている。

 ドイツ連邦銀行の複数の専門家は、中国を離れることが長期的に見てドイツ企業に大きなビジネス上、経済上のコストを生じさせるとする文章を発表し、中国という「主要販売市場」を失えば、多くのサプライチェーンが効率を犠牲にして再編を行わざるを得なくなるとの見通しを示した。

独企業、中国への「デリスキング」疑問視 対中投資を拡大

ドイツ・ハンブルクの貨物場に乗り入れる中国-欧州間の国際定期貨物列車「中欧班列」。(2021年10月26日撮影、ハンブルク=新華社記者/王勍) 

 ドイツ連邦経済開発・対外貿易協会(BWA)のミヒャエル・シューマン会長は、多くの西側メディアがイデオロギーや地政学的対立を誇張し、投資リスクを警告することに熱中しているとした上で、企業が中国で実地調査を行い、地元の人々と対話すれば、これまでとは異なる印象や結論を得られると提案した。

 アナリストは、いわゆるデリスキングが本質的に経済・貿易問題を政治やイデオロギーの問題にすり替えており、多国間貿易体制の権威や有効性に衝撃を与えるだけでなく、経済法則にも反しており、最終的に世界経済の回復を妨げることになると指摘。貿易障壁を設けて政治的リスクを引き下げようと企てること自体がリスクだと述べた。

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