2023年10月から青森市の県立美術館で開かれていた現代美術家・奈良美智さん(弘前市出身)の企画展「奈良美智:The Beginning Place ここから」(東奥日報社などでつくる実行委員会主催)が25日、閉幕した。閉幕直後に行われたクロージングイベントには、奈良さんが弘前高時代に通い詰めたロック喫茶「33⅓」を再現した展示に奈良さん本人がサプライズで登場。DJとして音楽を流しながらロック喫茶の当時のスタッフと思い出を語り合い、約4カ月にわたるロングランの展示を「今までで一番名残惜しい展覧会だった」と締めくくった。
同展は、県立美術館で行う奈良さんの個展としては初の単独開催。故郷の影響を色濃く感じさせる初期の作品から世界初公開の新作まで約200点を展示し、国内外から延べ約8万7千人(速報値)が訪れた。
クロージングイベントは閉館時間後の午後5時半から約1時間半にわたって行われ、アレコホールに設置されたスクリーンに奈良さんたちの姿が同時中継される形で開催。アレコホールには閉幕を惜しむファン約200人が残り、奈良さんが流す1960~70年代の洋楽ロックに耳を傾けた。
奈良さんは「33⅓」という存在について、「出会ってなかったら(今の自分とは)全然違う人になっていた」と説明。DJを終えた後には観客の前に姿を見せ「自分と対峙(たいじ)し、自分と語り合うことができた展覧会だった」と振り返った。
奈良さんが会場を去ると、ファンたちは万雷の拍手で感謝。同展を訪れるのは3回目という青森市の森内秀子さん(61)は「奈良さんの作品を通じて社会の問題と向き合う気持ちを持ち続けたい」と話した。