珠洲にホテル「諦めない」 札幌から移住の26歳・畠山さん

開業予定のホテルへの思いを語る畠山さん=珠洲市上戸町

  ●5月開業「地元経済回す」 

 札幌から奥能登へ移住して間もない畠山陸さん(26)が、珠洲市内でホテルの開業を目指していると聞いた。能登半島地震から2カ月足らず。この地で長く暮らしてきた県民ならまだしも、遠く北海道で生まれ育った若者である。復興に長い時間がかかることを考えれば、決して簡単な道ではない。あえて困難に挑戦するのはなぜか。理由を確かめようと、本人に会いに行った。(佐内まこと)

 津波の被害を受けた珠洲市宝立町春日野の海沿いを北へ向かうと、民家の隣に、足場に囲まれた建物を見つけた。もともと廃墟となっていたモーテルで、現在は開業に向けた改修作業の途中だった。

  ●客室から海望む

 「まだ完成前ですけど、ご案内します」。畠山さんに促され、屋内を見学させてもらった。2階の客室には大型の窓が設けられ、目の前に美しい海が広がる。

 ホテルの改修工事は4月中に完了する予定で、開業は断水が復旧するとみられる5月ごろを見込む。

 高台にある建物は津波の被害を免れたが、ホテルの開業はやはり時期尚早のように感じる。疑問をぶつけると、畠山さんは「経済を回さないといけないし、地元の人が気軽に来られる場所にもしたい。だから諦めたくないんです」と語った。

  ●カフェ・酒場併設

 計画では1階にカフェ・酒場を設ける予定で、「地元の人が夜にお酒を飲んで、客室が空いていれば、そのまま泊まってもらってもいい」と畠山さん。能登に輪を。そんな願いを込め、ホテル名は「notonowa(ノトノワ)」とした。

 さらに畠山さんは続けた。「前を向いている人はたくさんいます。自分がホテルをオープンすることで、かわいそうな被災地というイメージを少しでもなくしたい」

  ●先祖は加賀藩に 能登へ思い入れ強く

 能登への強い思い入れは、畠山さんのルーツにも関係があるという。以前、七尾市を訪れた際、ある人に「(室町時代の能登守護)畠山氏と関係があるのか」と聞かれて調べてみたところ、加賀藩の氏族本保氏の末裔(まつえい)であることが分かった。

 「畠山氏の直系ではありませんが、前田家を通してどこかで血縁関係を結んだのかもしれません」。畠山さんはこう明かす。自分のルーツが石川にあると知り、さらに能登を応援したい気持ちになったという。

 「支えてくれた人たちへの恩返しとしても、今はできることをやるだけです」と力強く語る畠山さん。同い年の自分も勇気をもらった。

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