避難者に光を、善意集め花火 珠洲から110人受け入れ 富山のホテルが29日

花火が打ち上がるスキー場方向を眺める珠洲市の2次避難者=富山市内のホテル

 能登半島地震で珠洲市の被災者が2次避難している富山市のホテルが29日、近くのスキー場で被災者を元気づける打ち上げ花火を実施する。発災から間もなく2カ月。花火は長引く避難生活を強いられている被災者にエールを送ろうと、全国展開する同ホテルの運営会社が富山県内外の取引先などに広く協賛を募った。能登に寄せる全国からの思いを乗せた「光の大輪」約450発で夜空を彩る。

 珠洲市民約110人が身を寄せるのはホテルテトラリゾート立山国際で、北海道函館市に本社を置く「ホテルテトラ」が運営する。立山山麓に位置するホテルは、街中と違って日常生活を送るには立地的に不便で、本社の三浦裕太社長(37)が「被災者は長期間、同じ施設で慣れない生活を送っている。全国からの応援の声を形にして届けたい」と打ち上げ花火を企画した。

 避難者の大多数は大谷地区と宝立地区の住民で、土砂崩れや津波の被害に遭った人もいる。衣食住のそろうホテルでの避難生活は1次避難所の環境から比べると質が格段に向上。ホテルの従業員や避難所運営に当たる富山市の職員は困りごとに親身になって対応するなどし、被災者が細やかな気遣いに感謝している。

 被災者は食事の配膳を手伝うなどして従業員の負担を少しでも減らそうと工夫し、バレンタインデーには日ごろの感謝を込めて従業員全員にチョコレートを配った。ホテル責任者の松原和徳さん(42)は「被災者からサザエをもらったスタッフもいる。家族ぐるみの付き合いのようになってきた」と受け止めている。

  ●220社以上が協賛

 ホテルテトラは北海道から九州まで全国26カ所でホテルを運営する。立山国際の取り組みや被災者とのつながりが新聞報道などで発信され、取引先からも賛同の声が寄せられるようになり、花火を通じて思いを形にすることにした。協賛金を1口1万円から集め、県内外の220社以上が善意を寄せている。

 花火は立山山麓スキー場極楽坂エリアで午後8時から行われ、ホテルからも眺めることができる。自宅が倒壊した高野幸子さん(72)=珠洲市宝立町=は「いつも負担かけとんがに、自分たちのためにもったいない。その気持ちがありがたい」と初めて経験する冬の花火を心待ちにした。

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