31年前の再現、横浜FM水沼宏太「(父と)同じような状況でピッチに立てて良かった」世代を超えて東京Vを開幕撃破!

J1開幕第1節が25日に東京ヴェルディ対横浜F・マリノス戦が東京・国立競技場で行われ、2-1で横浜FMが勝利して好発進した。Jリーグ創設初試合となる「93 Jリーグサントリーシリーズ第1節」が1993年5月15日に国立競技場できょうと同じカードが組まれ、横浜マリノスがヴェルディ川崎に2-1で初白星を飾った。

偉大な父に続いて宿敵を打ち破る

この日横浜FMの元日本代表MF水沼宏太は4-1-2-3の右ウィングで先発して開幕戦に臨んだが、序盤から東京Vの勢いに押し込まれる形で良さを出すことがなかなかできなかった。

ボールを受ければ東京Vイレブンが素早く寄せて、水沼が得意とする豊富な運動量を生かしたサイド攻撃を阻止された。張り付くようなディフェンスに戸惑いながら、押し込まれる展開が目立ってしまった。

水沼は「ピッチのコンディションもありましたけど、『(相手がチームを)分析してきてたな』という印象がすごく強い。僕らはビルドアップの部分でモタモタしてボールを繋いでいる感じもあった。僕のところもエウベルもそうでしたけど、サイドに入ったときにもうはめられた状況でボールが来る状況が多かった。そこをなんとか早めに真ん中の選手やインサイドハーフの選手が、ピックアップしながら前進することができれば良かったですが、前半はなかなかそこを改善できずに試合が流れていったと思います」と相手に押し込まれた原因を振り返った。

序盤の前半7分に横浜FMのGKホープ・ウィリアムのファウルから東京VのMF山田楓喜の直接フリーキックにより先制を許した。そこから勢いづいた相手に押し込まれ、ゲームを相手に支配されてしまった。

「最初に自分たちの隙を突かれたというか、ハンドであそこからフリーキックみたいなシーンは立ち上がりに作っちゃいけないです。あそこで勢いに乗らせてしまった。ヴェルディの選手たちの前に出てくる勢いや、ここは繋ぐ、ここは大胆にみたいな使い分けは見習うべきところもたくさんあったかなと思います。でも最後に勝てたので、みんなに感謝したいと思います」と危機を振り返りながらも、冷静に相手から学びを得ていた。

公式戦2連勝を飾った一方で、今季のチームはボールを支配して多彩な攻撃で圧倒する“マリノス”らしさが影を潜めている。

アジアチャンピオンズリーグ(ACL)ラウンド16では格下と目されていたバンコク・ユナイテッドに第1戦で2-2と引き分け、第2戦は延長後半終了間際に得点して1-0で勝ち切った。この日の開幕戦もJ1昇格組の東京Vに苦戦を強いられる形で、試合終盤の後半48分にDF松原健のミドルシュートで逃げ切った。

当然この状況に水沼自身も満足しているはずがない。「ACLの2試合のプレッシャーの掛けられ方と、ヴェルディのプレッシャーの掛け方は異なっていた。プレッシャーをうまく掛けられると剝がせないシーン、ビルドアップのところで剥がせないシーンが多かったりする。そこはもっともっと自分たちがやらないといけないと思います」と気を引き締めていた。

31年前と新たな歴史

31年前の1993年5月15日。創設したばかりのJリーグが開幕し、父・水沼貴史さんが国立競技場で行われたヴェルディ川崎との一戦に横浜マリノスの先発メンバーとしてプレーした。

31年前の開幕戦はV川崎が前半に先制し、横浜Mが後半に2得点を挙げて2-1で記念すべき決戦を制した。奇しくもこの日開催された開幕戦も同様の結果で2-1で横浜FMが勝ち星を挙げた。

水沼は「(父と)同じような状況でピッチに立てたというのは良かったと思います。(31年前の)開幕戦と同じスコアで終われたので、また面白いなと思います。でも自分たちとしてはしっかり勝ち切りたかった。もっと圧倒したかったし、自分としても、もっと自分のプレーを表現できたら良かった。自分としては感慨深さもあるし、悔しさもあります」と複雑な心境を吐露した。

この日は試合前にJリーグの生みの親でもある川淵三郎初代チェアマンがスピーチを行った。スピーチ中に感極まり、涙声で東京Vの16年ぶりとなるJ1復帰を労うシーンがあった。

そのスピーチを耳にしていた水沼は「昔のリーグから応援してくださっている方々、支えてくださっている方々にとっては、あの日を思い出せる人もいらっしゃると思います。あの日を知らない若い世代の応援してくださっている人たちからしても、きょうは『あぁこういう歴史があったんだな』と思ってくださるような演出だったんじゃないかなと思います。こうやって取り上げていただいて、昔を知らない人にとって『父が1番最初に出てたんだ』というところとか。そういう意味では僕自身も嬉しい気持ちもあります。その中で勝てたというのもすごく良かった。いまたくさんの方々に、歴史を築いてくださった方々に対しても感謝したいと思いますし、いま自分たちがこうやってピッチでプロ選手としてやれているところにも感謝をしながら、これからの世代に繋いでいく。10年後、20年後、30年後とJリーグがもっとより良いリーグ、世界に誇れるリーグになっていけるような。そんな歴史の一部になれたんじゃないかなと思います」と先人に感謝しながら新しい1ページを書き加えた。

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この日は気温5.6度かつ降雨という身が凍えるような中で試合が開催されたが、5万3026人の観衆が集まった。31年前の開幕戦の観客5万9626人に勝るとも劣らない熱い雰囲気の中で激戦が繰り広げられた。31年の間に先人たちが積み重ねたレガシーは色褪せず、日本サッカーの未来を明るく照らし続けている。

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