平均1,900万円だが…100万人以上が「退職金のもらい忘れ」という凡ミス、定年サラリーマンの残念な実態

頑張って会社に貢献してきた労いでもある「定年退職金」。老後の安心・安全のためにも、1円でも多くもらいたいものですが、なんと100万人以上が「退職金をもらい忘れている」という信じられない実態があります。みていきましょう。

退職金は「一時金」か「企業年金」

企業が取り入れている退職金給付制度は、大きく、退職時に一括して支払われる「退職一時金」と、会社を退職する際にもらえる給付金を分割して受け取る「企業年金(退職年金)」の2つがあります。

企業年金のほとんどが、企業が掛金を拠出・運用し、従業員の年金を準備する「確定給付年金(DB)」、企業が拠出する年金額は決まっており運用成果次第で給付金額が増減する「確定拠出年金(DC)」、「厚生年金基金(平成26年から新規設立停止)」のいずれかです。

厚生労働省『令和5年就労条件総合調査』によると、退職給付金制度がある企業は74.9%。そのうち、退職一時金制度のみの企業は69.0%、企業年金制度のみの企業が9.6%、両制度併用の企業が21.4%となっています。

また企業年金のある企業(退職給付金制度がある企業のうち31.0%)のうち、「確定給付年金」を採用しているのは44.3%、「確定拠出年金」は50.3%、「厚生年金基金」は19.3%、「企業独自の年金」は3.0%です(複数回答)。

定年退職金の平均額をみていきましょう。「大学・大学院卒」で1,896万円、「高校卒」で1,682万円。月収換算でそれぞれ36.0ヵ月分、38.6ヵ月分です。大学・大学院卒について、退職給付金制度の形態別にみていくと、「退職金一時金制度のみ」の企業で1,623万円、「退職金制度のみ」の企業で1,801万円、「両制度併用」で2,261万円です。また勤続年数別にみていくと、「勤続20~24年」で1,021万円、「勤続25~29年」で1,559万円、「勤続30~34年」で1,891万円、「勤続35年以上」で2,037万円となっています。

退職金で知っておきたいのが「税金」。退職一時金の場合は退職所得として課税対象です。ただ会社で源泉徴収されるので、確定申告の必要はありません。勤続年数により所得控除があり、勤続年数20年以下であれば「40万円×勤続年数」、20年を超えると「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」。平均退職金額から考えると、所得税がかからない人は多いと考えられます。

一方、企業年金は毎年給付される年金同様、雑所得に分類され、こちらも課税対象。「源泉徴収されていないとき」「年金収入が年400万円を超えるとき」「公的年金以外の雑所得が年20万円を超えるとき」「医療控除などを適用するとき」は、確定申告が必要です。

年間100万人超が「退職金のもらい忘れ」という凡ミス

企業年金では、「請求忘れ」というミスを犯す人がいます。老後の生活に安心・安全を与える「退職金」を、なんと、もらい忘れるという人が実に多くいるのが実情なのです。

厚生労働省『厚生年金基金等の未請求者の状況について』によると、令和4年年度末で、厚生年金基金の受給権者10.0万人に対して、「未請求者」が2,000人。受給権者に対する「もらい忘れ」は1.7%。

企業年金連合会に移管されている企業年金の受給権者は1,229.0万人に対し、「未請求者」は107.7万人。受給権者に対する「もらい忘れ」は実に8.8%となっています。

未請求者の状況についてみていくと、住所変更などを行わず郵便物が届かない「請求書不達者」が64.8万人、郵便物は届いているのに手続きをしていない「請求保留者」が42.9万人もいます。

退職金や企業年金の請求には時効があって、労働基準法115条で5年と定められています。企業年金の請求権には、年金を受ける権利である「基本権」と、分割された年金ごとに発生する受け取る権利である「支分権」、前者は「知った時から10年、権利を行使できるときから20年のいずれか早い方」(民法168条)、支分権は「知った時から5年、権利を行使できるときから10年のいずれか早い方」(民法166条)と定められています。

確定企業給付年金は、規約によって民法より長い時効期間を定めている場合もありますが、いずれにせよ、時効によって企業年金は消滅してしまう恐れがあるのです。

自ら退職金を失うことのないよう、郵便物は必ず目を通し、速やかに手続きを行いましょう。

[参考資料]

厚生労働省『令和5年就労条件総合調査』

厚生労働省『厚生年金基金等の未請求者の状況について』

企業年金連合会『連合会年金の未請求者の状況について』

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