トランプ氏に激しい批判、自身の刑事訴追と黒人差別同一視で

[ワシントン 25日 ロイター] - トランプ前米大統領が刑事訴追されている自らの立場を、米国で長らく差別や迫害を受けてきた黒人層と同一視する発言をしたため、共和党の大統領候補指名を争うヘイリー元国連大使や民主党、黒人団体などから一斉に批判を浴びせられた。

トランプ氏は23日、サウスカロライナ州の共和党予備選を前に黒人保守系団体の集会で、自身が4つの刑事事件で訴追されたことについて「黒人はこれまでひどく傷つけられ、差別されてきたので、それが理由で私のことを好きでいてくれる、と多くの人々が話した。彼ら(黒人)は自分が差別を受けているような視点で私を見ているのだ」と言い切った。

ただトランプ氏が訴追されたのは、2020年の大統領選結果を覆そうとしたことや、機密文書の持ち出しなどが原因で、黒人社会が米国の刑事司法制度の下で味わってきた不公平感とは全く異なるというのが客観的な事実だ。

トランプ氏から人種差別主義者とのレッテルを貼られていたヘイリー氏は、今回の発言を「本当に胸が悪くなる」と切り捨て、もしもトランプ氏が共和党候補になればまた大統領選に負けるという「重大な警告のサインだ」と訴えた。

バイデン大統領の選対本部幹部も「トランプ氏は自分の刑事訴追が侮辱的だから黒人が支持してくれると主張している。馬鹿げた話で、それこそ全くの人種差別主義者だ」と述べた。

有力黒人団体の全米黒人地位向上協会(NAACP)と公民権団体ナショナル・アクション・ネットワークはいずれも、トランプ氏の発言は自身の刑事問題と、米国の刑事司法制度に存在する組織的な人種偏見を巡る議論を不当に結び付けていると非難した。

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