核ごみ処分場、再び争点に 長崎・対馬市長選が告示 誘致掲げる荒巻候補、反対姿勢の比田勝候補

候補者の訴えに耳を傾ける市民ら=対馬市内

 25日告示された長崎県の対馬市長選は、新人の荒巻靖彦候補(59)と現職の比田勝尚喜候補(69)の2人が立候補した。原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)最終処分場誘致問題は昨年いったん区切りがついたが、再び争点に。3月3日の投開票に向け、7日間の論戦がスタートした。
 同市では昨年、急速に進む人口減少や経済衰退への危機感を背景に、最終処分場誘致に向けた動きが16年ぶりに再燃。選定の第1段階となる文献調査受け入れを巡り、島を二分する議論に発展した。
 市議会は同年9月、建設4団体が提出した調査促進の請願を賛成多数で採択したが、市長の比田勝候補は「市民の合意形成が不十分」などとして、調査を受け入れない考えを表明した。
 市長選で、比田勝候補は引き続き最終処分場への反対姿勢を明確にする。一方、大阪府在住の荒巻候補は推進派市議の一部から要請を受けて立候補。前回の市長選も最終処分場誘致を掲げて出馬しており、今回も最終処分場誘致のみを掲げる「ワンイシュー」(単一争点)で挑む。
 第一声で荒巻候補は、誘致のメリットとして「土木工事などに伴い、製造業や建築業、ホテル、あらゆる会社や商業施設が対馬に入る」と主張。「人が増えれば仕事が増え、若い人も戻る。その皮切りが最終処分場誘致」と力説した。
 比田勝候補は出陣式で、調査を受け入れなかった判断に触れ「市民の将来や生活を考えた苦渋の決断だった」と強調。「誰一人取り残さない持続可能な対馬を磨き上げたい」と訴えた。反対派の漁協関係者のほか、建設団体も姿を見せた。
 両候補は南北に約82キロと広大な対馬で支持浸透に向け、選挙カーで街宣に繰り出した。厳原町の主婦(72)は「少子高齢化に歯止めがかからない。漁が上がらない水産業の振興策を打ち出すなどして経済を回してほしい」と注文した。

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