スリープテック市場に関する調査を実施(2023年)~2023年の国内スリープテック市場規模は105億円になると予測、エビデンスに基づく睡眠改善サービスの拡大、法人向けの開発も進む~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の睡眠関連ビジネス市場を調査し、関連する製品およびサービスの動向、参入企業の事業展開、今後の方向性などを明らかにした。ここでは、スリープテック市場予測について、公表する。

1.市場概況

睡眠の改善は社会課題として⾮常に重要視されており、これまで医療機器・医薬品だけではなく、寝具や機能性表示食品など様々な商品・サービスが展開されてきた。そのような中、新たな市場としてスリープテック市場が立ち上がっている。

スリープテック市場とはSleep(睡眠)とTechnology(技術)を合わせた造語であり、センサーやアプリなどのIT・AIなどの技術を活用し、生体活動データを収集することにより、睡眠状態を分析したうえで、睡眠の改善を目指す装置、システム、サービスである。

スリープテックに関連する、寝具・家電等の製品、アプリ使用料、サービス・システムの利用料などを対象とした市場規模を算出すると、2022年の国内スリープテック市場規模は、事業者売上高ベースで60億円であると推計した。

睡眠状態は、体動や呼吸、心拍数、いびき音、体温、寝床内の温度、脳波、筋電などの様々な指標をセンシング、解析することで推定される。近年では、センサーの高機能化や小型化に伴い、睡眠計測デバイスが、スマートフォン、リストバンド型、指輪型、ヘッドセット型、イヤホン型など多様化したことで、より手軽に睡眠を可視化することができるようになった。

法人向けのサービスとして、従業員等の睡眠状態の判定とその結果に基づいた、睡眠の質を改善するための指導やエビデンスに基づく情報提供などのソリューションが展開されている。従業員等の睡眠に関する様々な課題を経営的な視点で管理・解決するための健康経営の観点で導入が進みつつある。

2.注目トピック~医療機器、寝具メーカーから大学発スタートアップ等まで参入企業は多様化~

スリープテック市場は、これまで医療機器メーカーを中心に商品開発が行われてきた。近年では、ヘルスケア企業、寝具メーカー、電機メーカー、通信サービスを提供する企業に加え、大学発のスタートアップなども参入している。

参入企業は、寝具、空調、家電、製薬、食品などのメーカーと連携し、商品開発の取り組みを進めている。既存の製品や新規の製品に睡眠計測結果から示唆される科学的な根拠を組み込むことで、製品の信頼性の向上や競合との差別化を図っている。

法人向けには、健康経営サービスの一環として睡眠にフォーカスしたサービスが増えており、計測デバイスや睡眠改善への介入方法などで差別化を図っている。中には、主観的な睡眠評価を基に、睡眠改善アドバイザーなどの専門家が介在するサポート型のソリューションを展開する企業もみられる。

また、近年では、様々な業界の企業が複数参加し新たな製品やサービスの開発を目指す合同プラットフォームを形成する動きが広がっている。

3.将来展望

2023年の国内スリープテック市場規模は事業者売上高ベースで前年比175.0%の105億円になると予測する。

スリープテック市場は、寝具、家電、アプリ、ゲームなどの個人向け製品から、健康経営や睡眠を観点とした新製品開発など法人向けサービスまで展開されている。また、睡眠が健康や生産性などと関係性があることを示唆する研究が蓄積されていることに加え、睡眠への社会的関心が依然として強いため、市場拡大を後押しする要因の一つとなるとみる。

睡眠計測デバイスの技術革新は非常に速く、デバイスの種類、精度、取得できる生体情報の量と質が向上しており、この傾向は今後も続くと予測する。

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