定番から俗語まで「ムコジョ生が集めたSNSの用語集」 若者の「今」写す416語、使用頻度で3段階に分類

武庫川女子大の学生が集めたSNSの用語集と、授業を担当した岸本千秋助教=武庫川女子大学言語文化研究所

 「今日のメーク羽ばたいてた!」「ま? 嬉(うれ)!」-。武庫川女子大(兵庫県西宮市池開町)の学生たちが交流サイト(SNS)や仲間内で使っている言葉416語を収録した「ムコジョ生が集めたSNSの用語集」を、学内の言語文化研究所がまとめた。新型コロナやK-POPブームから生まれた新語や、人との微妙な距離をうかがわせる言い回しも多く、若者社会の「今」を写し取っている。(山岸洋介)

 2023年度の授業「SNSから日本語を見る」の中で作成した。受講する約100人が15グループに分かれ、1人7~8語ずつを持ち寄った。1グループにつき約40語にまとめ、クラス全体で共有。読みや意味、用例を調べてコメントも付けた。使用頻度に応じて3段階に分類している。

 用語集によると、冒頭のやりとりは「今日のメーク、なんかいい感じやったね」「ほんま? うれしい」といった意味という。

 定番は「り」(了解)や「バ先」(バイト先)といった省略形。「じわる」はじわじわ笑いが込み上げる様子を表現している。

 SNS上にあまり登場しない状態を指す「低浮上」や友だち登録(フォロー)を求める「フォロリク」などSNSを使いこなすための言葉や、インターネット発の俗語(ネット・スラング)も多かった。

 自宅でカフェのような食事をする「おうちカフェ」は、コロナ禍の外出自粛によって流行。コロナで学生生活に大きな影響を受けた世代らしさがにじむ。

 主張をぼかしたり間接的にしたりして、相手との関係をソフトにする言葉も目立つ。日常会話でよく登場する「それな」は同意や共感だけでなく、逆に適当な相づちや話を切り上げたい時にも使うという。

 「フロリダ」は入浴のためやりとりを離脱するときに「そろそろフロリダしやす」などと投稿。面倒な時にも、風呂を口実にすれば角が立たないという面もあるという。「あーね」(あーなるほどね)のコメント欄には「便利。使えばとりあえず何とかなる」との本音が記されている。

 K-POPのファンが使う「センイル」(誕生日)や「イルデ」(日本デビュー)など韓国由来の言葉も多数登場。好きなアイドルを応援する文脈で使う「推し」「担当」には「箱推し」「推しごと」「同担」など派生語がたくさんあり、やりとりの活発さを物語っている。

 授業を担当した岸本千秋助教は「言葉の傾向から、興味の対象が浮かび上がる。次々に言葉を生み出す感性がおもしろい」と話し、若者が手軽にテンポよくコミュニケーションを取る一方、仲間内で浮いたり、相手に「マウントを取られた」と不快に思われたりしないよう「繊細に言葉を選んでいる」と分析した。

 一方、言葉の数は増えているが「それが言葉の豊かさとは一概に言えない」と指摘。世代や価値観の違う相手とスムーズに関係が築けるよう「TPOに沿った言葉を使いこなす力が重要」とした。

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