大阪万博だけじゃない…鹿児島県新体育館の事業費 基本構想より68億円膨らむ 資材・人件費が高騰、省エネ対応…計画容認の県議会・自民会派も戸惑い

〈資料写真〉鹿児島県が新総合体育館の整備を計画しているドルフィンポート跡地(中央)

 鹿児島県が鹿児島市の鹿児島港本港区ドルフィンポート(DP)跡地に計画する新総合体育館の事業費が県議会で波紋を広げている。基本構想より約68億円増え最大313億円に膨らんだ上に、国の補助金も3億円程度しか活用できないためだ。「規模や場所は適切か」「県民が物価高に苦しむ状況で進めるべきなのか」。計画を容認した最大会派の自民県議には疑問や戸惑いの声もある。

 スポーツ・コンベンションセンター整備課は2024年度一般会計当初予算案を発表した9日、増額幅を約60億円としていたが、その後「厳密に精査した結果」、約68億円に訂正した。

 増額の主な内訳は、建築資材や人件費の高騰33億円、設備の脱炭素や省エネ化対応34億円、金利上昇などで21億円、事業費削減のため初めて取り入れる民間資金を活用した社会資本整備(PFI)手法の必要経費13億円の計101億円。

 一方、PFIでは設計、建設から運営、維持管理までを民間に包括発注する。完成予定の29年度から15年間でPFIなどによる事業費の削減効果が29億円、省エネ効果が4億円の計33億円と算出。差し引き68億円増えると見積もる。

 本港区は鴨池公園のような都市公園区域ではないため、施設整備費に充てられる国の社会資本整備総合交付金は活用できない。国の補助金は3億円程度で、年間約20億円を県費で15年間分割払いすることになる。

 県議会は22年3月の定例会で、DP跡地に新総合体育館を整備する基本構想を承認。この年9月の定例会で整備地見直しなどを求める陳情を自民と無所属1人が不採択とし、計画は事実上容認となった。

 大阪万博の工事費増をはじめ、全国的な傾向から事業費の増加は予想されていた。ただ、ある自民県議は、新体育館の必要性には理解を示しながらも「ここまで事業費が増えるなら、県は別の候補地も基本構想に盛り込むべきだった」と指摘。「地域経済が傷んでいる状況で巨額の箱ものは県民に受け入れられない。税金の使い道は他にもある」と強調する。

 県議会は基本構想を承認した際、「建設コストや維持管理費が県民の大きな負担とならないよう、十分な検討を行い、精査しながら進めること」とする意見を付けた。別の自民県議は「付帯意見との整合性が問われる。状況を踏まえ、もう一度意見を集約すべきではないか」と話す。

 県は資材や人件費、金利上昇は「今後下がる可能性は見込めない」と説明する。複数年度に分けて予算計上する「債務負担行為」を20日開会した3月定例会に提案しており、可決されれば4月に入札を公告する方針だ。県議会の対応に注目が集まる。

〈関連〉鹿児島港本港区の「北ふ頭」、「ドルフィンポート跡地」、「住吉町15番街区」の位置を確認する

© 株式会社南日本新聞社