WEC開幕、王者トヨタはマシンカラーリングを一新して6シーズン連続ダブルタイトル獲得に挑む【2024 WEC プレビュー】

2024年2月29日の世界耐久選手権(WEC)シリーズ開幕に向けて、TOYOTA GAZOO Racing(トヨタ)は、あらためてチーム体制、マシン、カラーリングを紹介するともに、レース直前情報を公開した。

2024年仕様のトヨタGR010 ハイブリッド 2台体制でワークス参戦

WECの2023年シーズンは、激戦が予想される中、王者トヨタが6勝(7号車が4勝、8号車が2勝)をあげ、5シーズン連続となるダブルタイトルを獲得した。ル・マン24時間ではフェラーリに優勝をさらわれたが、結果的に、ポルシェ、フェラーリ、プジョー、キャデラックらの挑戦を退けた。

2024年型トヨタGR010 ハイブリッド。フロントヘッドライトのデザインが大きく変わった。

しかし今シーズンは、新たにアルピーヌ、BMW、ランボルギーニ、イソッタ・フラスキーニが参入、ポルシェ、フェラーリ、プジョー、キャデラックも雪辱を期してマシン開発を進めており、今年は簡単ではないシーズンとなりそうだ、

そんなトヨタは、今シーズンも経験豊富で実績のあるドライバーを揃えた2台体制で参戦。7号車GR010 ハイブリッドは、チーム代表の小林可夢偉とチーム10年目のマイク・コンウェイ、新加入のニック・デ・フリース(2021-22フォーミュラEチャンピオン)がドライブ。8号車GR010 ハイブリッドは、セバスチャン・ブエミ、ブレンドン・ハートレー、平川亮というチャンピオントリオで、3年連続のドライバータイトル獲得に挑む。

【7号車トヨタGR010 ハイブリッド】

■小林可夢偉
「今シーズンのハイパーカークラスの競争は、これまで以上に厳しくなると思っています。好成績を残していくのはより難しくなると思いますが、その分、特別なものになりますし、チームの皆が本当にやる気に満ちています。昨年、我々は世界耐久選手権でチャンピオンを獲得しましたが、ル・マンでは優勝を逃したので、その奪還が今年の最大の目標です。耐久レースでは、成功するには車のパフォーマンスだけでなく、メカニック、エンジニア、ドライバー全員が完璧に機能するチームワークが必要です。激しい競争の中で、我々はさらにハードにプッシュする必要があり、チーム全員による最高のチーム力が必要だと思っています」

■マイク・コンウェイ
「10年というと長いようですが、過ぎてしまえばあっという間でした。様々なレースカーと、様々なチームメイトと共に多くの楽しい時間を過ごし、思い出深いです。毎年楽しかったですが、今年も同じように楽しめるでしょう。我々7号車は昨年4勝を挙げており、今年もそのままの勢いで戦えることを期待しています。ライバルがさらに増え、戦いはさらに厳しくなりますが、我々には勢いがありますし、それを活かしていかなくてはなりません。カタールは誰にとっても初めてのコースなので、力強いパフォーマンスで良いスタートを切りたいと思います

■ニック・デ・フリース
「多くのマニュファクチャラーが参戦し、勢いに乗るWECという素晴らしいシリーズに、トヨタの一員として参加できることは光栄です。最初のレースを戦うのを長い間待ち望んでいたので、とても興奮しています。長い歴史を誇るこのチームの一員として戦う以上、勝利を目指すのは当然ですし、これまでの勢いを活かして初戦のカタールから上位を争えればと思っています。昨年暮れにカタールではテストで走行しており、準備はできていますし、やっとレースが始められることにわくわくしています」

7号車トヨタGR010 ハイブリッドは、新加入のニック・デ・フリース、チーム代表でもある小林可夢偉、チーム10年目のマイク・コンウェイ(左から)の3名がドライブ。

【8号車トヨタGR010 ハイブリッド】

■セバスチャン・ブエミ
「今年はWECのトップカテゴリーにおいて、最多の台数がグリッドに並ぶので、大きなチャレンジになります。我々は車両と組織全体の改善に向けて懸命な努力を続けてきたので、上位を争う自信はありますが、もちろん簡単ではないでしょう。カタールでは去る11月末にテストを行ったおり、フィーリングはわかっています。印象的なコースで、GR010 ハイブリッドで走るのは最高ですし、素晴らしいイベントになるでしょう」

■ブレンドン・ハートレー
「シーズン開幕が本当に楽しみです。ライバル勢はさらに強力になります。予選はこれまで以上に重要になりますし、全てのポイント、全てのオーバーテイク、そして、全てのポジションが重要になります。ミスを犯すことなく、チームと一丸となって、全てのポテンシャルを引き出すべく戦う必要があります。世界チャンピオンの防衛がかかっており、プレッシャーはありますが、豊富な経験を持つ素晴らしいチームですし、挑戦へ向けた準備はできています」 ハイブリッド

■平川亮
「私にとってトヨタでのWEC参戦は3シーズン目となり、チームの一員であるという実感はさらに増しています。世界チャンピオンを2年連続で獲得できたというのは本当に特別なことで、もちろん今年もその防衛が目標ですが、私自身の最大の目標はル・マンでの優勝です。ハイパーカーのライバルが増え、これまで以上に難しい挑戦となりますが、誰もがとても楽しみにしています」

8号車トヨタGR010 ハイブリッドは、昨年同様、セバスチャン・ブエミ、ブレンドン・ハートレー、平川亮(左から)の布陣。

ライバルと一線を画すマットブラックのカラーリングに大変身

2021年のデビュー以来19戦中16勝を挙げているトヨタGR010 ハイブリッドは、今シーズンからカラーリングをマットブラックに一新。マシンレギュレーションに大きな変更はないが、もちろんマシンは進化しており、フロントヘッドライトをLED仕様に変更したほか、車両の各コンポーネントの細かな変更により信頼性を向上させているという。

なお、モータースポーツ参戦を通じてカーボンニュートラルな未来を追求するWECは、今シーズンも100%再生可能なバイオ燃料を使用、レースではタイヤウォーマーを禁止している。

全8戦で戦われるWEC2024年シーズンは、2月29日(木)にカタール・ドーハで開幕、カタールの建国記念日である12月18日にちなんだ1812km(最大10時間)の距離で行われる決勝レースは、3月2日(土)現地時間午前11時にスタートが切られる。

トヨタGR010 ハイブリッド 主要諸元

全長×全幅×全高:4900×2000×1150mm
車重:1040kg
ボディ:カーボンファイバー構造
エンジン:V型6気筒直噴ツインターボ+モーター
排気量:3.5L
最高出力:520kW(707ps)
モーター最高出力:200kW(272ps)
ギアボックス:7速シーケンシャル
駆動方式:4WD(エンジンが後輪、モーターが前輪を駆動。作動条件あり)
バッテリー:ハイパワー型・トヨタ・リチウムイオンバッテリー
フロントモーター/インバーター:アイシン / デンソー製
サスペンション:プッシュロッド式独立懸架ダブルウイッシュボーン(前/後)
スプリング:トーションバー
ブレーキ:アケボノ・モノブロック軽合金キャリパー/ベンチレーテッドディスク
ホイール:レイズ マグネシウム合金(F:12.5x18インチ、R:14x18インチ)
タイヤ:ミシュラン・ラジアル(F:29/71-18、R:34/71-18)

2024年型トヨタGR010 ハイブリッド。3.5L V型6気筒直噴ツインターボエンジンで後輪を駆動、モーターで前輪を駆動する。マットブラックのカラーリングが斬新。

■ハイパーカー主要車両規則

全長は5000mm以下、全幅2000mm以下、全高は1150mm以下で、全面投影面積が1.6m以上であること。最低車重は1040kg。排気量、気筒数等は自由で、ハイブリッドシステムでフロントアクスルを駆動することが規定されている。レースはプロトタイプカーとGTカーが混走する形式で争われ、レギュレーションで各決勝レースの長さは6時間以上と規定される(今シーズン最長は第4戦ル・マンの24時間レース)。

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