日本一混雑するけど大赤字「日暮里・舎人ライナー」沿線には何がある?全駅踏破したら意外なものを発見

東京都は足立、荒川両区を走る「日暮里・舎人(とねり)ライナー」。知る人ぞ知るこのマイナー路線、実は朝ラッシュ時の混雑率が3年連続日本一。にもかかわらず、慢性的な赤字に悩まされています。沿線人口や乗客は年々増え続けているのになぜ赤字なのか?そもそも沿線には何がある?全駅踏破した筆者がその謎に迫ります。

日暮里・舎人(とねり)ライナーとは?

日暮里・舎人ライナーは、2008年に開業した新交通システムです。荒川区の日暮里駅から足立区の見沼代親水公園(みぬまだいしんすいこうえん)駅までの13駅を約20分で結びます。

長らく鉄道空白地帯となっていた足立区西部の足として誕生したこの路線は、開業以降右肩上がりに乗客数を伸ばし、2022年度には1日平均約8万4千人と、開業時の約1.7倍に。沿線開発は続いており、今後も乗客数は増加すると見られています。

国土交通省の発表によると、2022年度 155%、2021年度 144%、2020年度 140%と3年連続日本一の混雑率となっているのです。

日本一混雑するのになぜ赤字?理由は朝のラッシュにあった

乗客数は増え続けているのに赤字の理由。それは朝ラッシュ時の混雑緩和対策と、日中の利用率低迷にありました。

都交通局は混雑を緩和するため、運転本数の増便や車両の買い増し、座席シートの変更などを実施。こうした混雑緩和対策に伴う支出がある一方で、日中の利用率は朝の半分以下。現在も建設費の借金を抱えており、日暮里・舎人ライナーは「火の車」状態なのです。

どれくらい混雑するのか、最も混雑する時間帯(7:40〜8:30)に日暮里駅へ行ってみました。

降車した瞬間から走り出すサラリーマンたち。久しぶりに大人の猛ダッシュを見た気がします。ちなみに、利用率の低い休日の14〜15時は閑散状態でした。

日暮里・舎人ライナー沿線の人気は「住みやすさ」だけ?

日暮里駅近くの不動産屋で沿線について聞き込みして分かったのは「都心部に近いのに家賃相場が低くて住みやすい」ということ。たしかに足立区の人口は増加傾向にあり、特に若い世代の大幅な転入超過が顕著です。

しかし、ここで一つの疑問が。ライナー沿線の人気は本当に「住みやすさ」だけなのでしょうか?住みやすい街ならほかにもたくさんあります。実際、大東建託株式会社が集計した『街の住みここちランキング&住みやすい街ランキング2023』を見ても、足立区はほぼランキング圏外となっており、唯一「物価家賃」ランキングで舎人公園駅が5位に入っているだけの状態です。

「住みやすさ」だけならほかにも候補があるのに、なぜ選ばれるのか?「住みやすさ」以外の魅力を探るべく、日暮里・舎人ライナーを全駅踏破し、沿線に何があるのか調べてみました。

全駅踏破①始点・日暮里〜熊野前駅エリア

最も混雑率が高いこの区間。複数の路線が乗り入れていることもあり、沿線では特に人口の多いエリアです。早速、日暮里駅から探索開始。まず目に入ってきたのが日暮里繊維街です。

日暮里繊維街は、ファッションや手芸などのものづくりに使う材料を販売している商店街です。約90店もの専門店が軒を連ねており、布やボタン、型紙など、取り扱う商品はさまざま。ファッションコンテストなどのイベントも開催されており、荒川区を代表する人気の商店街です。

日暮里繊維街

公式サイト:https://www.nippori-senigai.com/

住所:東京都荒川区東日暮里5-34-8

電話番号:公式サイトで店ごとに確認

営業時間:直接店舗へ確認

3駅目の赤土小学校前(あかどしょうがっこうまえ)駅から歩いて約5分の場所にあるのが、おぐぎんざ商店街です。約300mの商店街には個性的なお買い物スポットが盛りだくさん。下町ならではのレトロな街並みを楽しめます。

おぐぎんざ商店街

公式サイト:https://www.oguginza.com/

住所:東京都荒川区東尾久4-21-9

電話番号:公式サイトで店ごとに確認

営業時間:直接店舗へ確認

4駅目の熊野前駅から歩いて約3分の場所にあるのが、はっぴぃもーる熊野前商店街です。全長約480mの商店街に、約80店舗のお店が集まっています。熊野前駅は荒川都電との乗り換え駅でもあることから、撮り鉄など鉄道ファンもたくさん訪れるのだとか。

はっぴぃもーる熊野前商店街

公式サイト:https://hottami.web.fc2.com/

住所:荒川区東尾久5-17-13

電話番号:公式サイトで店ごとに確認

営業時間:直接店舗へ確認

全駅踏破②足立小台〜江北駅エリア

5駅目の足立小台(あだちおだい)駅は、隅田川と荒川に囲まれているため住宅が少なく、1日の平均乗客数が最も少ない駅です。商店街の多い活気ある雰囲気からガラッと景色が変わりました。

6駅目の扇大橋(おうぎおおはし)駅に到着。荒川を越えると一気に低層住宅が増え、見晴らしが良くなります。駅のホームからスカイツリーも見えました。

景色が変わらないまま7駅目の高野(こうや)駅を通過し、8駅目の江北(こうほく)駅へ。江北駅にはどうやら江北仲通り商店街があるらしい!早速足を運んでみると・・・。

予想以上にシャッター街。何か観光スポット的なものはないか、近くの喫茶店のママに聞いてみました。すると「この辺は公園が多い。3月になると舎人公園の桜がすごいんだよ」と貴重な情報をいただきました。公園を見に、さらに北上します。

全駅踏破③西新井大師西〜終点・見沼代親水公園駅エリア

9駅目は西新井大師西(にしあらいだいしにし)駅です。西新井大師は関東厄除三大師の一つで、厄除けや開運で名高いお寺です。

当駅は西新井大師の最寄りと言いつつ、西新井大師まで徒歩約20分と、最寄駅と言っていいのか微妙なライン。ほかに何かあるはず……。希望を捨てずに北上します。

10駅目は谷在家(やざいけ)駅。今までは駅前にすき家やジョリーパスタなどのチェーン店がありましたが、ついにそれもなくなりました。日暮里の不動産屋は「北上するほど田舎になる」と言っていましたが、やっとそれを実感。いや、この先には公園がある。ママの言葉を信じて公園を探します。

11駅目は舎人公園(とねりこうえん)駅。ついに公園! その名の通り、駅前には広大な舎人公園があります。たくさんの遊具やバーベキュー場などがあり、休日はファミリーで楽しむ人が多いそうです。

舎人公園

公式X(旧Twitter):https://twitter.com/ParksToneri

住所:東京都足立区舎人公園1-1

開園日:常時開園

入園料:無料

12駅目の舎人(とねり)駅までやってきました。江北エリアはまだ沿線にポツポツと高層マンションがありましたが、舎人駅まで来るといよいよそれもなくなってきました。

ついに終点の見沼代親水公園(みぬまだいしんすいこうえん)駅に到着! ここにはその名の通り、駅前に見沼代親水公園があります。

見沼代親水公園(みぬまだいしんすいこうえん)

住所:足立区舎人4-5から古千谷本町4-8まで

たしかにママの言う通り、公園は多かったです。いやしかし、もっとほかに何かあるはず・・・。諦めきれず住宅街を一本入って歩いてみました。すると意外なものを発見。

突然の鬼! 単なるオブジェかと思いましたが、よく見ると滑り台になっていました。子どもは怖くないのでしょうか。テンションが上がりつつ周囲を探索すると、向かいの公園にあるものを発見。

桃太郎の鬼だったのか。それにしても鬼を作ったのなら桃太郎も作ればよかったのに、なぜ桃だけこんな簡素に……。ママが言っていた公園の意味がなんとなくわかってきました。足立区の公園はクリエイティビティが高すぎる。

日暮里・舎人ライナー沿線の人気スポットは「公園」⁉

調べてみると、足立区は23区内でも特に公園が多い地域なのだと分かりました。なかでも、都市公園の総面積は23区中2位。それぞれの公園に個性を持たせようと、区をあげて魅力的な公園作りを目指しているそうです。

そしてさらにわかったのが、足立区は「タコさん滑り台」発祥の地ということ(諸説あり)。タコさん滑り台とは? 沿線のタコさん滑り台について調べてみました。

①見た目がリアルなタコさん滑り台

北鹿浜公園(きたしかはまこうえん)

公式サイト:https://parks.prfj.or.jp/kitashikahama/

住所:東京都足立区鹿浜3-26-1

②タコさんデザインコンテスト優秀賞のタコさん滑り台

上沼田北公園(かみぬまたきたこうえん)

住所:東京都足立区江北7-16-1

③臨時休業中でも遠くから確認できた水色のタコさん滑り台

上沼田東公園(かみぬまたひがしこうえん)

住所:東京都足立区江北6-10-1

④元祖タコさん滑り台

新西新井公園(しんにしあらいこうえん)

住所:東京都足立区西新井5-17-1

⑤ピンクがまぶしいタコさん滑り台

興野ふれあい公園(おきのふれあいこうえん)

住所:東京都足立区興野2-28-34

⑥小さい公園に収まる巨大なタコさん滑り台

扇なかよし公園(おうぎなかよしこうえん)

住所:東京都足立区扇3-9

⑦区内唯一のイカ滑り台

入谷中央公園(いりやちゅうおうこうえん)

住所:東京都足立区入谷4-16-1

沿線に6匹のタコと1匹のイカを発見! 色や形はさまざまで、オリジナリティが爆発していました。足立区内には10匹のタコと1匹のイカがいるそうです。イカが生まれた経緯は不明なのだとか。謎は深まるばかり……。

日暮里・舎人ライナー沿線には大量の公園があった

日暮里・舎人ライナーを全駅踏破した結果、沿線には大量の公園とタコさん滑り台があることがわかりました。(かなりヘビーな旅でした・・・)公園遊具は老朽化により順次整備を行う予定らしく、いつどこのタコがいなくなるかわかりません。

タコさん滑り台の聖地・足立区。全国の公園遊具マニアのみなさま、聖地巡礼するならお早めに。沿線へ転居を検討中のみなさま、沿線にはたくさんのタコがいますよ。

>>足立区「タコさんMAP」

>>足立区「おもしろ遊具MAP」

>>足立区「おもしろ遊具MAP2」

[参考]

三大都市圏の平均混雑率が増加~都市鉄道の混雑率調査結果を公表(令和4年度実績)~|国土交通省

三大都市圏の平均混雑率はおおむね横ばい~都市鉄道の混雑率調査結果を公表(令和3年度実績)~|国土交通省

三大都市圏の平均混雑率は大幅に低下~都市鉄道の混雑率調査結果を公表(令和2年度実績)~|国土交通省

決算|東京都交通局

交通局の概況 日暮里・舎人ライナー|東京都交通局

足立区公式サイト

足立区人口ビジョン(令和3年3月改定)・第2期足立区人口ビジョンを実現する総合戦略|足立区

タコさんのいる公園、おもしろい遊具のある公園|足立区

[All Photos by Kei]

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