「えっ!? 俺でいいの?」AZ菅原由勢に託された大役。責任を伴った発言とプレーに専心「頑張って走って、ピッチでやることをやる」【現地発】

2月25日、エールディビジ第23節でAZは2-0でアヤックスに勝利して4位の座をキープした。5位アヤックスは3位トゥベンテとの勝点が11差まで広がり、来季のCLプレーオフ出場権争いから脱落した。

日本代表の菅原由勢(AZ)は右SBとしてフル出場した。

「アヤックス戦はダービー(ノールト・ホーラント州ダービー)になるから、ファンもそうだし、選手の士気も上がるので、内容より結果が求められる試合だった。まず勝てて良かった」

オランダで5季目を過ごす菅原は、アヤックスと9回リーグ戦で戦い、5勝2分2敗という好結果を残している。これまでドゥシャン・タディッチ(現フェネルバフチェ)、デイリー・ブリント(現ジローナ)、ステフェン・ベルフバイン(アヤックス)といった凄腕たちとサイドで熱い攻防を繰り広げてきた23歳は今回、クロアチア代表のウイングバック、ボルナ・ソサを抑え込んだ。

「疲れました」

アヤックスとの戦いを終えるたびに、この言葉を菅原は口にする。今季のアヤックスは調子が悪く、この日も元気がなかったことは、菅原も「見れば分かるでしょう」と感じている。

それでもアヤックスはアヤックス。「今、オランダリーグで最高のセンターフォワード」と呼ばれているブライアン・ブロビーを、19歳のCBワウター・フースが四苦八苦しながらマークしている姿を間近に見ながら、菅原はソサをマークするために高い位置を取らないといけなかった。

「(今日のアヤックス戦は)頭を使う時間が長ければ長くなるほど疲労は感じるだろうし、身体を動かせば動かすほど身体は疲れるだろうし――という感じですね。 特に後半はボールを持たれたので、頭を使わないとパスを回されるし、(味方CB陣の配置を見ながらの)ポジショニングも難しいところがあったので、 今は身体よりも頭が疲れています」

アジアカップではまさかの不調に見舞われた菅原だったが、前節のフォルトゥナ戦では『デ・テレフラーフ』紙のベスト・イレブンに選出されるほどのパフォーマンスを披露するなど、AZで復調している。

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1月28日の対ヘーレンフェーン戦からAZを率いるマールテン・マルテンス新監督とは2月上旬、カタールから戻ってきてから話し合いを持ち、「チームのロールモデル役を担ってほしい」と言われたという。つまり菅原は「チームの規範」「チームの手本」になることを求められているのだ。

「試合でも練習でも常に先頭に立つ姿勢を見せたり、クオリティを示したりすることを、監督から直接言われました。ピッチ内だけでなく、ピッチ外でも求められることは多いので、期待されていると感じます。それにしっかり応えないといけません。

試合内容も求められますが、結果が全ての世界というのは間違いない。5-0で勝っても1-0で勝っても、勝ちは勝ち。そういうところの認識を持ちながらAZでもやっていかなきゃいけない。

先週は先制されながら逆転勝利に持っていった。そういう勝利に対する執着心、勝つためにプレーするというところは、僕がチームに与えることができること。もちろん、言葉が違う。スタイルも違う。だけどサッカーで勝ちに向かうというところは一緒なので、そこはしっかりやりたいと思います」

「ロールモデルをやってくれ」と言われた時、菅原は「えっ!? 俺でいいの?」と思ったという。しかし、今季前半戦の菅原は「リーダーとしてプレーと言動でチームを引っ張っていきたい」と語っていただけに、菅原の「えっ!? 俺でいいの?」という反応には不意を突かれた。

「『自分はこういう姿勢を持ってやろう』って思ってるのと、監督から『そういう風にやってくれ』って言われたのは、また違いますからね。言われた時には『頑張らなきゃいけないな』と思いました」

改めて菅原は自身を奮い立たせる。

「僕は今日みたいに頑張って走って、ピッチでやることをやる。そうすれば自ずと選手に対して何かを言う時の説得力が増す。ピッチ上のパフォーマンスが伴わないと、自分が発する言葉に意味はない。しっかり責任を伴った発言とプレーをしていくことが大事――自分のチームの中の立場を考えるとそう思います」

取材・文●中田 徹

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