林家たい平「芸人臭いのはダメ。芸人の“香り”がしないと」 名人・古今亭志ん朝から教わった落語家の極意

CD付きマガジンシリーズに昭和初期から平成中期に活躍し、63歳でこの世を去った“不世出の名人噺家” 三代目 古今亭志ん朝の秘蔵音源が収録された。その創刊記念イベントに親交のあった落語家の林家たい平らが登壇。志ん朝から学んだ噺家の極意や思い出を語った。

三代目 古今亭志ん朝(写真:横井洋司)

落語家として駆けだしの前座の頃に志ん朝の寄席を盛り上げていたというたい平は、志ん朝の魅力について、「初めて志ん朝師匠の落語を聴いたのは、大学4年になって落語家になろうと思った時で、こんなすごい落語があるんだ」と衝撃を受けたという。さらに、「出てきただけでものすごい大きな“江戸”という空気をまとって出てくるので、あっという間に客席まで“江戸”という空気に変えてしまう。その持ってくる空気感っていうのが他の師匠にはない圧倒的な力を感じましたね」と別格のオーラを放っていたことを思い返していた。

たい平とともに登壇した落語協会副会長の林家正蔵は、「志ん朝師匠がいなければ落語家になってなかったと思います。うちの父は落語家(初代 林家三平)だったんです。父の芸風はあまり好きじゃなかったんですね。たまたま志ん朝師匠の高座を観て、かっこいいと思いました」と落語家を志すきっかけになったことを明かした。

また、俳優であり落語界にも縁のある毒蝮三太夫は、「積年のライバルというかね、いい競争相手でしたからね。でも今はね、恋敵なんですよ。うちのかみさんがね、志ん朝さんにぞっこんなんだよ。ちょっと時間があると志ん朝さんのビデオをかけてラジオ代わりに聴いてるんですよ。大谷(翔平)の次に志ん朝だっつって、大変な騒ぎなんです」と笑いを交えて語った。

そしてたい平は、志ん朝との思い出について「お寿司屋さんに2人で入って、“芸人臭いのはダメなんだよ。芸人の“香り”がしないとな。このお寿司屋さんは生ものを扱っていても生臭くないだろ?それが良いお寿司屋さんだ。それは芸人にも言えるって先輩から教わった。” そう話してる志ん朝師匠を見ると、ブレザーを着ているわけです。着物を着てるわけでもないのにすごくいい噺家の“香り”がしてくるんですよ」と落語家ならではの粋な教えを語ると、「大阪(の寄席)で満員になるということはその当時なかったんですが、志ん朝師匠の回だけは満員になっていて、楽屋に上方落語の名だたる師匠も来てるし、前座さんのような若手も来てるし、みんな袖から志ん朝の落語を聴いてるんですね」と地域を越えて愛されていたことを明かした。

今でも志ん朝の落語を聴くというたい平。ところが、「落語家として聴いてるんじゃなくて、志ん朝師匠を聴いている時にはファンに戻ってる」と色あせないその魅力に愛情を込めた。

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