「逢坂隧道」9年ぶり通行再開 災害時の国道311号の迂回路にも、和歌山・田辺市

約9年ぶりに通行できるようになった市道近露福定線の「逢坂隧道」(和歌山県田辺市中辺路町で)

 和歌山県田辺市が同市中辺路町の福定―近露間にある市道近露福定線のトンネル「逢坂隧道(ずいどう)」で取り組んでいた大規模な修繕工事が終わり、通行できるようになった。供用再開はおよそ9年ぶり。市は災害時などに国道311号の迂回(うかい)路として利用することを想定している。

 市土木課によると、逢坂隧道は延長555.2メートルで、1945年の完成。中央付近に待避所があるが、幅員は3.5メートルと狭い。現在の国道311号「逢坂トンネル」(延長1402メートル)が90年4月に供用開始されるまで、幹線道路として利用されてきた。

 2014年度、山梨県の笹子トンネル天井板落下事故(12年)を受けた道路法改正に伴って逢坂隧道を点検したところ、トンネル内を覆っているコンクリートに多数のひび割れを確認。「緊急に措置を講ずべき状態」と判定され、15年3月から通行止めにしていた。

 その後、このトンネルの扱いを地元の意見を聞きながら検討。集落間を結ぶ生活道路であるとともに、災害や事故で国道311号が通行止めになった際には迂回路としても活用できることから、大規模な修繕をして利用することを決め、19年秋から工事に取り組んでいた。

 市は当初、21年度末までの完成を目指し、トンネル内部から地山に鉄筋を挿入するなどして補強した上でコンクリートで覆う工事を進めていたが、その途中で崩落が発生。別の対策工事も必要になったため、1月中旬まで事業期間が延びてしまった。

 工事の総事業費は約8億7千万円で、6割近くが国の補助という。

 市土木課は「予定外の崩落などもあって時間がかかったが、無事に再供用できて良かった。万が一、国道311号が使えなくなった時にも迂回路として活用できる」と話している。

逢坂隧道地図

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