社説:「一発勝負」の入試 大学の多様性広げる改革を

 大学入試シーズンのまっただ中、京都、滋賀でも多くの受験生の姿が目に付く。

 近年、国公立大の入試で学力試験を基本にした「一発勝負」の傾向が強まっていることに、疑問を禁じ得ない。社会の多様性が求められる時代にあって、最高学府の選抜には受験生の能力を多角的に評価する道を広げるよう求めたい。

 前期と後期、一部公立大の中期を加えた三つの日程で実施されている国公立大の一般入試2次試験だが、形骸化が著しい。

 1989年に導入された入試の「分離分割方式」は、前・中・後期でそれぞれ1校ずつ出願できる。後期は小論文や面接など多様な観点からの選抜が多いが、前期で合格して入学手続きを完了すると、中・後期の合格対象から除外される。

 成績優秀者をいち早く確保したいという各大学の思惑から、前期の定員を増やす流れが加速してきた。国公立の総合大学で、後期を全廃したのは2007年度の京都大が最初だ。東京大や大阪大も前期に一本化し、24年度入試では前期と後期の定員配分は5対1になっている。

 受験生に負担の大きい一発勝負を避けるため、分離分割方式が掲げた「受験機会の複数化」「評価尺度の多元化」といった理念は、どこにいったのか。

 こうした状況から一律の学力試験でなく、調査書や取得資格、論文、面接など多様な評価手法を用いた「総合型選抜」や「学校推薦型選抜」の存在感が高まっている。

 「それでは基礎学力が保証されにくい」との指摘は古くからあるが、各大学の独自試験や大学入学共通テストを組み合わせることで、一定の学力を担保できるとの認識が主流になっている。手間がかかるのが難とされるが、新型コロナウイルス禍では試験日程の柔軟性やオンライン面接の活用などにより、「一般入試より実施しやすかった」との声も多かったようだ。

 総合型と学校推薦型を合わせた入学定員が全体に占める割合は年々上昇しており、24年度は国立大で20%になった。国立大学協会は30%を目標に掲げる。各大学で蓄積したノウハウをいっそう共有してほしい。

 理工系学部における「女子枠」導入の動きも注目される。

 東京工業大は24年度入試で58人の枠を設け、翌年度には143人に拡大する。現在は13%の女子学生比率を20%以上に高めることを見込む。制度導入は学びや研究の活性化のみならず、社会発信の狙いもあるという。広がりを期待したい。

 今後の大学には科学技術の発展だけでなく、人口減少への対応や国際連帯の必要といった社会ニーズの変化を的確にとらえ、その課題に挑む多彩な人材の育成こそ急務だ。私立も含めた各大学と文部科学省には、旧来の殻を破る入試改革を望む。

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