【リニア】JRとの意見交換で大井川流域市町が「ボーリング調査早期実施」求める…県とJRの議論に影響か

リニア問題をめぐり、大井川流域の市長・町長らがJR東海の社長と意見交換会しました。流域市町が求めたのは、静岡県が反発している「ボーリング調査の早期実施」。今後の県とJR東海との議論に影響を与えることになりそうです。

2月25日、静岡市内のホテルに集まったのは、JR東海の丹羽社長と大井川流域10市町の市長・町長たち。リニア問題をめぐり意見交換会が開かれました。

(JR東海 丹羽社長)

「静岡工区の着手に向けて大きな進展があった。この計画を少しでも早く進めるため、皆様の理解と協力がえられるよう、双方向のコミュニケーションに努めることが何より大切。本日はどうぞよろしくお願いします」

リニア新幹線をめぐっては、トンネル工事に伴う大井川の水量減少や環境への影響を懸念し、県は静岡工区の着工を認めていません。一方で、2023年12月には、工事で県外に流出した水を大井川に戻す策である「田代ダム案」について、JR東海がダムを管理する東京電力側と基本合意。また、国の有識者会議がトンネル工事に伴う南アルプスの環境保全について、報告書をまとめるなど進展も見られています。

25日、冒頭を除き非公開で行われた意見交換会。JR東海は、基本合意した「田代ダム案」や南アルプスの環境保全策について進捗状況を報告しました。一方、流域市町がJR東海に強く求めたのが…、

(島田市 染谷市長)

「ボーリング調査について、早く着実に進めてほしい。流域市町の総意です」

工事区間の地質や地下水について調べるため、先端が直径12センチの穴を掘る「ボーリング調査」を早く実施するよう求めたのです。ボーリング調査は、山梨県から静岡県境に向けて行なわれますが、県は県境付近にある「もろい地質」が山梨側とつながっていて、穴を掘れば「水が流れ出る可能性がある」と指摘。県境300メートル以内の調査はしないよう求めています。

これに対し、静岡市の難波市長は、2023年6月、大根などを用いて「ボーリング調査によって、水が湧き出る現象」について説明し「調査での水の流出は少なく、県境まで行っても問題ない」と主張していました。

(静岡市 難波市長)

「ボーリング抗は断面積小さいので、引っ張るといっても大した量を引っ張ってこない。断層破砕帯のように水が供給されない場合は、ほとんど問題にならない」

調査が進まない現状に痺れを切らしたのか「早期実施」を求めた流域市町。田代ダムは2月から改修工事に入り、大井川から山梨県側に取水されなくなることから、例年より水量が保たれる2025年11月までの工事期間内にボーリング調査を実施すべきとの見解を示しました。

(島田市 染谷市長)

「県はボーリング調査で流れてしまう水は測量して、その量を戻すように言っている。来年11月までの間、全く水を取水しないのであれば、ボーリング調査をやって流れてしまう水があるとしても、それ以上の水が大井川に戻っているのであれば、後で返す必要はない」

(JR東海 丹羽社長)

「ボーリング調査についての意見もたくさん頂戴した。これについては、地域の人々の懸念がまだまだある。懸念を早く払しょくするためにも、ボーリング調査を静岡県内でやることは大変重要なこと」

一方、26日の会見で川勝知事は、流域市町が総意として、ボーリング調査の早期実施を求めたことについて「流域市町の意見を確認したい」と話しました。

(静岡県 川勝知事)

「利水協議会に入っているのは10市町ありますので、一つ一つ確かめる必要がある。不透明なところを事務局から首長と関係者に聞き取りをしている」

その上で、今後ボーリング調査を認めるかについては、国が設置を予定しているモニタリングの有識者会議での議論を待ちたいとしました。

(静岡県 川勝知事)

「(ボーリング調査で)どのくらいの水が出るかは、調査しないと分からない。その水について、どういうふうにするのかは客観的なデータが必要。モニタリング委員会、お目付け役委員会、最初の仕事がボーリング調査になるのでは」

国が示した「モニタリングの有識者会議」はJRが行う環境保全策の監視を趣旨としていて、ボーリング調査について議論されるかは不透明ですが、川勝知事はまたも独自の解釈で持論を展開しました。今後、ボーリング調査をめぐる動きがリニア問題の焦点の1つとなっていきそうです。

© 株式会社静岡第一テレビ