【インタビュー】エクリプス「日本は一番好きな国なんだよ。人も食べ物も全てね」

エリック・モーテンソン(Vo, G)率いるスウェーデンのメロディック・ハードロックバンド、エクリプスが約1年半ぶりとなる4度目の来日公演を行った。前回の2022年はコロナ禍により長く延期されていた来日公演が実現し、制限下にもかからわらず熱い夜となった記憶も新しい。エリックは様々なバンドのプロデュースやプロジェクトでも名を馳せ、エクリプス自体も勢力的な活動により近年は海外での人気も一層高くなっている。

そんな順調な中でも彼らはいつも日本を特別に思ってくれており、ジャパンツアー初日の東京公演前にバンドの中心人物であるエリック・モーテンソン(Vo, G)とマグナス・ヘンリクソン(G)との話でもそれが伝わった。

──前回から1年半というスピード再来日になりました。日本を楽しんでいますか?

マグナス・ヘンリクソン:最高さ、楽しいよ。

エリック・モーテンソン:4回目だよね、一番好きな国なんだよ。人も食べ物も全てね。

──それは嬉しいです、ありがとうございます。

エリック・モーテンソン:マジだよ。

──実は昨年2023年のアメリカの<Monsters Of Rock Cruise>フェスでもお会いしましたね。正直、アメリカでの反響が大きくて大人気で驚きました。ご自身ではいかがでした?

エリック・モーテンソン:そうそう、素晴らしかったよね。あのクルーズには僕らがもともと好きなバンドもたくさん出ていたけど、彼らより僕らの方が集客凄かったもんね。本当に嬉しいよ。

──アメリカで欧州バンドってなかなか観られないので手応えもあったと思いますし、アメリカ進出も考えていますか?

マグナス・ヘンリクソン:それは微妙だなぁ。距離もあるし大きな国だからね。それに一番の問題はビザなんだ。これが本当に大変でね。

エリック・モーテンソン:お金もかかるし時間もかかる。申請から6ヶ月から7ヶ月くらいかかって、その末にまだわからないとかね。クルーズに出られたのは、船上だからビザが要らないんだ。だから欧州のバンドもたくさん出られるんだよ。僕らもビザがおりなくてフェスをふたつキャンセルした事もある。そういう意味でアメリカって凄く難しいんだ。だったらむしろ日本に来るよ(笑)。

──トリートのギタリストとしてマグナスがフル参加したのも驚きでした。トリートのアンダース(G)が参加できなかったのはビザの問題ではないという事なんですね。

マグナス・ヘンリクソン:うん、彼はワクチン接種していなかったんだよ。だから飛行機にも乗れなくて。僕は以前にジェイミー(トリート/Dr)とプレイした事もあったし、トリートの大ファンでもあるからとても光栄だったよ。

──どのくらい練習されました?

マグナス・ヘンリクソン:個人練習はしっかりやったよ。バンドと合わせたのは1回のみ。

──とてもレアなトリートで良かったですよ。

マグナス・ヘンリクソン:2回目のプールステージが雨でキャンセルになってしまったから、残念ながら1回しかプレイできなかったけどね。

──そうでした。ずっと開始を待っていたんですけど。

エリック・モーテンソン:全ての機材がパーになったよ。とても高くつくギグだ(笑)。大きな出費になったよね。

──さっきも仰ってましたが、もともとお好きなバンドがたくさん出ているフェスでしたから、個人的に楽しんだライブはありましたか?

エリック・モーテンソン:もう全てだよ。でも特に言えば、D.A.D.さ。

マグナス・ヘンリクソン:D.A.D.!

エリック・モーテンソン:あとハードコア・スーパースターだね。D.A.D.は子供の頃からずっと好きで、初めてメンバーにも会えて話す事もできたんだ。

──ハードコア・スーパースターもドラムがヘルプでクレイジー・リックスのジョエルでしたね。北欧の人脈と言いますか、コネクションで上手く成り立っているんですね。

エリック・モーテンソン:うん、そうだよ。お互いに助け合って上手くやれている。ハードコア・スーパースターのドラマーは体調不良での不参加だったけど、先週だったかな?正式に脱退したみたいだ。

──そうなんですか?それは最新ニュースです。

エリック・モーテンソン:そうなるね。たしか今年のクルーズはもう来週くらいからだよね?僕は日本の後、スキー旅行が決まっていたし断ったんだ。

──今年のオファーもあったのですか?

エリック・モーテンソン:うん、そうさ。でも休暇の方が先にブッキングしていたし、それは外せない(笑)。日本から直接フランスに行ってスキーだよ。

──休暇も楽しんで下さい。他にもツアーは、マイ・ケミカル・ロマンスともありましたね。

エリック・モーテンソン:彼らはもともと大好きなバンドだからオファーが来たときは夢のようだったよ。絶対にイエスさ。ただいつもの客層とは違うからどうかな?とも思っていた。

マグナス・ヘンリクソン:うん、全然違う客層だったよね。たくさん若い女の子たちも来ていて、普段は年齢層が高い男ばかりだからさ(笑)。だから凄く新鮮だったよね。

エリック・モーテンソン:そんな若い女の子たちにウケるわけないよな、と思ってやってみたらわりとウケたんだよ。そこから僕らのファンになってくれた子たちもいて嬉しいよね。ハードロックのファンはこの手の音楽しか聴かないところもあるけど、マイ・ケミカル・ロマンスのファンは幅広く受け入れてくれたんだ。

──モトリー・クルーとデフ・レパードとの北欧ツアーの方はいかがでした?

エリック・モーテンソン:彼らも大好きなバンドだから光栄なのはもちろんだけど、全てが大きいバンドだからあまり交えないのはあるかな。同格なバンドならすぐにファミリーみたいになれるんだけど、彼らは大き過ぎる。

マグナス・ヘンリクソン:そうなんだよ。会う事もままならないし、スタッフも全て素晴らしいけど、せいぜい一緒に写真を撮って終わりくらいだよね。

エリック・モーテンソン:だから楽しさで言えば同格くらいのバンドの方が和気あいあいだよね。僕らはいつも通りのショウをやるし、ナーバスになるのもいつもなるし、それは同じなんだよ。でも観に来る人たちもいつもより大勢なわけで、その人たちをしばしお借りするような感じ。そこで自分たちの良さを証明してやろうって気持ちで臨むんだ。

──では、ニューアルバム『MEGALOMANIUM』についてもお聞かせ下さい。またエクリプス独特のタイトルの付け方ですね。

エリック・モーテンソン:妄想の"MEGALOMANIA"に僕らっぽく"UM"を付けてみたよ。特別な意味はないんだけど、造語にしてみたんだ。

──もともと1980年代の良きサウンドとモダンな要素の融合がエクリプスサウンドですが、今回もまた新しい要素がありますね。

エリック・モーテンソン:確かにまたちょっと違うよね。それは僕らが色々な音楽を聴いているからだし、これまでとは違う新鮮なものを作りたい気持ちもあるからだ。もちろん、エクリプスらしさはちゃんとあるものにしたいし、でも少し変わると自分たちもやっていて楽しいんだよ。

──コンスタントな制作をするには、先程のような色々なバンドとのツアーでの刺激もありますか?

マグナス・ヘンリクソン:ケースバイケースかな。

エリック・モーテンソン:マイ・ケミカル・ロマンスの場合は影響もあったけど、大物バンドだともともと大ファンだから今更ってのもあるかな。

マグナス・ヘンリクソン:大物バンドはもう僕らのDNAに組み込まれているんだよ(笑)。

エリック・モーテンソン:ただ、他のバンドのライブを観るというのはツアーではなくても、普通に観に行くだけでも必ず何か新しい発見があるよ。2023年のH.E.A.Tとのツアーはお互いが切磋琢磨してイイ感じに刺激し合って良かったな。

──今回のレコーディングでは何か新しい試みはありましたか?

エリック・モーテンソン:機材だとね、新しいギターと新しいアンプを使ったんだ。マーシャルSL-X JCM900とメサ・ブギTriple RectifierをスウェーデンのHermansson Amplificationでカスタムして貰ったんだよ。ギターはギブソンのエクスプローラーをかなりたくさん使っている、今夜のショウでも使うよ。

──そうなんですか。ホワイトファルコンのイメージが強いのでそれは楽しみです。

エリック・モーテンソン:今回はそのイメージとは違うよ(笑)。

マグナス・ヘンリクソン:日本に持ってくるには大きいんだよな(笑)。

エリック・モーテンソン:そして今日買ったばかりのB.C.リッチも使うんだ。モッキンバードだよ。すぐESPに駆け込んで使えるようにしてもらったよ。

──マグナスも昨日、ギターを購入されていましたよね?

マグナス・ヘンリクソン:これだよ。(インタビュー中も手にしていたギター)シャーベルの新しいモデルなんだ。買うつもりはなかったんだけど、エリックが見つけて「マグナス、これお前のだろ?」って(笑)。

エリック・モーテンソン:見つけちゃったよな(笑)。

──マグナスも今夜、その新しいギターを使うんですか?

マグナス・ヘンリクソン:そうさ、初だよ。

──B.C.リッチにシャーベルとは80sですね。

エリック・モーテンソン:そうでしょ?ギブソンやフェンダーもいいけど、みんな使ってるし、ちょっと違う方がいいじゃない?

──楽しみです。そして今作はベースのヴィクターが楽曲も共作、歌も歌われてますね。

エリック・モーテンソン:「High Road」はヴィクターが持ってきた曲で、彼がデモを歌っていたからそのまま歌ったらどうかなと思ってね。彼は僕の作る歌メロは歌いにくいし、僕もヴィクターの歌メロはそうなんだ。でも結局、上手く分けてサビは僕で他はヴィクターにしたんだよ。

──エリックはもともとギタリストでしたし、ギターヴォーカルって大変なので、もっと歌って欲しいですかね?(笑)。

エリック・モーテンソン:そうなんだよ、セットの半分を彼が歌ってくれたらこんなに楽なことはないよ(笑)。僕はギターだけでも全然いいんだよ、それが一番楽しいし。

──やっぱりギターが一番お好きなんですね。

エリック・モーテンソン:うん、昔からずっとそうだよ。一番歌が上手かったからこうなってしまったけど、決してやりたかったわけじゃないんだ。他のメンバーが下手なんだ(笑)。最初はシンガーを探してたんだよ。でも、『Bleed & Scream』の頃にはもうこれでいいかなって(笑)。

──『Bleed & Scream』はターニングポイント的な作品だと思うんですが、これまでの中で他にもそういう作品はありますか?

マグナス・ヘンリクソン:『Bleed & Scream』は独自のサウンドを見つけたアルバムだよね。

エリック・モーテンソン:これが転機になったのは間違いない。あとは、『Paradigm』かな。ここから商業的な成功が出来たよ、特に欧州では。

マグナス・ヘンリクソン:『Viva La VicTOURia』はドイツでは一番売れたかな。その後、コロナ禍になってしまったけど。

エリック・モーテンソン:どれも好きだし、どれもエクリプスなんだけど、『Bleed & Scream』から『Paradigm』までは何となく似たような作品だった。『Paradigm』以降、色々なものに挑戦したし、ロックンロールもあるし色々なものから影響も受けて幅広くやってみたよ。AC/DCは大好きだけど、毎回同じものは作りたくないし、常に進化していたいんだ。

──今後の目標やご予定はありますか?

エリック・モーテンソン:まず目標は好きな事をやり続けて、素晴らしいアルバムを作ること。それをみんなが気に入ってくれたら嬉しいね。

マグナス・ヘンリクソン:4月の下旬には初めての南米ツアーがあるんだ。

エリック・モーテンソン:その後、スウェーデンに戻って欧州のツアーとフェスの予定があって、実は北米ツアーも予定しているんだ。さっきの通り、まだビザ申請中で確定ではないけどね。でも何より僕らは日本に来れて本当に嬉しかったし、この美しい国には何度も戻って来たいと思っているよ。

マグナス・ヘンリクソン:うん、またすぐに戻りたいし、プレイしたいよ。

取材・文◎ Sweeet Rock / Aki
写真◎ Yuki Kuroyanagi

<Eclipse ~ MEGALOMANIUM JAPAN TOUR 2024~>

2024.2.19 Shibuya WWW
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