伊藤万理華、『パーセント』でNHKドラマ初主演 「少しの感情も逃さずに向き合った作品」

伊藤万理華が主演を務めるNHK土曜ドラマ『パーセント』が、5月11日からNHK総合・BSP4Kにて放送されることが決定した。

本作は、ローカルテレビ局「Pテレ」を舞台に、「新しい時代のドラマ」を作るため白羽の矢を立てられた新人女性プロデューサーと、俳優を目指す車椅子の高校生が、お互いの存在に力をもらって、少しずつ前に進んでいく人間ドラマ。

伊藤が演じるのは、「障害のある俳優を起用する」という局の方針に悩みながらも向き合う、若手プロデューサー・未来。そして未来と出会い、ドラマ出演に挑戦する高校生・ハルを、オーディションで抜擢された和合由依が演じる。伊藤はNHKドラマ初主演、和合は本作がテレビドラマ初出演となる。

本企画は、「テレビ局が『多様性』にしっかりと向き合えているのだろうか」に対する疑問から始まった。本作のために開催されたオーディションは、「障害のある俳優」を排除することなく起用したいという思いから年齢・性別などの枠を設けられずに実施された。制作陣は、オーディションで100名以上の俳優と出会い、魅力あふれる表現者たちを目の当たりにして、「出演者に障害者を起用する%を増やすこと」の意味を改めて考えたという。『パーセント』は、そんな制作陣の気づきや、障害のある方への取材で得たエピソードが反映された実録ドラマとなる。

脚本は、劇団「うさぎストライプ」を結成し、全ての作品で作・演出を務め、NHK特集ドラマ『いないかもしれない』、NHK土曜ドラマ『エンディングカット』などを手がけた大池容子が担当。制作統括を『カムカムエヴリバディ』の櫻井賢と安達もじりが担当する。

プロデューサーを務める南野彩子は、「数年前、私は1人の俳優の履歴書を前に頭を抱えていました。その俳優は車椅子に乗っていました。私は思わず、『障害のある人って、撮影現場にお迎えできるんだっけ……』そんなことを考えてしまいました。私のその偏見こそ、彼のような俳優の活躍の場を狭めてきたんじゃないか。そんな思いから、障害のある俳優さんたちを拒むことのない撮影現場を作りたいと、企画を出しました」と本作の制作経緯を明かしている。

コメント
●伊藤万理華(吉澤未来役)
人との距離感に境界線がなくなればいいのに。
数年前から、物創りを通して考えていたタイミングで『パーセント』のお話をいただきました。
最初は好奇心と恐れで意気込み過ぎていましたが、それは杞憂でした。
ハルを演じたユイちゃんのまなざしに何度も胸を打たれ、引っ張られました。
頑なにならずもっとシンプルに、素直に対“人”、対“あなた”に精一杯言葉を尽くす。
ずっと大切にしてきたことを未来と重ねながら、少しの感情も逃さずに向き合った作品です。
ハルと未来の新鮮な煌めきが『パーセント』に詰まっています。
未来として『パーセント』を作ることができ幸せです!

●和合由依(宮島ハル役)
宮島ハルに出会って、私はこれからを生きていくための力をもらえた気がします。
「自分を生きる」ってとても難しい。 何かにもがいてはまた1 からスタートして、その度に自問自答を繰り返して、自分を見つめ直す。
人生ってそう簡単に進まない。 だからこそ人は生きれば生きるほど強くなる。
この作品を通して、宮島ハルを演じて、私は「生きる」ということについて考え直しました。
日々成長していくハルと一緒に私も成長できた気がします。
泥臭い部分を持ちながらも一つ一つの出来事と向き合って一生懸命に生きる彼女の姿ものぞきながら、このドラマが誰かにとって“明日も頑張ろう“と思える、背中を押してくれる作品となりましたら幸いです。

●大池容子(脚本)
『パーセント』を書くにあたって、プロデューサーの南野さんをはじめとするチームの皆さんと、一年以上、会議や取材を重ねてきました。その中で知ったこと、感じたこと、そして障害のある俳優の皆さんと出会い、「この人たちと作品をつくりたい!」という気持ちが湧き上がってきたことを、主人公・未来の視点を通してふんだんに、正直に台詞の中に盛り込みました。アットホームな撮影現場で、スタッフさん、キャストさんが真摯(しんし)に試行錯誤を重ねて、その思いを具現化してくださいました。ドラマの現場、あるいは世間一般で常識や普通とされているものを疑うような投げかけができればなあ、と思っています。

●南野彩子(制作/プロデューサー)
数年前、私は1人の俳優の履歴書を前に頭を抱えていました。その俳優は車椅子に乗っていました。私は思わず、「障害のある人って、撮影現場にお迎えできるんだっけ……」そんなことを考えてしまいました。私のその偏見こそ、彼のような俳優の活躍の場を狭めてきたんじゃないか。そんな思いから、障害のある俳優さんたちを拒むことのない撮影現場を作りたいと、企画を出しました。
けれど、撮影の準備を進める中で、何度も「これでいいんだろうか」と立ち止まってしまいました。例えば、障害のある俳優を起用するためオーディションを開催しようとすると、募集要項が書けないんです。「多様性のために」とか「こんな時代だから」とか言葉を並べるほど、なんだかきれい事を言いたくて人を利用しているような感覚になりました。「障害があるから」という理由で人を選ぼうとしている時点で何か間違っているんじゃないか。そもそもなぜ、障害者と健常者って線を引いているんだっけ……。「あなた」と「わたし」、ただ1対1の関係を築きたいのに、それを阻むものはなんだろう。考えれば考えるほど、自分がどう他者と向き合ったらいいかわからなくなってしまいました。
それを業界の話にとどめず、人が人と出会う尊さ、関係を築く難しさ、それでも対話することの大切さ……いまを生きる生身の人間の物語として、作り上げてくれたのが、脚本の大池容子さんです。そして主人公・未来を演じるのは伊藤万理華さん。未来は様々なモヤモヤを抱えてもがき続ける人物なのですが、そんな未来の気持ちを全身全霊で表現してくれました。さらに、未来に大きな影響を与える人物・ハルを演じるのは、ドラマ初出演の和合由依さんです。彼女の芝居をオーディションで見たとき、「この人と一緒にドラマを作りたい!!」と、心が震えました。未来とハル、2人の出会いから生まれた様々な感情を、是非お楽しみいただけたら幸いです。

(文=リアルサウンド編集部)

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