「友達以上恋人未満」だから口にできないこと【男友達の決意】

彼氏ではないけれど、単純に友達とも言えないような深さの関わり方をしている男性。

そんな状態でももちろんOKだけど、たとえば「これってどうなの?」とふたりの関係に違和感を覚えるときは、環境を変えたい心のサインです。

「友達以上恋人未満」の状況は、枠にはまっていないつながりだからこそいろいろな選択肢があります。

恋愛関係を求めるかはっきりと「友達」と置くか、ある女性はどんな決断をしたのでしょうか。

「友達以上恋人未満」の関係を変えたくなるとき

26歳のある女性は、「ふたりきりで食事に行くしお互いの部屋にも遊びに行くし、周りからはよく恋人同士と間違われる」ような男友達がいました。

ふたりに肉体関係はなく、手をつなぐこともハグもしないといいますが、「ふたりきりで過ごすことに疑問を持たない」状態に満足していたそうです。

一方で、恋愛の話になるとちょっと気まずい空気が流れるのが女性は苦手で、それは「お互いに今の状態がそれに近いものと自覚があるから」と分析していました。

この「気まずさ」が女性にはだんだんと重くなり、当たり前のように男友達のクルマの助手席に乗る自分の立場を考えたといいます。

「これが友達以上恋人未満っていう状態なのだなと思いました。

彼に対して恋愛の意味で好きとは思わないのですが、人としては同性の友人より信用しているところがあって、頼っているというか甘えている自分がいましたね」

そう振り返りながら、夜中まで何時間も電話で悩みを相談している自分に違和感を覚えた女性は、男友達との関係を変えようと決意しました。

はたから見れば安定しているし、ふたりにとっても落ち着いたつながりといえる今の関係に変化を考えたのは、「恋愛をしたい自分」に気がついたからです。

「彼と一緒にいないとき、ふと彼氏がほしいなって思うときがあって。

ちゃんと甘えられるというか、恋愛感情があってスキンシップも堂々と楽しめる人がほしいって思いました。

でも、彼と一緒だと彼氏と思われるから出会いもなくて、このままじゃ自分は恋愛ができないかもと不安になりましたね」

そんな彼女は、男友達との関係を変えるためにどんな選択をしたのでしょうか。

思い通りにいかない「距離感の作り方」

「その男友達を好きになる可能性はないのですか」と尋ねると、女性は少し考えたあとで「難しいですね」と答えました。

その男性と今のような感じになって一年あまり、ふたりきりでいるときも特に性的な欲が出る雰囲気にはならず、一線を引いた接し方が当たり前で、でも何時間でも一緒にいられるような状態は、女性にとって「今さら恋愛対象にするのはお互いに無理では」という気持ちがありました。

そこできっぱりと「この人じゃダメ」と付き合い方を変えるやり方もありますが、いきなり突き放すような態度はふたりの間にネガティブな感情の溝を生む可能性があり、互いに不安にならない距離感を作ることを考えます。

女性がこの男友達に「甘えている」と感じること、いつも彼のクルマで迎えに来てもらうことや週末の長電話など、心の近さがある関わり方を少しずつ減らしていきました。

「仕事が忙しくなって、と彼には話していました。

そこで気がついたのが、私のほうからお出かけとか誘うのが多かったなってことで、声をかけなければ彼からの接触も減るだろうと思ったのですが……」

女性にとって予想外だったのは、距離を取ろうと連絡を控えたら男友達のほうから「仕事は順調?」「根を詰めるなよ」と気遣うメッセージが増えたことで、LINEでのやり取りが変わってきたことです。

「この人と別の男性と恋愛がしたいから離れたい」と思う女性の意に反して、男友達のほうはこれまでの距離感を崩さないまま自分の存在を伝えてくるのですね。

少しずつ接触を減らせば男友達はそれを受け入れるだろうと思っていた女性は、久しぶりの食事の誘いを断ることに罪悪感を覚えながら、男友達との今後について悩みました。

「友達以上恋人未満」だから口にできないこと

「結局、私も彼と話したくなって、会っていました。

前のようにドライブはやめて、ご飯を食べたらそこで解散していました。

電話は避けましたね、いつも長くなるし会っているときより気楽になれるのでいろいろ言ってしまうので」

女性なりに男友達への接し方を考え、「周りから恋人関係と勘違いされる」ような関わりはしないと決めていました。

そんな女性を見て、男友達のほうも自分と距離を取りたがっているとやっと感じたのか、一ヶ月くらいすると食事の誘いはなくなったそうです。

鳴らなくなったスマートフォンを気にする時間は増えたけれど、男友達の気配が薄らぐことで女性は「ひとりの自分」を実感し、改めて恋愛について考えることができたといいます。

「いつもそばにいるとそれが当たり前になって、いなくなったときのこととか今後のこととか、想像ができないのですね。

彼と明らかに距離ができたなと感じたとき、寂しかったけど私には必要なことだと思いました」

そう話す女性の胸に同時に浮かんだのは、こうやって深いつながりが消えていくとき、その理由を説明できないもどかしさでした。

ただの男友達とは言い切れないような心の距離があって、でも恋人のように立場のはっきりした関係でない以上は、離れるときに「あなたではない人と恋愛がしたいから」とはわざわざ口にできず、そんな自分が不誠実ではないかと葛藤があったといいます。

「友達以上恋人未満」だからこそ、ふたりの状態を変えることにも「曖昧でも当然」のような空気があり、「その変化を望んだのは自分だけ」という後ろめたさが女性を苦しめていました。

置いてけぼりにされる男友達の気持ちを想像すれば「胸が苦しく」、でも今まで通りではいられない自分の気持ちも無視できず、この時間が一番つらかったと女性は振り返ります。

男友達の「決意」

そんなふたりの状況がどうなったのか、結末は女性の想像とはまったく違うものでした。

あるとき男友達から「会ってほしい」とメッセージをもらった女性は、待ち合わせに指定されたカフェに向かいます。

以前ならどちらかの部屋に足を向けたり彼が迎えに来てくれたりするのが普通だったけど、今は会う時間からきっぱりと約束をして外の場所で落ち合うような流れに、女性は寂しさを感じたといいます。

そして、「この状況でこの人から話があるとすれば、今のふたりのことだろうな」という暗い予感も、彼女にはありました。

自分が離れたことを責められるだろうと思っていた女性は、テーブル席で向かい合って座った男性から

「友達をやめないでほしい」

と言われたとき、男友達の「寂しさ」を強く受け取ったといいます。

このときも、「自分たちの関係には曖昧さがつきまとう」ことを実感した女性は、自分が距離を置いた理由を尋ねるのではなく「それを超えて」友達としてのつながりを求める男友達の姿に、はっきりとある思いを感じました。

それは、「恋愛の対象になるかどうかに関係なく、この人を大切にしたい」という友情でした。

「友情だったのですか」と尋ねると、女性は無言でうなずいてから

「恋愛の好きではなかったです。それは確かです。

あの人が友達と言ったからではなくて、この人とのつながりは友情なのだと自分ではっきり思いました」

と力強い声で答えました。

離れる決断をした自分に向けて、先に「友達」という枠を用意したのは男性のほうです。

それに乗っかるのではなく「自分もそれがいい」と思ったのは、今まで形にならなかったふたりのつながりに初めて人としての純粋な情愛を実感した瞬間でした。

「友達でいたいよ」

と彼女は男友達に返し、その日は久しぶりにお互いの近況を伝えあう楽しい時間を過ごしたそうです。

男友達の「決意」は、彼女にとって歓迎したいと思える気持ちでした。

関係はふたりで築いていくもの

それからは、以前のような密度のある付き合い方に戻るのではなく、会ったり電話したりする頻度は減ったけれど「お互いに恋愛を意識しない関わり方」ができているといいます。

「友達以上恋人未満」の状態から「友達」とふたりで納得する形を得たことで、心の距離を居心地の悪いものにすることなく受け入れることができているそうです。

「周りの友人たちにも私たちの変化は伝わったというか、前みたいに冷やかされることがなくなりました。

他人から見て『ベタベタしてるよね』と言われるような距離は、やっぱりおかしかったのだなと思います。

今はみんなとの集まりにも別々に行くのが当たり前になって、彼の好意に甘えることはやめました」

落ち着いた声でそう話す女性は、この男友達との付き合いとは別に、恋愛関係に発展できる男性との出会いを求めてがんばっています。

どんなつながりでも、人との関係はひとりで完結するものではありません。

自分とは違う他人との関わりは、「関係を続けたい」というそれぞれの前向きな意思があってこそ健全な絆が育つのだと実感します。

今回のケースは、先に変化を見せたのは女性の側であり、それを受けて男性のほうは「友達でいる」という決断を持ちました。

どちらにも「適切な距離を持って関係を続けたい」気持ちがあって、それを伝えられたのが、縁が切れなかった理由なのだと感じます。

関係はふたりで築いていくもので、お互いの在り方を受け入れる器は自分で作るのが正解。

ふたりの今後がどうなるのであっても、尊重を忘れない姿勢が人としての情愛を失わない秘訣なのだと思いました。

「友達以上恋人未満」の関係に違和感を覚えるとき、相手を否定するのではなく「新しい受け入れ方」を用意できると、ふたりの関係は前向きに育っていきます。

男女であれば恋愛の可能性をどうしても避けられないものですが、それ以外の選択肢も、ふたりで用意できること。

相手に向ける信頼と尊重は、自分の心も大切にする重要な姿勢です。

(mimot.(ミモット)/ 弘田 香)

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