スイスのメディアが報じた日本のニュース

日経平均株価は22日、バブル崩壊前の最高値を更新 (Keystone)

スイスの主要報道機関が先週(2月19日〜25日)伝えた日本関連のニュースから、4件をピックアップ。要約して紹介します。 【スイスで報道されたトピック】 この中から今回は①日経平均が過去最高値更新②日朝首脳会談への期待を与える北朝鮮③日韓、歴史問題めぐる緊張再燃をご紹介します。 バブルなき株高 株式市場で22日、日経平均株価の終値が3万9098円68銭に達し、1989年以来34年ぶりに最高値を更新しました。フランス語圏の日刊紙ル・タンは「東京証券取引所は、1990年代初頭の投機バブル崩壊からようやく完全に回復した」と解説しました。 仏AFP通信やスイス通信Keystone-SDAを基にした同記事は、長引く円安で「外国人投資家にとって日本株は割安に映り、日本の輸出型産業の業績を水増しする」と説明。景気が低迷する中国を代替する投資先となり、米著名投資家のウォーレン・バフェット氏が日本商社などに投資していることも呼び水となっていると報じました。 新たなバブルの懸念もなく、「現在の日本経済は依然として脆弱であり、消費者は円安と相まってインフレに苦しんでいる」として、日銀はインフレ目標の達成に自信を深めていると結びました。 ドイツ語圏の日刊紙NZZは株高の要因を①円安②コーポレートガバナンス改革③新少額投資非課税制度(NISA)始動の3つで説明。「最大の破壊要因は日銀だ」として、緩和縮小で金利が上昇するリスクに触れながらも、やはり投機バブルの可能性は低いと解説しました。(出典:ル・タン/フランス語、NZZ/ドイツ語) 接近する日朝 北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)総書記と岸田文雄首相との首脳会談の可能性を示唆する妹・金与正(キムヨジョン)氏の談話が報じられました。NZZは20日、北朝鮮に接近したい岸田氏と、それに応じようとする北朝鮮の思惑を解説するマルティン・ケリング特派員の記事を掲載しました。 「岸田氏は外務相としての4年間で、核武装した隣国・北朝鮮をめぐる重要な多国間交渉において、日本がいかに孤立しているかを目の当たりにした」。ケリング氏は岸田氏が日朝会談に前向きな理由をこう説明します。 北朝鮮側の思惑として、独フリードリヒ・ナウマン財団韓国支部の北朝鮮専門家、フレデリック・シュポーア氏は「日韓米の三国同盟にくさびを打ち込む」狙いがあるとコメント。北朝鮮に対して強硬姿勢をとる韓国政府を弱体化させようとしている可能性があると言います。また日本政府が日本在住の北朝鮮人からの送金を解禁することも期待しているのではないかと読み解きました。(出典:NZZ/ドイツ語) 再燃する日韓 元徴用工訴訟で日立造船が韓国裁判所に預けた供託金が原告側に支給された件をめぐり、日本政府は21日、韓国の尹徳敏駐日大使を外務省に呼び厳重抗議しました。これを解説する仏AFP通信の記事が日刊紙ル・マタンや無料紙20min.などフランス語圏のメディアに掲載されました。 記事は日韓が戦後処理をめぐり定期的に対立しながら、2022年の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の就任以降は関係が改善に向かっていたと説明。供託金の支給は「前代未聞の支払い」とし、深い遺憾」の意を表明した上川陽子外務相のコメントや、「1965年の二国間協定以来この問題は解決済みと考え、当社もこの問題に関する見解を変えていない」とする日立造船のコメントを紹介しました。(出典:20min./フランス語) 「赤ちゃんポスト」最初の子どもは今 熊本県慈恵病院にある日本唯一の赤ちゃんポスト「こうのとりのゆりかご」。2007年の開設後、最初に預けられた宮津航一さん(20)や家族、病院を取材した記事が、ドイツ語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガーに掲載されました。 「日本はサービス天国で、顧客になる余裕のある人は比類のない快適さと完璧な礼儀正しさを体験できる。だが困っている人を助けることになると、日本は消極的だ」。特に子供を持つことに関して厳しく、「両親は結婚しなければならず、女性は家族に従う義務があり、問題を抱えている人はまず自助努力する必要がある」。それが、こうのとりのゆりかごに対して政府も批判的だった理由だと解説します。 そんな中、第1番目の子どもとして、こうのとりのゆりかごに預けられた宮津さんは「赤ちゃんポストが社会に役立つことの生きた証拠だ」と指摘。考えをしっかりと持った責任感のある学生となり、中学校で生徒会長、高校で陸上部のキャプテンを務め、今では子ども食堂の運営をしていることを紹介しました。 慈恵病院の蓮田健院長は宮津さんの幸福に喜ぶ一方、宮津さんが「赤ちゃんポストの代表例として広まることに少し違和感がある」とも言います。「2007年以来預けられた170人の子どもの中で宮津さんは特別な存在。すべての物語がそれほどうまくいくわけではない」として、実母の元に戻された後に死んでしまった子どももいることを指摘しました。(出典:ターゲス・アンツァイガー/ドイツ語) 話題になったスイスのニュース 先週、最も注目されたスイスのニュースは「スイス政府、『結婚罰』税制の改正案を発表」(記事/日本語)でした。他に「地面の感触が鮮明な義足開発スイスETHZ」(記事/日本語)、「スイスの年金増額&定年引き上げ案、国民投票で否決の見込み 世論調査」(記事/英語)も良く読まれました。 意見交換 日本語を含む10言語に対応した意見交換ページで、世界の読者やswissinfo.chの記者と意見を交換しませんか?下のリンクからお気軽にご参加ください。 今日のテーマ:出生率を高めるためにどんな措置を取れば良い? ご意見やご感想、取り上げて欲しいテーマなどのご要望がありましたら、お気軽にこちらのメールアドレスまでお寄せください。 次回の「スイスで報じられた日本のニュース」は3月4日(月)に掲載予定です。 校閲:大野瑠衣子

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