金沢のタクシー「能登行き」でフル稼働 保険会社調査など殺到、3月まで貸切 繁華街は車両手薄に

タクシーがほとんどいない駐車場。保険会社などの貸し切りで被災地に行く車両が増えている=金沢駅

 能登半島地震の影響で観光客が減った金沢市内のタクシーが被災地でフル稼働している。全国の保険会社社員が被災した加入者や家屋の調査で宿泊拠点の金沢と被災地の行き来に利用しているためで、毎日40台弱を用意するタクシー会社も。一方、金沢市内では車両が手薄になり、配車依頼を断るケースも出ている。地元市民の足と、被災地への交通手段。各社は二つの業務の両立に知恵を絞っている。

 26日午後5時半ごろ、金沢駅兼六園口のタクシー駐車場では待機車両がほぼなく、客を降ろしたタクシーは数分で次の客を乗せ、夜の街に向かった。

 「40台近くを貸し切り用に回しており、普段のお客さまにご迷惑を掛けている点もある」。大和タクシー(金沢市)の担当者は、こう語る。同社は日中の車両を一定数維持するため、普段は夜に働く一部の社員を日中勤務に回したが、不足傾向に変わりはない。

 担当者は「3月中旬くらいまではこの状況が続きそうだ。被災者支援のためにも何とか通常業務と両立させたい」と話した。

 冨士タクシー(同市)も約30台を損害保険会社などの貸し切りに回している。1月に入り、従業員を20人ほど増やしたが、それでも人手は足りず、車両の予約が入っても断ることもあるという。

 3月には北陸応援割や北陸新幹線の石川県内全線開業を控える。担当者は「この状況は3月いっぱいまで続くと思う。観光需要もしっかり取り込まなければならない」と述べ、今後の対応を考えていくとした。

 個人タクシーにも予約が殺到している。金沢個人タクシー協同組合の野谷実理事長によると、「手当たり次第に予約が入っている」といい、同組合加盟の約180台の2割ほどが奥能登へ行っている。

 野谷理事長自身は金沢市内での営業を続けており、「通院や買い物などで普段利用する金沢市民の足もなくすわけにはいかない。協会で互いにカバーしたい」と話した。

 石川、富山両県内では、被災者らの交通手段を確保するため、特例として両県内で営業許可がないタクシー会社の運行が4月12日まで許されている。被災地には名古屋や大阪などから応援車両が駆け付けており、金沢市内のタクシー業者は「県外業者がいなくなった時に、被災地を含む全ての需要を金沢のタクシーだけで受けきれるのだろうか」と不安視した。

 氷見市などで地震被害が大きかった富山県内でも同様の動きが出ている。高岡交通(高岡市)では保険会社の1日貸し切り利用で、多い日は12、13台を、高岡の宿泊施設から氷見や七尾まで走らせた。

 3月末まで予約を押さえている会社もあり、担当者は「ぜひ支援には協力していきたい」と話した。

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