[社説]政倫審平行線 公開嫌なら議員辞職を

 派閥の政治資金パーティー裏金事件を巡る衆院の政治倫理審査会の開催方法について自民党が公開を拒んでいる。全面公開を求める野党との協議は折り合いがつかず、いまだに合意に至っていない。

 疑惑のある議員を審査する政倫審はロッキード事件をきっかけに1985年、衆参両院に設置された。今回開催されれば衆院では2009年以来15年ぶりとなる。

 原則非公開だが、対象となる議員本人が応じれば公開できる。過去に非公開だったのは1996年の献金問題で出席した加藤紘一氏(自民)だけ。2002年の田中真紀子氏(無所属)や、06年の伊藤公介氏(自民)の時は議員と報道関係者が傍聴した。

 岸田文雄首相は26日の衆院予算委員会で「過去の実態を見ると対応はさまざま」とし、公開については「国会で判断するもの」と正面から答えようとしなかった。

 東京地検特捜部は今回の裏金事件で、すでに国会議員3人と複数の会計責任者らを立件している。

 内閣支持率は今月24.5%まで落ち込み岸田内閣として最低水準に。国民の政治不信はかつてないほどに高まっている。

 予算委の後、政倫審幹事会で自民側は当初の「全面非公開」から譲歩する形で国会議員の傍聴に限り容認する案を提示したが後ろ向きと言わざるを得ない。

 岸田首相は小出しの対応をやめ、党総裁として全面公開を指示すべきだ。国民の前でしっかりと説明責任を果たす機会にするべきである。

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 裏金問題での自民の対応はことごとく及び腰だ。

 政倫審への出席予定者は当初、安倍派座長だった塩谷立氏と二階派事務総長の武田良太氏だけ。野党が反発したため、松野博一、西村康稔、高木毅の各氏を追加し計5人となった経緯がある。

 しかし、自民が所属国会議員に実施したアンケート調査では18~22年の5年間で85人に不記載があり、そのうち32人が資金還流を認識していた。

 巨額の不記載が判明している二階俊博元幹事長や萩生田光一前政調会長をはじめ、関わった全ての議員の説明責任が求められる。

 与野党は参院の政倫審を開くことも決めた。参院政倫審は設置以来初めてとなる。

 野党は不記載のあった参院議員32人にも出席を求めており、不正の再発防止へ法改正などの議論を深めるためにも衆参での真相究明が求められる。

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 今月から始まった確定申告を受け、「確定申告ボイコット」の呼びかけがSNSで拡散している。

 裏金疑惑の議員らの納税について、自民の森山裕総務会長が「納税はあり得ない」と報じられたことが要因とされており、政治資金問題に国民の批判が集中している。

 仮に政倫審でものらりくらりと説明を避けるようなら、疑惑の解明を拒否したとみられても仕方あるまい。

 公開を拒み、不正にけじめをつけられないようなら、議員を辞職すべきだ。

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