能登半島地震/都市計画学会が都内で討論会、持続性ある地域として再生を

能登半島地震からの復興まちづくりの在り方を話し合う日本都市計画学会(森本章倫会長)のタスクフォース(TF)は24日、東京都内で「時代を見据えた復興の論点の見取り図を考える」と題した討論会を開いた。5~10年後の被災地の将来を見据え、TFの委員に就いた防災特別委員会の幹事や委員らが復興まちづくりの論点を提示。TFのリーダーも務める森本会長は復興まちづくりの目標に「持続性のある地域として再生する」を掲げ、学会がインフラ復旧なども含め多分野連携の要として貢献することに意欲を示した。
TFは地震発生後の応急対応や避難生活、復旧・復興など都市計画分野での産官学連携の被災地貢献を推進する観点から防災特別委に設置。今回の討論会は被災状況について総合的、俯瞰(ふかん)的な認識を共有し、これからの復興に向けた課題などを意見交換する場として企画した。
最初に国土交通省の筒井祐治都市局市街地整備課長が登壇。地震の揺れに加え火災や液状化、津波など複合災害が、市街地を中心とする被災地にどう影響を及ぼしたのか説明した。今後、国交省は委託事業として特に被害が大きかった石川県輪島、珠洲両市や能登町などを対象に、被災の現況調査や調査結果の分析を行う予定も報告。被災状況に対応した市街地整備の基本条件も整理するとした。
筒井氏は私見と前置きした上で、復興まちづくりに向けた課題として▽急激な人口減少、過疎化の状況下での復興▽「人の復興」と「まちの復興」の両立▽スピードを意識した事業選択▽住民意向の変化への対応-の四つも挙げた。
次いで「能登半島の復興を考える論点提示」と題したプログラムでは、TF幹事長を務める加藤孝明氏(東京大学)のほか牧紀男(京都大学)、姥浦道生(東北大学)、南正昭(岩手大学)、原拓也(都市計画家協会副会長)の4氏が登壇した。
加藤氏は上下水道や電力など寸断された今回の被災状況を踏まえ、「近未来型の自立分散型のライフライン・インフラを建設するのが望ましい」と提言。地産地消でエネルギーを賄う方法として地域マイクログリッドの実現や地下水の利用などを呼び掛けた。
姥浦氏は人口減少や高齢化が深刻な被災地の復旧・復興が進んでいく中、「かなりの民間所有の空き地が出てくるのではないか」と指摘。東日本大震災の復興まちづくりも教訓に、改めてまちの魅力を掘り下げていくことから考えていく必要性を訴えた。
森本会長は討論会で出た意見を総括し、復興まちづくりでは「これまでの惰性や慣性から飛び出すことが大事。持続性のある地域として再生する」との方向性を確認。学会としての貢献にも意欲を見せた。

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