月9.3万円の返済だが…46歳の子持ち夫婦、思わず言葉を失う「住宅ローンの利息額」

平均的な日本人にとって、マイホームはいつか叶えたい夢。多くは余裕のある返済プランでマイホームを叶えているものの、30年に及ぶローン返済のなかで、色々な危機に直面するでしょう。住宅ローン返済世帯が抱える難問についてみていきます。

住宅ローン返済世帯の平均像

日本の持ち家率は6割ほどで、60代を超えると8割に達するといわれています。ただ近頃は、不動産価格に加えて、建築費や人件費も高騰。一方で給与はそこまで上がっていないので、「家を買うことのハードル」は、いっそう高くなっています。

そんななか、疑問に思うことは、「みんなはどのようにやりくりをしているのか」ではないでしょうか。

総務省『家計調査 家計収支編』(2023年平均)で、住宅ローンを抱える勤労世帯の家計の状況をみていくと、住宅ローンを抱える世帯主(夫/平均46.6歳)の月収は平均50.7万円。夫婦と子ども2人の4人家族であれば、手取り38万円ほどでしょか。また配偶者(妻)の収入は、平均12.4万円。それに対して月々の返済額は平均9.3万円で、返済負担率は14.8%です。

また世帯主に年齢別に、世帯年収や返済額をみていくと、50代までの返済負担率は15~17%。収入が減少する60代以降の返済負担率は、60代前半で28%、60代後半で38%、70代以降は42%と、年齢を重ねるごとに重くなっています。

【年齢別「月収とローン返済額」】

~34歳:414,777円/104,487円/90,639円

35~39歳:469,925円/120,055円/91,981円

40~44歳:518,745円/134,566円/93,240円

45~49歳:545,732円/149,584円/87,218円

50~54歳:571,661円/118,174円/90,479円

55~59歳:605,681円/132,046円/108,652円

60~64歳:363,890円/88,034円/103,814円

65~69歳:249,924円/66,003円/94,958円

70歳~:255,266円/48,210円/108,309円

※数値左より、世帯主(夫)の月収/世帯主の配偶者(妻)の月収/住宅ローン月返済額

高齢者「働かないとローン返済なんてムリ!」という現実

返済負担率は、年収400万円超であれば35%が上限とされ、無理のないローン返済を考えるのであれば20%程度というのが一般的。60代で定年を迎えるまでは余裕のある返済プランであることがうかがえる一方で、定年後だと考えられる60~70代は収入が大きく減少し、ローン返済が重荷になっていることが伺えます。

実際は60代後半では月17万円程度、70代以降は月20万円程度の年金収入があり、これらも含めると返済負担率は19~21%程度。平均的な水準になります。つまり「働かないとローン返済ができない!」と、年金を受け取る年齢になりながら働き続けるのが、ローン返済負担の平均像だということ。万が一、体を壊すなどして働けなくなったら、一気に家計は破綻することは明らかです。

――そんなに「ローン返済」って過酷なの?

そう疑問に思う人もいるかもしれません。

国土交通『2022年度 住宅市場動向調査』で、住宅購入者の平均像をみていくと、たとえばマンション購入者(一次取得)の平均年齢(世帯主)は39.9歳、平均返済期間は29.7歳。単純に考えると、完済年齢は平均70歳となります。

働きながら、年金をもらい、住宅ローンを払う……決して珍しいことではないようです。

不動産価格上昇!購入者の平均像ではマイホームは叶えられない

さらにマイホーム購入を目指す人が直面しているのが「住宅価格の高騰」。「40歳でマンションを購入し、返済額は月々9万円程度、完済は70歳なんて平均像では、首都圏ではマンションなんて買えない!」と多くの人が思ったでしょう。

不動産経済研究所によると、昨年1年間に発売された新築マンション価格は、東京23区で1億1,483万円、東京都市部で5,427万円、神奈川県で6,069万円、千葉県で4,786万円、埼玉県で4,870万円でした

仮に月9万円、30年返済(元利均等返済)でローンを組んだとしたら、購入可能額の目安は3,728万円。1都3県では、到底、新築マンションを買うことはできません。

仮に頭金を1,000万円入れ、金利0.5%、返済期間は30年(元利均等返済)だとすると、千葉県の平均的な新築マンションを買うなら、月々の返済額は12万4,013万円。同じように、埼玉県の平均的なマンションであれば12万6,714万円、東京都市部の平均的なマンションであれば14万4,629円、神奈川県の平均的なマンションであれば16万5,278円。東京23区の平均的なマンションであれば33万9,407円。

65歳以降、年金をもらいながら働き、月12万~34万円の住宅ローンを返済する……そこまでしてマイホーム購入にこだわるか、疑問に感じるかもしれません。

30年に及ぶ住宅ローン返済生活「このまま低金利」は非現実的

またマイホーム購入を検討するなら、考えておきたいのが「金利」。世界的な利上げで、金利上昇への不安が広がり、「低金利も終わるのでは」という憶測が広がりました。いまのところ日本では固定金利では引上げの動きがあるものの、「低金利」の状況は続いています。ただローン返済が30年に及ぶなか、当初の金利のままというほうが非現実的です。日本はこの低金利をどのように終わらせるかという難問に直面していますが、違う見方をすれば、この低金利はいずれ終わることが確実だということです。

仮に借入額が3,300万円で、30年返済(元利均等返済)で、金利は0.5%だとすると、月返済額は9万8,732円。利子分は254万3,539円。金利が0.1%上昇し、0.6%になると、月返済額は10万0,186円、利子分は306万7,116円と、50万円近く高くなります。金利が0.5%上昇して1.0%になったら、月返済額は10万6,141円、利子分は521万0,559円と、倍近くの利子を払うことになります。金利が1%上昇して1.5%になったら、月返済額は11万3,889円、利子分は800万0,121円と、ちょっとした高級車が買えてしまいます。あまりに低金利に慣れ切ってしまい、金利上昇によりどれほどの影響があるかピンと来ていない日本人にとって、急激な返済額の増え方には言葉を失ってしまうかもしれません。

多くの専門家は金利上昇に対して警鐘を鳴らすも、「過度な心配はしなくてもいい」というのが大方の見方。しかし長期にわたるローン返済、何があるかは誰にも分かりません。万が一、金利が上昇したらどう対応するかシミュレーションをしつつ、無理のないカタチで繰り上げ返済を駆使して、早めの返済を目指すのが、安心への近道だといえるでしょう。

[参考資料]

総務省『家計調査 家計収支編』(2023年度平均)

国土交通『2022年度 住宅市場動向調査』

不動産経済研究所『首都圏 新築分譲マンション市場動向 2023 年のまとめ』

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