ブラジルで昨年1月にジャイル・ボルソナロ前大統領(68)の支持者らが大統領府など国の中枢機関を襲撃した事件をめぐり、ボルソナロ氏は25日、最大都市サンパウロであった大規模な支持者集会で、同氏がクーデターを図ったとの疑惑は「うそ」だと訴えた。
ボルソナロ氏は2022年10月の大統領選でルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルヴァ氏に敗れ、1年ほど前に大統領を退任。以来、政治的迫害を受けていると主張している。また、大統領選で不正があったと、証拠を示さずに訴えている。
そうした行為はブラジルの選挙制度を損ねたとされ、ボルソナロ氏は公職への立候補を8年間禁じられている。
警察はボルソナロ氏について、クーデターを扇動した疑惑に関して捜査している。
この日の数万人規模の集会では、ボルソナロ氏は自らに対する疑惑は政治的な動機に基づくものだと主張。過去は忘れ、ブラジルが前進すべき時だと訴えた。
また、大統領府などへの襲撃事件で有罪判決を受けた数百人の支持者らに対する恩赦を求めた。
支持者ら「言論の自由」訴える
集会には、ボルソナロ氏の演説を聞こうと、ブラジル国旗の黄色と緑を身にまとった人々が多数参加した。
参加者らはBBCに、自由、とりわけ言論の自由のためにデモ行動をしていると説明。ボルソナロ氏について、「自分の意見を言った」ために刑務所に入れられると脅されているとした。
何人かは、前回の大統領選で不正があったという未証明の主張を繰り返した。
ボルソナロ氏は、そうした訴えや最高裁批判などを書いた掲示物をこの日の集会に持ってこないよう呼びかけていた。
当局が言動を注視
ボルソナロ氏は、暴動を扇動したり、選挙制度を損ねたりしないか、言動を当局によって注視されている。
同氏は今月に入り、パスポートを没収された。2022年大統領選の結果を覆そうとし、軍幹部にクーデターに参加するよう圧力をかけた疑惑をめぐり、捜査を受けているためだ。
ボルソナロ氏はこのときの選挙で、左派のルラ氏に敗れた。その後、ボルソナロ氏の支持者数千人が首都ブラジリアにある大統領府、最高裁、議会などの政府庁舎を襲撃し、略奪や破壊を行った。
これを受け、ボルソナロ氏の盟友3人が逮捕され、同氏の政党のトップも拘束された。警察はそれらの人々が選挙制度への疑念を広めたとしている。この疑念は、ボルソナロ氏の支持者らの集会で繰り返し強調されるようになった。
警察はまた、こうした行為がクーデターの下地をつくったと主張している。ただ、現実には軍がクーデターを支持しなかった。そのため、ボルソナロ氏の支持者たちは不満を募らせ、昨年1月8日に大統領府など国の中枢を襲撃した。
襲撃事件が起きたとき、ボルソナロ氏はアメリカにいた。昨年3月になって、恐れることは何もないとして、ブラジルに帰国した。
ボルソナロ氏はいまも、ブラジルの右派政界で最も影響力ある存在であり続けている。
(英語記事 Jair Bolsonaro: Brazil's former president denies coup allegations)